神様、走ってます。
薄暗い路地に引っ張られ、私はつまづいて転んでしまうがそのはずみで掴まれていたスカートから手が離れ、急いで起き上がって逃げ出す。
路地裏を走って逃げつつ、ちらっと後ろを見ると真っ黒な体をしている人・・がこちらを、浮きながら追いかけてくる。
ひぇええええ!!!な、なんでぇ?!!!
穢れの元は、神様とか、その傷ついた一部って言ってたけど・・、真っ黒な体は時々通り過ぎる人に目もくれる事なく、私をひたすら追ってくる。なんで私なの〜〜?!
捕まったら、危ない・・と、どこか本能が言っているようで、必死に走る。
大通りに行けば、クロさんに会えるかな・・そう思って、案内図を思い出そうとするけど、ダメだーー!!恐くて思い出せない〜〜!!!泣きそうなんだけど、いや、泣いてるけど!!
「く、クロさん・・」
はぁはぁと息が上がる。
後ろを見ると、真っ黒い体はどんどん近付いてくる。
「クロさん・・!!!」
路地裏で叫んでみたけど、聞こえるわけもなく・・。
明るい方へと走って出た先は、河原へ続く道だ。
「あ、ここ・・」
確か、河原で紙風船とかランタンを飛ばすって言ってた!
そう思い出して、人がいる方を探した。
とにかく神様も見回りしてるって言ってたし・・、誰かがいるかも・・。
急いで、河原の方へ走っていく。
後ろをちらっと見ると、黒い体はどんどん来てるーー!!!!
距離が縮まってるーーー!!!
だからなんで私なんですかーー!!!!
と、向こうに人垣が見えた!
良かった・・、あっちへ行けば・・そう思っていると、思いっきり転んでしまった。
「いった・・」
後ろを見る間もなく、立ち上がって走ろうとしたら、足がもつれる。
「あ」
コロンと転がって、そのまま川へ落ちてしまった。
バシャンと、大きな音がする。
結構な深さに驚いて、慌てて顔を出そうとする。
腕で水を掻いて、水面に顔をあげると、目の前に真っ黒な顔をした人が私を見下ろしている。
「・・・・っは・・・」
声が出ない。
黒い体から両手が私の顔を水面に押そうとして、私は顔を避けようと動こうとするが、体が固まってしまう。
あ、ダメだ・・。
これ、死ぬ・・。
そう覚悟した時、
「たえ!!!」
淡い光が黒い体を包み、あっという間に水の塊になる。
「あ」
その途端、体が動いて、声が出た。
ぎゅっと、水面が私の体を岸へ引っ張り上げて、宙に持ち上げたかと思うと、クロさんが腕を開いているのが見えて、声が出る前に抱きしめられた。
「大丈夫か?!」
クロさんの焦った声が聞こえる。
私は、驚いてクロさんを見上げる。
「クロさ・・」
こ、恐かった・・・。
ガクガクと体が震えて、一気に涙が出てきた。
「クロさんっ・・・・」
ギュッっと体を抱きしめてくれるから、もう泣いてしまった。
なんならわんわん泣いてしまった。
本当に死ぬかと思った・・。
クロさんは、わんわん泣く私に安心したのか、ゆっくり息を吐いて、背中をトントンと叩いてくれた。
「・・悪い、気付くのが遅くなった・・」
泣いてるので、声が出ないけど首を横に振った。
あんな大勢いて、探し出してくれたんだ・・。そんな事ないですって言いたいけど、しゃっくりをあげてて、うまく言葉にならない。
「怪我は?」
怪我・・?さっき転んで足が痛いかも?
そう思って、ゴシゴシ目を拭きつつ、足をみると膝を擦りむいていた。
クロさんは、そっと手から淡い光を出すと、擦りむいて血が出ていた足があっという間に治ってしまった!神様パワーすごいな!驚いて涙が引っ込んだ。
「ありがとう、ございます・・」
ふと体がびしょびしょだったのに服が乾いているのに気付いた。え、これも神様のパワーなの??
ポカーンと口を開けてクロさんを見ると、クロさんが可笑しそうに笑った。




