神様と散歩。
街中・・とはいえ、中心街から離れている場所だと説明してくれて、それで静かなんだな・・と、周りを見回す。
どの建物も白い四角のレンガで作られていて、路地の奥を歩くと地面を踏み固められた道があり、鮮やかな色彩の扉の前には鉢植えにお花が飾られていたり・・、住んでいる近所の子供達が追いかけっこしたり、その横で大きな壺の蓋の上で寝ている猫もいた。
「・・・・可愛い・・!街並みが可愛い!!」
日本と全然違う風景にキュンとする。
ああ〜〜〜、可愛い〜〜!!!
「・・そうか」
「いつもの風景に見えるかもですが・・、私には珍しいですし。でも、こう人がここに住んでいて色々な物語とかあるんだろうなぁとか思うと、ワクワクします!」
え?思わない?外国の建物とか見ると、どんな人が住んでいるんだろう?とか、どうしてここに住んでるのかな・・とか考えちゃうんだけど・・私だけ?
つい興奮して、ボスに力説しちゃったかな?そう思って、顔を見上げるとクロさんは小さく笑ってる。うう、ドキッとする。
「そうだな・・」
「ええと、私一個人の意見ですけども・・」
「悪くない」
「あ、そうですか?」
「あの神殿にも、物語があるってことになる」
クロさんが指差した丘には、水神殿が見えた。
あ、あそこにあるんだ!
「・・そうですね」
そんな風に言ってもらえて、嬉しくて笑うとクロさんは、少しじろっと見る。す、すみません???
家々から、嗅いだことの無い異国のような香りがしてきて、ああ・・・本当に別の世界に来たんだなぁとしみじみ思う。トト君にここを好きになって欲しいって言われたけど、嫌いになりようがあるのかな?
「・・素敵な街ですね」
「そうか」
「連れきてくれて、ありがとうございます」
ちょっと照れくさいので・・目を見て言えないのは勘弁して下さい・・。そう思いつつお礼を言ったらキュッと手首の尻尾が答えるように握ってきた。
「また・・」
「はい」
「来るか?」
「はい、良ければ・・公園もまた行ってみたい、です・・」
「おぅ」
クロさんの声が、ちょっと照れているように感じて・・、クロさんと目を合わせられる気がなったくしない・・。
「そろそろ戻るか」
「あ、はい・・、トト君は・・」
「大丈夫だ、戻ってる」
「そういうのもわかるんですね・・」
神様ってすごいなぁ・・。
感心すると、ちょっと冷静になれて・・、気付かれないようにクロさんを、そっと見上げてみた。と、クロさんガッツリこっちを見てるしー!!ドキッとして、すぐに目を逸らしたかったけど、緑の目がじっと見てる。そ、逸らすタイミングどこ?!!
クロさんは、小さく舌打ちするのでビクッとする。
な、なんでしょう?!!気に触る事・・おっしゃいましたか??!
ちょっと怯えた目でクロさんを見ると、
クロさんの顔がアップになった?
と、思っている間にキスされた。
「ひぇっ・・・・・?!!」
顔が離れた瞬間に、そんな声しか出ない自分が恥ずかしい・・。
クロさんは、ちょっと目を丸くして、その後小さく笑うんだけど・・、それ・・めちゃくちゃ弱いみたいです。私・・。
思いっきり俯いた。
無理だ、顔が見られない・・。
こんなの心臓がいくつあっても、多分すぐ死ぬんじゃないか??
頭がグルグルしていると、私の肩にクロさんが頭を傾けてきた。
な、な、なーーーーー!!!???
心臓がいよいよご臨終3秒前入ります!!って、言ってるんですけど?!!
「く、クロさん・・」
「おぅ」
「・・・・多分、私今・・死にます」
「神の前で」
「その神様の前ですけど・・、だからあの、離れて頂けると・・」
体がガチガチに固まっているし、動ける気もしない。どうにもできない!!!
そっとクロさんが抱きしめてきて、ますます心臓が忙しい。
「・・・もう少し」
静かな掠れた低い声が耳に響いて、私は死を覚悟した。




