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神様事件です。


外神殿の周りは、どんどん人が多くなってきて・・、前へ進むのも困難なほどだ。


手を繋いでなかったら、私は帰れる気がしない。


「す、すごい人ですね・・」

「今年は、祝い事が重なったからな・・」


今にも舌打ちしそうな顔で、周囲を見ているクロさん・・。

時折、手が淡く光っている。


・・穢れとか祓ってるのかな?


クロさんを見ると、じっと私を見る。


「疲れたか?」

「え、あ、いえ・・大丈夫です」

「・・無理すんなよ」

「はい・・・」


お気遣いありがとうございます・・。

お祭りのために、物凄く格好いいかっこをしているので、なんというか、そんな風に言ってもらうと、大変照れくさい・・。


周りの人もめかしこんでいるけれど、クロさんの姿は群を抜いている。めちゃくちゃ目立つ。何なら、老若男女みんなチラチラ見てる。


・・・確かに格好いいもんな。


クロさんは周囲を見渡して、


「こんなもんか・・」


と、呟く。お仕事終わった感じ・・・?

すると、また大きな歓声が上がる。



え、なに??そう思うと、今度は神殿の方から真っ白い鳥の群が空へ飛んで行く。



「・・わぁ、綺麗・・・!」

「・・祈りが終わったな」

「あ、そうなんですか?」

「豊穣の祈りを終えると、ああやって鳥を空へ放つ」


「そうなんですか・・・」


と、いうことは・・お仕事が終わった・・イコール、で、デートの時間・・・?

私はさっきのノアルさんの言葉を思い出して、顔が赤くなる。


ダメだ・・、今はパトロール中だと思おう。その方がいい。少し冷静になって、周囲を見ると神殿へ向かう人と、出店や出し物を見に行く人で動きが変わってきた。


「たえ」

「は、はい!」

「どこに行きたい?」


「え、だ、大丈夫なんですか?」


まさか聞かれるなんて思わなくて、驚いてクロさんを見る。


「大体終わったからな」

「そ、そうですか・・」


せっかく頭からデートから、パトロールに変換していたのに、ものすごい勢いでデートの文字が頭に突き刺さる。うわぁああ、は、恥ずかしいんだが・・!!


クロさんは私をじっと見るので、慌てて周囲を見ると出店が見えた。


「あの、お店・・見てみたいです・・」

「おぅ」


そうクロさんは言うと、手を繋いで出店の方へ歩いて行く。


お店は、空に関する物が売っていて、風車がびっしり飾られて、風が吹くたびに一斉に回っていたり、羽の飾りが風に吹かれてユラユラと揺れている。


「・・・綺麗ですねぇ・・・」

「あいつの顔が浮かんでくるがな」


・・思わず、バチコーンと音がしそうなウィンクをするノアルさんが思い浮かぶ。


「・・・確かに」


私が笑うと、小さくクロさんも笑う。

おお、笑ってくれた・・。


ふと飲み物を売っているお店が見えた。

色とりどりの果物で作られたジュース屋さんといったところか・・。

そういえば、歩き回って喉乾いたかも。


「飲むか?」

「へ?」


見てたのに気付いたの?クロさんは、私からそっと手を離して、


「そこで待ってろ」


と、言うと人をかき分けて、クロさんは買いに行ってくれた。

す、すみません・・・ボス!!大変恐縮です!!


戻ってきたら、お礼を言わないと・・と、思っていると、不意にグイッとスカートを引っ張られる。


「へ・・・?」


引っ張られた方向を見ると、人と人の隙間から何かがスカートを引っ張っている。ちょ、ちょっと!!


「あの、ちょっとスカート離して・・」


グッと引っ張ると、後ろから人に押されて人混みの中へ入ってしまった。


「あ、ちょ・・」


戻ろうとする間もなく、スカートはグイグイ引っ張られて、ジュース屋で注文をしているクロさんが見えて名前を呼ぼうとしたら、急に声が出なくなる。


え・・何で・・?!


振り返ったその時、スカートの先がちょうど人と人の間から見えた。

真っ黒い、爛れたような手がスカートを掴んでいる。



穢れているやつ。



クロさんの言葉が頭に思い浮かんだ途端、ギュウッと体が声を出す間もなく人の通らない路地の奥へと引っ張られ、私は真っ青になった。




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