神様といると。
公園は、夕方だからだろうか人もまばらだった。
前回もそんなにいなかったけど、人が本当にいないな・・。
「ニワの実ってどんなのですか?」
「透明な・・球体・・みたいだな。水の中でしか自生してない実だ」
「・・食べるんですか?」
「どっちかつーと観賞用だけど、食える」
へぇ・・・と、想像してみるけど、うーん・・わからん!
「どの辺りにあるんですか?」
「公園の奥だな。その辺にもあるがここが一番近い」
「そうなんですか・・」
公園の奥へ進んでいくと、大きな湖に出る。
曇っていても碧い色は透き通っていて、すごく綺麗だ。底を見ると丸い透明な球体・・らしいものがプカプカと水の中で揺らいでいる。あ、もしかしてこれ?
「あれ・・ですか?」
「そうだ」
指差すと、クロさんは頷いて私の手を離してから、一歩湖へ近づき、そっと手を湖の下へかざす。淡い光が掌から出ると、丸い球体のニワの実が水から浮いてくる。
あ、瓶に入れてって言ってたな・・、トト君の言葉を思い出して籠から瓶を出して、蓋を開けてクロさんの側へ行くと、クロさんがこちらを見て、
「悪いな」
「いいえ」
ちょっと笑って瓶を出すと、クロさんは手を瓶に寄せるとニワの実はいくつか水と一緒に瓶の中へ入っていく。見た目はクラゲみたいだ・・。ふわふわ浮いてて・・、なんだか幻想的だな。
「・・・綺麗ですね」
「夜になると光る」
「え?!そうなんですか!それは見てみたいかも・・」
「もう少しで夜だし、ここで見てくか?」
「いいんですか?!」
こんな透明の綺麗な湖で光るとか・・!
ワクワクする!!
湖とクロさんを交互に見たら、クロさんは小さく笑った。良かった・・ご機嫌は良いらしい。
「あの辺、座るか」
「あ、はい」
湖が見渡せるような場所にベンチがあって、そこへ二人で向かう。ベンチに座ると湖がちょうど眼前に広がってよく見える。うわ〜〜、ここいい場所だな!
「あ、お弁当食べますか?」
そういえばトト君がお弁当を持たせてくれてのを思い出した。
クロさんが静かに頷くので、籠を見てみると二人分のお弁当が入っていた。トト君・・いつもありがとう!!大きい方をクロさんに渡すと、
「・・ありがとう」
おお、お礼を言うんだ・・。そんな事にいちいち感心してしまう。
ボス、皆といる時は怖いけど、二人の時は柔らかな顔するし・・うん、今は落ち着くな・・。そう思いながらお弁当の蓋を開けて、ハタっと気付く。
あれ・・、
もしかして、
二人の時は柔らかいって・・、嬉しい・・・とか?
そう思い出すと、そういえば花畑にいる時も、公園で二人で歩いていた時も、街へ行った時とか・・クロさん、大分違うな・・、いや、違うわ!!そう思ったら、顔がじわじわ赤くなる。今頃気付いた私って・・。そして、今まさに二人っきりじゃないか・・。
なんといえばいいかわからなくなって、お弁当の味がなんだか分からない。トト君に感想を聞かれても、答えられる自信がないな・・。
「おい」
「はいっっっ!!!!」
クロさんの声に、思わずビクッと体が跳ねた。
な、なんでしょうか・・??
クロさんが指差した方を見ると、湖の底が淡く光っている!!
「あ!!あれ、ニワの実ですか!?」
「そうだ、今日は曇っているからよく見えるな」
クロさんが指差した時は、小さな淡い光が湖の手前で少し光っているくらいだったのに、見ている間にどんどん手前から奥へと光が広がっていく!!そして、あっという間に湖の底は淡い光で一杯になった。
「わ、わあ!!ええ、すっごく綺麗!!」
お弁当をベンチに置いて、湖の前の柵まで近寄って湖を見る。
クロさんも後ろから歩いてきて、湖を見た。
「・・綺麗だろ」
「はい!!素敵ですね!!」
私がそう言って笑うと、クロさんも優しく笑ってくれた。
・・・あ、やっぱり、二人の時はクロさんの顔が全然違うんだと思ったら、慌てて湖に顔を向けた私だった。




