神様とお弁当。
しばらくして、少しずつ顔の赤みも引いてきて、小さな滝の下に魚が見えた。
透明だから、すっごく見える!!
橋の下を覗き込もうとすると尻尾にちょっと力がこもる。
・・そこまで危なくないと思うけど。
「・・よく落ちるのに見にいくな」
「だ、大丈夫ですよ・・」
じとっとクロさんに見られる。
これだけ手も尻尾も私を捕まえているというのに・・。思わず手首に巻きついた尻尾と手を見る。クロさんも私の視線に釣られて見る。
あ、ダメだ・・。
せっかく顔の赤みが引いたのに、またじわじわと赤くなるじゃないか・・、そっとクロさんを見ると、クロさんも目元が少し赤い。あ、クロさんも照れるのか・・。
そう思ったら、顔が上げられなくなる前に進もうと前を見る。
「・・・あれ?」
休憩場所だろうか、広場があった。
そこの木陰にシートを敷いてあった。よく見るとその上にちょこんとトト君が座っている。
「たえさ〜〜ん、クロ様〜〜!!」
「トト君!!」
私は驚いて、トト君を見て、クロさんを見る。
「・・昼、ここで食う」
「ああ、だから・・。トト君も転移できるんですか?」
「呼んだ」
「呼ぶ・・・・」
神様って、すごすぎない??
思わずクロさんの顔を、またもじっと見てしまった・・。
クロさんは、じろっと見る。あ、すみません・・またマジマジと見ちゃいました・・。いや、すごいなあって思ってですね?
そんな事を思いつつ、クロさんに連れられてトト君の方へ歩いていく。はぁ、私の安全圏トト君!サンダルを脱いで、クロさんの横に当然のように座らされたけど・・、これ・・地味に恥ずかしいですね。
トト君が大きな籠からお重のようなお弁当を出す。
蓋を取ると、綺麗な彩りのおかずが一杯入ってる。
「うわ!!すごい!!」
「張り切りました〜〜!」
トト君のほにゃっと笑うから、可愛い!!!
私までほにゃと笑う。
それをクロさんがじっと見ている事に気付く・・。あ、おかずとか盛れ・・的な?トト君は渡してくれてお皿とお箸!おお、懐かしいアイテム、ここにもあったんだ・・。
「クロさん、何食べますか?」
「自分で取る」
「あ、そうですか・・」
クロさんは、自分で自分の事をするらしい。偉いな。
「先に取れ」
「あ、はいじゃあお先で・・」
どれにしようかな〜、目移りしちゃうけど・・とりあえずいくつか選んでお皿に盛る。トト君はお皿にささっとおかずを取ると、クロさんにそれを渡す。
「クロ様、こっちの食べて欲しいです!!」
「・・・お前は、話を聞け」
そう言いつつ、トト君からお皿を受け取っていた。優しいな・・・。
「いただきます・・」
ちょっと照れ臭いけど、挨拶してから食べる。
あ、美味しい・・・!
神様の国って、ご飯は絶対美味しいものなの?
「美味しい〜〜〜」
「そうですか?嬉しいです!」
「トト君作ったの?すごい上手だね〜!!私も作れるかなぁ・・」
私のいた世界では、あんまり料理をした事なかったし・・、レンジでチンとか・・便利だし。トト君はニコニコしながら、
「簡単ですよ〜!今度一緒に作ってみましょうよ〜」
「いいの?・・うん、じゃあやってみようかな」
「・・・・おい、トト」
「できたら、クロ様食べて下さいね!」
あ、そういう展開?!思わずクロさんを見た。
私ごときの料理を神様・・、召し上がりたいのでしょうか?ちょっと不安です。
クロさんは私と目が合うと、ちょと目を逸らす。あ、やっぱり嫌な感じ?!
「・・・おぅ」
「やったぁ!!たえさん、頑張りましょうね!!」
「う、うん・・?が、頑張る・・?」
いいのだろうか神様・・、トト君に押され気味だけど。
でも、トト君の作ってくれたおかずは確かにどれも美味しい!こっちの料理も作れたら楽しそうだし、まぁいいか・・。そう思って、木陰でのお弁当タイムを楽しんだのだった。




