神様の香り。
朝ご飯が終わると、クロさんはお仕事へ行くらしい。
クロさんがククを呼ぶと、足元にいた。いつの間に?!
「一緒にいろ」
ククが小さく頷くから・・驚くわ、可愛いわ・・。猫にキュンキュンする!!!
トト君は、片付けをすると早速、香草油を作る部屋へ案内してくれた。
小さな小部屋・・といった感じのお部屋はこじんまりしていて可愛い。周りはここだけ木の木目が綺麗な壁や床で、この部屋だけ洋風みたいだ・・。
色々な花が瓶に入っていて、油・・?オイル漬けになっていて、並べてあるのを見るだけでも楽しい。
「すっごく可愛いねぇ〜!!」
「ここで僕もたまに作るんです〜。お花もお庭にあるのを使っているんですけど、たえさんも良かったら今度作って見てくださいね。お花を軽く洗って、干してからここにある瓶に入れて、油を注げばすぐ出来ますよ」
「え?そんなお手軽な感じなんだ!」
「はい〜、ただ手が回らなくて・・」
「そっか、じゃあ今度教えてくれれば、私も手伝うよ!」
トト君の助けになれるのは、いつもお世話してもらっている身としては嬉しいし・・。そう言うと、トト君は嬉しそうに耳をぴこぴこ動かすので、撫でてしまった・・。だって可愛いんだもん。
「こっちに、空の小瓶があるので、好きな花の香りと香りを合わせてみて下さい」
「う、うん・・」
綺麗に並べられた花の瓶を一つ取って、そっと蓋を開けるとすごくいい香りがする!え〜、これだけで十分な気もするけど・・。そう思ってトト君を見ると、もう一つ違う花の瓶を取って小さなお皿に少し垂らしてから、私が持っていた花の瓶の油を垂らして混ぜてみてくれた。
「嗅いでみて下さい〜」
「どれどれ・・あ!匂いが全然違う!!」
すっごく甘い香りが、爽やかな香りになってる!私、こっちの方が好きかも・・。
驚いてトト君を見ると、ニンマリ笑う。
「組み合わせで、香りがすっごく変わるんですよ〜!お祭りの時、参拝客は気に入った香りをつけて出かけるんです。これを作って売ってるんです」
「・・・商魂たくましいね」
「もちろんです!神殿を大きくして、クロ様を安心させたいので!!」
どこまでもトト君は、クロさんが好きらしい・・。
「じゃあ、私も頑張ります!トト君は、どうやっていつも香りをイメージして作るの?」
「僕は、クロ様につけて欲しいのをイメージしてます!!」
「愛がすごい・・。でも、そうだね・・誰かをイメージするといいかも」
「はい〜、なのでまずは色々試してください!」
「うん、ありがとう!」
そうして、色々用意してくれたトト君も、他のお仕事をしに行った。
皆、忙しそうだなぁ・・・。
私は、足元のククを見て・・
「ひとまずクロさんのイメージで作ってみよっかな・・」
そう呟くと、ククはじっと私を見る。・・・聞いてませんよね?
花は本当に組み合わせると、全然違う香りになるので、置いておいてくれたメモに書き記しながら作ってみる。やばい・・楽しい・・、これはハマるぞ?色合いも混ぜていくと、透明になったり、淡い薄桃色になったり、黄緑になったりするから楽しい!!
クロさんのイメージって、大きくて・・いかつくて、オラオラ系っぽくて、優しくて、二人の時は表情は柔らかくて・・・、そんな事を考えていると、昨日の事を思い出して赤くなる。・・そういえば、最初に川に溺れて助け出してもらった時、貸してくれた服・・いい匂いしたけど、これだったのかな?
私は爽やかな香りが好きだからなぁ・・。
クロさん、甘すぎない香りのが似合いそうだし、そう思って爽やか!あんまり甘くない!みたいなザックリなイメージで香りを作ってみた。
なかなか爽やかな香りだ!
色は薄っすら水色で・・、水の神様っぽくていいなぁ。
小瓶に入れて、雨が降る窓の光で透かしてみても、なかなか綺麗だな・・、そう思って見ていると、大きな手が伸びてその小瓶をそっと持った。え?びっくりして後ろを振り返るとクロさんが立っていた。
「え?いつの間に???」
思わず見上げて話すと、少し可笑しそうに笑った。
ボス、今日も機嫌良さそうで何よりです・・。




