一般人さらわれた。
銀色の長い綺麗な髪はサラサラと流れるようで、うっとりする。
その髪にも負けない綺麗な顔をしているスミさん。
クロさんの腕に絡みつきたいアスちゃんの顔を、手でガッと掴む。流行ってるの?アイアンクロー??!!しかもビクともしない。
「・・もう、個性を入れすぎたかしら〜・・。でも、これはこれで可愛いのよねぇ、迷惑かけちゃってごめんなさいねクロ様」
「・・・押さえておいてくれりゃ、別に」
「うふふ〜たえさんがいると随分と柔らかいわねぇ〜」
スミさんの言葉に、思わず顔が赤くなる。あの・・、今も手をぎゅうぎゅうに握られている上に、尻尾までくっついてて・・瀕死なんで・・勘弁して頂きたいです・・。
クロさんはちらっと私を見る。
「まぁ、な」
「キィーーーーーー!!!!クロは私のなのにーー!!!!」
「アス、貴方猿みたいになってるわよ〜うふふ」
わ、笑い事なのか・・・。
ものすごい空間になってるなぁ・・。クロさんは、ちょっと遠い目をしつつ、神殿へ通じる大きな金の門まで歩いて行き、皆でその扉へ入って、長い階段を登って行く。
「そういえば・・、大神様いらしてるみたいだけど・・、もう帰ったかしら?」
「・・・わからねぇ」
スミさんが、クロさんをチラリと見る。
「すぐ転移して帰った方がいいわね」
「言われなくても」
え?すぐ帰っちゃうの?じゃあ、この買ってきたの・・どうしよう。いくつか買った袋をみると・・
「スミ、後であいつらにこれ、渡してやってくれ」
「いいわよ〜」
「ええ!!私も渡す!!クロのからの!!」
アスちゃんの食いつきっぷりすごいなぁ・・。
階段を登り切って、広い芝生が広がる場所へ着くと、アスちゃんが引ったくるように買った物を受け取ってくれた。えーと、ありがとうございます・・?
そうして、転移してきた場所へ行こうとすると金色の神殿の扉が開いた。
ティナさんかな?そう思って振り向くと、綺麗な金色の長い髪を下ろして、白い長いローブを着ている人が出てきた。
誰だろ・・・
神様かな?
そう思って、クロさんを見ると苦々しい顔をしている。
あ、もしかして・・・
スミさんが、小さくため息を吐いて金髪の男性をみる。
「大神様もいらしてたんですね・・、お久しぶりです。お元気でした?」
あ!やっぱり大神様かぁ・・ひゃああ〜〜綺麗だなぁ!!後ろからティナさんとノアルさんもついてきて、ちょっと苦い顔をしてる・・。相当な嫌われよう・・だな。
大神様は、クロさんをちらっと見る。
「・・・・まだ半獣がいたのか、さっさと帰ったら?」
「・・・・・え?」
あ、まずい声が出ちゃった。
咄嗟に口を手で塞ぐ。
だ、だって・・・いきなりクロさんにそんな事言うの?神様なのに??
大神様は、私をジィッと見るので思わずクロさんの後ろへ隠れる。
「・・・・ふぅん、面白い所から来たんだね、どれ元の場所へ返してやろうか?」
ドキッとして体が固まる。クロさんも一瞬体が強張るのがわかった。
「・・・・え・・・・?」
「クロは、貴方の世界へは行けないが私はいけるよ?帰りたいだろ?」
私は咄嗟にクロさんを見る。
あ、すごい辛そうな顔だ・・。
眉をぎゅっと寄せて私を見ていて・・、私まで胸が痛くなる。
「ね?クロに無理やり連れて来られたんだろ?」
「・・あの・・・」
ティナさんが堪らず、大神様に声を掛ける。
「大神様、彼女は・・」
「うるさいなぁ、お前は黙ってて、僕は彼女に話してるの」
ティナさんと、ノアルさんが後ろからめっちゃ睨みつけてる・・。ええ・・・、ちょっと・・これ、どうしたら・・。大神様は、すごく綺麗な顔で優雅に笑う。
「帰りたい・・だろ?」
喉がごくっと鳴る。
足が震える。
この人・・怖い。
私はクロさんの手をぎゅっと握って、首を横に振る。
「クロさんの所に・・います」
クロさんが、私をじっと見るので、私も見つめた。
「・・・あの、いたいんです・・・」
小さい声でそう言うと、クロさんが手をぎゅっと握り返してくれた。
大神様は、ちょっと目を丸くして・・指を一本上に上げた・・と、思ったら私とクロさんの繋いでいた手が、勢いよく弾かれるように離れた。
え?
「へぇ・・、面白いねぇ君・・。じゃあ僕のものにしちゃお!」
「「大神様!!!」」
ティナさんとノアルさんの声が重なって、クロさんが呆然とした顔をする。
え?なんだって??誰が誰のもの??びっくりしている間に、大神様の腕の中に私はあっという間に捕らえられて、言葉にならないまま、転移したらしい。
な、なんてこったい??!!




