神様と戻りました。
湖は本当に綺麗で、しばらく淡く光る底をぼんやり眺めていた。
綺麗だなぁ・・、これは私の世界では見られない風景だ・・。
そう思っているとポツリと、顔に水が当たって、空を見上げると雨が降ってきた。
「あ、大変・・雨降ってきちゃいましたね。お弁当、神殿で食べますか?」
「ああ」
そういって、お弁当を籠にしまうとクロさんはそっと手を繋いできた。
あ、戻るのかな?そう思って、顔を見上げると・・自分の体が濡れていないことに気付いた。
「あれ?クロさんもしかして雨・・」
「水の神だしな」
「あ、雨避けできるんですか?」
「まぁ・・」
「すごいですね・・!!!」
いいなぁ、傘いらずじゃないか!!!便利だなぁ・・。
「梅雨にいて欲しいです・・」
「梅雨?」
「雨がすごく降る時期があって・・、あ、ちょうどあっちの世界だと今ですね・・。川に落ちちゃった時もクロさんがいればなぁ・・」
そうしたら落ちなかったかも?
そんな事を考えていたら、クロさんが手を少し強く握る。
「クロさん?」
「・・・・悪い」
え?なんで謝るの?川に落ちた時、助けてくれたのに?あ、落ちなかったかもって思ったから?
「クロさんが謝る事じゃないですよ、私の不注意でしたし・・、こんな風景が見られるの・・こっちに来ないと無理ですしね!」
少しでも気持ちが明るくなって欲しくて笑いかけると、クロさんはそっと抱きしめてきた。う、うわわ。
「悪いと思ってるが、いてくれて嬉しい・・」
そっと耳元で言うから、一気に真っ赤になった。
ボス、その・・低い声で耳元で言うのは結構反則だと思うんですけど。
「そ、そういって頂けると・・はい・・」
しどろもどろになりつつ、そう答えるとクロさんは小さく笑った。
「そうか」
「・・・はい」
クロさんは、どうも二人の時だと柔らかい表情をする上に甘いのも、よーーくわかりました・・。ただ、私の心臓は大変ですけどね・・。どうしたものかと、視線をウロウロさせる。
「戻るか」
「は、はい!」
思わず元気のいい返事になると、クロさんが肩に手を置いて体を抱えるように密着させるので、心臓が死にそうなんですけど!!目をぎゅっと瞑ると、水が足元から登ってくる音が聞こえる。
バシャン!
と、水音がしてそっと目を開けると、庭園の中だった。
ホッとして体を離そうとするけど、クロさんは動かない。あの・・、クロさーん・・、多分トト君来ますよ?いいのかな?大丈夫なのかな?
「く、クロさん・・?」
「・・・ああ」
「ええと、あの・・、着きましたが・・」
「そうだな」
「ニワの実、トト君に届けてもらうんじゃあ・・」
クロさんは、じろっと私を見る。あ、すみません・・今はそういう時じゃない感じですね?えーと、これは抱きしめ返すのがマナーであり、ベターなのか?
ちょっと迷った・・。
この間、うたた寝しちゃった後に抱きしめられて、抱きしめ返しても舌打ちも睨みもなかったし、そ、そもそも好きって言われたし・・、うん、好きとはまだ言えてないけど・・、好きだし。
そっと、手をクロさんの腰に両手を添えて、ちょっとだけ服を掴んでみた。
ええと・・、もうちょっと腕を回した方がいいのかな?その前にもうちょっと密着した方がいいの?クロさんの私の肩に置いた手は熱を持ったように熱くて・・、もうそれだけでドキドキするんですが・・。
あ、クロさんの心臓の音もすごくない?
ふと気付いた・・。顔の辺りがちょうど心臓の辺りだ。思わず耳を近づけて聞いてみた。すごくドキドキいってない?同じくらい??
「・・・クロさんもドキドキしてる」
しまったー!!!思わず声に出てしまった・・。
そろっとクロさんの顔を見上げると、目元が赤い。
「・・・お前、覚えてろよ?」
「ええええええええ、す、すみません!!!!」
思わず青ざめて謝った。な、何かやらかしました??慌てる私を見て、クロさんはクシャっと笑った。
結果、また私の心臓が大暴走したのはいうまでも無い。




