居場所を把握。
トト君からお洋服を貸して頂き、「お茶にしましょう!」と、声を掛けられるまま、部屋を出ると目の前のサンルームにテーブルにお茶が置かれていた。いつの間に?!
トト君は、私に椅子を引いてくれて、
「どうぞー!」
と、勧めてくれるので・・・あまりに可愛くて悶えてしまった・・。
「ありがとうございます・・」
「うふふ、クロ様早くこっちに来ればいいのに〜」
・・・クロ様とは、さっきの白い耳を頭につけていたジャラジャラのお兄さんだろうか・・?白い耳に、白い尻尾なのにクロ・・ほほう・・・?ちょっと名前間違えたのかな?
温かそうなお茶を一口飲むと、爽やかな香りがする。
「美味しい・・・」
ホッとして呟くと、トト君がにっこり笑う。
「良かったです〜。気に入ってもらえて!」
ニコニコ笑うトト君にほんわか和む・・。いや、待って和んでいる場合じゃない。レポートの提出も、生徒会の書記の仕事も不可能になったのはわかった・・、わかったけど、私は帰れないのは確かな事実・・なのか?
「あのね・・、えーとさっきのクロ様?に助けてもらったんだけど、帰れないって言われたんだけど・・」
「そうですね〜。一方通行なんですよ〜、ちょっと不便ですよね」
「・・・つまり、帰れないのは・・本当・・?」
「はい!なので、どうぞここに住んで下さい!」
「え?住む?!」
帰れないのは決定・・なのは、理解した・・。
全然気持ちは追いついてないけど、けど・・住む???ちょっと待って欲しい・・・、その前にここはどこなんだ?
「えーと・・、ここはなんて言う国で、ここはどこなんでしょうか?」
「あ、そうでした!その説明まだでしたね!」
トト君・・。ちょっと気が遠くなった・・。
「ここはラダっていう国でして、ここはそこを守る神殿です〜」
「国を守る・・?」
「はい、さっきたえさんを助けたクロ様が、ここを守る神様です」
「え?!神様って、国にいるの???」
「たえさんの世界は違ったんですか?」
「いるとは言われてたけど・・・、会えたりはしなかったです・・・」
違う世界に来てしまったのかな・・とは思ったけど、かなり世界が違うな・・。しかも、獣人の神様・・???すごい頭が全くついていかないんだけど・・・。
「え、そんな神殿に急に来た私が住んでいいものなの?」
「はい!」
すっごいいい笑顔でオッケーって言われたけど・・。
「えっと、クロ様・・に聞かなくていいの?」
「大丈夫です。むしろ嬉しいと思います!」
「へ、へぇ・・ええ・・・?」
あの助けてくれたと思ったら、速攻でどこかの部屋へ行ってしまった人が・・?うーん・・、嬉しそうには見えなかったけど・・。
「じゃあ・・、住むにしても、何か仕事とかお手伝いは・・?」
「うーん、それはここの働いている人達がやってるし・・」
「そ、そうなの・・?」
何もしないでここに住むっていうのは、ちょっと図々しい気もする。
助けてもらって、ただ住んで・・食べさせてもらうのはなぁ・・。
「あ、じゃあ・・ここ国って言ってたけど、街もあるんだよね?そこで働き口探してこようかな・・」
あ、そうだ・・。
ここにないなら、外へ行けばいいんじゃない?
国のための神殿なら、外で働いて・・ちょっと還元できればいいかも・・。
我ながらいいアイデアかも・・。
そう思っていると、腕にくるっと何かが登ってくる。
「へ?!」
腕を見ると、尻尾がくるっと巻きついている。
尻尾・・・?
その先を見ると、さっき服を貸してくれたお兄さんこと、クロ様・・が立っていた。
「外へ働きに行く・・・?」
大分重低音の聞いた声に、思わずビクッとして神様・・のはずなクロ様を見るけど、どう見ても怖いお兄さん何ですけどーー???!!