賃貸求む。
ジャラジャラと・・なんならスタッズがついた腕輪がついた神様のはずのクロ様に、じっと見られて縮こまる私・・。
「あ、あの・・」
くるっと腕に尻尾が巻き付いていて、なんならちょっと痛い・・。
するっと腕から尻尾が取れて、横にあった椅子にクロ様・・が座る。
怖い・・。大変威圧感がある。
ちょっと焼けた肌に、金の腕輪が映えていますが大変怖い。
「外・・」
「はい!!」
「なんで行く?」
「え、だ、だって・・何もせずにここでお世話になるのは、悪いかなって・・」
ただ飯は確かに美味しいが、毎日では流石に私だって気にする。
クロ様とやらは、緑の瞳でジィッと私を見る。
「ダメ・・ですか?」
「・・・勝手にしろ。トト、お前探しとけ」
「はーい!」
な、何を探すのだろうか・・、とりあえず怖くて聞けないけど。クロ様・・は、私をまたじっと見て、低い・・低い声で、
「ここには住んどけ」
「は、はい!」
そう言われたら、もうはい!喜んでー!!みたいなチェーン店みたいな返事しかできない。17歳なのに、こんな怖い視線に立ち向かえるわけがない・・。
心の中で泣きそうになる・・。
クロ様は、私の飲んでいたお茶をさっと飲むと、またどこかへ行ってしまう。
こ、怖かった・・・。
呆然と後ろ姿を見ていると、トト君はにっこり笑って、
「クロ様、すっごい機嫌良さそうでしたね!!」
っていうから、ものすごい勢いで振り返ってトト君を見た。
「・・・・え、あれ、機嫌が良かったんですか?」
「はい!近年稀に見る感じですね〜」
「へぇ・・ええええ・・・・・・?」
ダメだ・・、神様の考えている事は、何一つわからない・・・。だって私異世界から来たし・・。
「あの、そういえば・・仕事って・・」
「ああ、クロ様がいいって言ったんで、明日までに探しておきますね」
「あ、ありがとうございます!」
よかった・・。何もせず、ここにいるのも心苦しいし・・、何より怖い。
外で働いていれば、クロ様にきっと出会うこともないだろうし・・、大丈夫だろう・・。ちょっとホッとして、お茶を飲もうとしたけど、そういえばクロ様が飲んじゃったんだ・・。
ポットからお茶を注ごうとすると、トト君がさっと注いでくれた。
「あ、ありがとうございます」
「うふふ、どういたしまして!」
薄い茶色の猫耳がぴこぴこ動いて、触りたい衝動に駆られる・・。
あ、そうだ・・。
「トト君って、何かの動物の獣人、なの・・?」
恐る恐る尋ねてみると、トト君はニコニコ笑って、
「はい!僕は猫の獣人なんです!」
「他の人もそうなの?ここにいる人は・・」
「そうですね〜、あとぉ犬と、兎はいますね〜」
「クロ様・・・は?」
「白虎です」
白虎!なんというか、黒豹とか似合いそうだけど・・白虎!なのにクロ・・。
ちょっとちぐはぐで面白いなぁ・・と思わず笑ってしまった。
トト君は私の笑顔を見て、
「あ、ようやく笑いましたね!あ、もぉ〜〜クロ様もう少しいれば見えたのにぃ」
と、悔しがったが・・残念ですが私は怖いので、あの人の前で笑えそうにない。
怯えた顔なら、いくらでも見せられます。
お茶の後は、トト君が神殿を案内してくれた。
真ん中に神殿があって、その建物の左右に外廊下があって、建物がそれぞれ繋がっていた。
右の外廊下に続いてあった建物・・。サンルームのある建物はクロ様の居住スペース。左の建物は、働いている人達の建物で、服を作ったり、洗濯や食事を作るスペースらしい。
「じゃあ、私は左の建物の方に住む事になるんですね」
説明を受けてトト君に話すと、
「いいえ、クロ様の方でお住みください」
「え?!!!なんで??だって、神様のスペースにそんな気軽に入っていいものなの??」
あの怖いクロ様に遭遇する数が増えるのかと思うと、ドキドキするんですけど・・!!!トト君を見ると、
「大丈夫です!神様は喜びます!!」
超いい笑顔だった・・。私は、お家に帰りたい気持ちで一杯です・・。