神様と逃げる。
アスという星の神様の化身の子は、大変クロさんが好きらしい。
クロさんの右腕に、ぎゅっと抱きついていて・・、妹がお兄ちゃんに慕う感じで可愛い。肝心のお兄ちゃん・・のクロさんは、大変イカツイけど、気にならないとこ・・すごいな。
「ちょっと!!!アス!!勝手にクロ様に触らないで下さい!!」
「うっさい猫は黙ってな!!」
「キーー!!!!クロ様、吹っ飛ばしてください!!」
「・・・うるせぇ」
トト君の尻尾がずっと広がりっぱなしだし、アスちゃん?は、クロさんの腕に抱きついているし・・、クロさんはげんなりした様子なんだけど・・、この中に入っていける気が全くしない・・。むしろ怖い。
どうしたものかなぁ・・と、クロさんを見ると、一瞬で水になった。
「え?」
思わずクロさんがいた方を探すと、後ろで水の音がして振り返ると私の真後ろにいた!!え、ボス???転移した??
「行くぞ」
クロさんが私の腕を掴むと、一瞬で水の中へ包まれた。
「へ?」
「クロ!!」
アスちゃんの声が聞こえたけれど、そのまま転移した。・・らしい。目を瞑ってしまったので・・。
バシャ!!
と、水の音がしてそっと目を開くと、歩いてきた公園を見下ろせる街の公園にいた。
「あ、あれ??」
「街だ。行くっつったからな」
「あ、ああ・・」
人混み・・嫌いじゃなかったんですか?
一応気にしてくれてたのかな?
クロさんは、淡い光で私達を包む。これ、なんだろう・・?
「・・・アスに見つかると面倒だからな」
「・・見つからない・・的な魔法・・ですか?」
「ああ」
へぇ〜〜・・・便利なのあるんだなぁ・・。えーと・・でも、いいのかなぁ・・すごく慕ってる感じだったけど・・。ちょっとクロさんを見ると、クロさんは察したのか、
「・・どうせまた来る」
「あ、そうなんですね・・」
「行くぞ」
「あ、はい・・・」
手を差し出されると、ドキッとするけれど・・前回の事もあるので、手を繋ぎますとも・・。はい、お願いいたします・・、ちょっと顔が赤いのは気にしないで頂けると助かります。
クロさんは、私の手をちょっと握り返すので、何かあったのかな?と思って、顔を見上げた。
「たえ」
「は、はい」
「服、似合ってる」
「・・・・・・・・・・・!!!!」
一気に顔が赤くなって、目がウロウロ泳ぎだした。
「あ、あり、ありがとうございます???」
噛んだ。どもった。無理ですボス・・、そんないきなり言われても私は対処できませんけども???クロさんは、面白そうに小さく笑って、歩き出す。よ、良かった・・・歩けば気が紛れる・・かもしれない?いや紛れて欲しい!!
顔が赤いまま、街中をゆっくり歩く。
水の神殿がある街だからか、そこかしこに水場があったり、噴水があったり・・。地元の子供が地面から水が噴き出す場所で水遊びしていた。・・あ、いいなぁ。涼しそう。
「やっぱり、水の神殿があるから、そこかしこに水場があるんですね」
「そうだな」
「いいですね〜、私が住んでた場所は噴水なんてあまりなかったし・・」
「見て来るか?」
「・・・・噴水なら、溺れる危険はないですしね」
私が呟くと、クロさんがククッと笑った。
・・・すみませんね・・・、毎回助けてもらって・・。ちょっと照れくさいけど、大分話しやすくなったなぁ・・と、思った。うん、最初は舌打ちの嵐だったし。
白い大理石で作られた大きな噴水のそばへ行くと、水は透明で底にコインが沈んでいた。あ、こっちでもお賽銭入れるみたいな風習あるんだ?
「コイン、入れるんですね・・こっちも」
「たえの所もか?」
「はい、いい事ありますようにって・・、こっちも同じような感覚ですか?」
「そうだな」
うーん、私は今手持ちが何もないからなぁ・・。
あ、でも神様と一緒だからそもそもいらないのかな?
「クロさんといるから、十分いい事ありそうですね」
そう話すと、クロさんが今度顔が赤くなった。
あ、あれ・・??照れる所・・あったっけ?




