神様、お客さんです。
クロさんの化身がククという真実を知って、私は若干死にそうだった。
いや、息はかろうじてしてるレベル。
クロさんは、仕事へ行くといってフラリといってしまったが、尻尾は機嫌が良いのか、ユラユラと揺れていた。
私はというと、花畑にククと一緒にいて・・、一体これからどうククに話せばいいのか・・大いに悩んだ。・・うん、気をつけて話をしよう、そうしよう。
「・・とりあえず、花の冠入れる籠をトト君からもらってこようかな?」
ククにそう話しかけると、ククはすくっと立って歩いて行く。
・・・複雑だ、すごく複雑だが・・、頑張れたえ!私は自分を鼓舞してクロさんの化身こと、ククについていった。
と、庭園の端っこでトト君が何か作業している。
「トト君!」
名前を呼ぶと、パッと私に振り返ってこちらへ急いで駆け寄ってくる。
「たえさん!!大丈夫でしたか!?こっちにいられますか?」
「う、うん・・クロさんにお願いして、いいよって・・」
告白された上に、キスまでされたのは絶対に秘密だ。絶対にだ。
トト君はそれを聞いて、すっごく嬉しそうに笑って、ぎゅっと私の腰に抱きつく。わわ、可愛い・・!!!
「良かったぁあ〜〜!!ずっといて下さいね!」
「ありがとうトト君・・」
そうだよね・・、来てからずっと一緒だったし、心配してくれたのかな・・そう思うと嬉しくて、私もそっと腕を回してみた。足元のククが、心なしか睨んでいるようだったけど。
「ええと、なのでトト君・・、こっちで過ごすのでこれからもよろしくね?」
「はい!!」
ピッカーと輝くような笑顔を向けてくれて、私は眩しいけれども嬉しい。そして可愛い・・。思わず頭をまた撫でてしまった・・。うん、とにかく頑張ろう。
「あ、そうだ・・花の冠を入れる籠を借りたかったんだけど、置き場所とか教えてくれるかな?いつもお世話になりっぱなしで悪いし・・場所も覚えたいし・・」
「たえさん〜〜!大好きです〜!!」
「トト君!!可愛い〜〜、私も好き!」
思わず告白大会になってしまった・・。
だって、可愛いんだもん!!
すると、足元にくるっと尻尾が巻きつく感覚がして、思わず下を見るとククが足元でじっと私を見ている。あ、そうでした・・。ククさんはクロさんの化身でした。
こほんと咳を一つして、
「とりあえず、場所を教えてくれる?」
「はい、そうでした。こちらです〜」
トト君はパッと離れて、用具入れから籠を出してくれた。
そうか、ここにあるのか・・覚えておこう。
お礼を言ってから、またお昼まで花の冠を作るべく花畑に行って、ちょうど良さそうな場所に座るとククが私の膝の上に座ってくる。
あ、甘えてきますね??
「・・・・クク・・」
ククは、私を見上げて緑の目でこちらを見る。
・・・化身って、一体どんな感覚なんだろう。言葉の意味はわかってるみたいだけど・・。うーん、神様の世界はよくわからない・・。ひとまずそっと頭を撫でてみた。
嬉しそうに喉を鳴らすけど、これはクロさんも同じ感覚なんだろうか?どこまで触っていいものか・・、いつものように耳の後ろを撫でた。
まぁ、気持ち良さそうだから・・いっか?
少し撫でてから、いつものように花の冠を作り始める。
サワサワと風が吹いてきて、気持ちがいい。
ああ・・、こんなに穏やかに感じる時間・・、久しぶりだな・・そう思って空を見上げると、何か光ってる。え、星?チカチカと空が光っているけれど、まだ午前中のはずだ。
「え・・?星・・?月??」
空を見ていると、ククが膝の上から降りる。
「あ、クク・・」
そう言うと、あっという間にククからクロさんに姿を変える。
ええ?!!そういう事もできるの?!驚いて、目を丸くしながら後ろ姿のクロさんを見る。
「・・・・・・・また面倒くせぇのが来た」
クロさんは、空に光るものを見て呟いた。
お、お客さん・・・ですか?




