神様とパトロール。
ノアルさんは、爆弾のような発言を投げつけておいて、
「あ、そろそろ奥神殿行ってくるね〜!!」
と、爽やかな笑顔で行ってしまった。
・・・・行ってしまった!!!!
私はさっきから無言のクロさんが、どうにも恐いやら、恥ずかしいやら、緊張やら・・で、もうやだお家帰る!!!みたいな気分でいる。・・・いや、帰りたい、切実に。
「・・・たえ」
「はい!!!」
めっちゃ元気のいい返事になった・・。
「・・外神殿に行くぞ」
「はい!!!」
またもめっちゃ元気のいい返事になった・・。
ううう、こんな状態でお祈りが終わって、出し物とか見に行けるんだろうか、いや帰りたい。
クロさんは、無言で中央神殿から外神殿への階段の方へ手を繋いだまま歩いて行く。一面青々とした芝生の庭園のような場所を抜けると、階段が見えた。
「え・・・」
高い。
石の階段でできている階段だが、結構な高さだ。
下の湖から20メートルくらいある???
思わず足が震える。
高い所は、苦手じゃないけど・・風がひゅうひゅうと音を立てて、下から吹いてくると・・やっぱりドキドキしてしまう。思わずギュウッとクロさんの手を握ってしまう。
「・・・たえ」
「はいぃい・・・」
「抱いて下りるか?」
「いえ、それは大丈夫です!!ガッツで下ります!!!」
秒で返した。
そんな事になったら、私は今すぐ湖にダイブしたほうがいいと思う。
クロさんに、所信表明をするかのように強い眼差しで訴えた。本当に大丈夫です。あと、今、それを想像すると大変な事になるので必死に考えないようにしてます。
クロさんは小さく笑って、尻尾を繋いでる手首に回す。
「これなら少しは恐くねぇだろ」
「・・あ、ありがとう、ございます・・・」
うん、恐くないけど・・動機が激しいです。
それでも確かに安心して下りられた・・。
クロさんの神殿は、安心な作りなんだな・・って思った。ティナさんのお祭りにも誘われてるけど、どんな神殿なんだろ・・。安心な作りを切実に求む。
徐々に下りていくと、周りに出店や広場が見える。
もらった案内図に書いてある通りだ・・。
「クロさんお祈りが始まるのって、どうやってわかるんですか?」
「外神殿の入り口で、大きなランタンを飛ばす。それが合図だ」
「へぇ・・・」
まだ昼間だけど、下に行くほど盛り上がっている様子が伝わってくる。
階段を下りて、薄い水色の大きな門の扉をクロさんが開ける。
先に通されて扉を出ると、大きなガラス張りのドームがあって、その周りを2メートルくらいの幅のお堀が囲っている。ガラス張りのドームの中央には、淡い水色の光の塊がゆらゆらと浮いている。
周りの人は、お堀へお花やお金や色々な物を投げ入れてお祈りしている。
「はぁ・・・、またここも全然違う」
「外神殿も、一般人は普段は見られねぇけど、今日だけ外から見られる」
「外神殿も見られないんですか・・」
そう考えたら、クロさんの所は常時見られるのか。
確かに貴重な機会だから、この大勢の参拝客にも納得だ。
そんな事を考えたら、ワッと大歓声が起きる。
ドキッとして周りを見ると、空に薄い水色のランタン・・だろうか、ものすごい数が空へ飛んでいく。
お祈りが始まったんだ・・。
その光景を見るだけで、なんだかドキドキする。
「・・・離れるなよ」
クロさんの低い声にハッとする。
そうだ・・穢れを持っている人も言ってた・・。
今回は、そんな人を洗うって言ってたけど・・要するに穢れを祓うって事だよね?静かに頷くと、クロさんは手を繋いだまま外神殿の周りを一緒に歩く。
人が大勢いて、ぼんやりしていたら離れてしまいそうだったけど、クロさんの尻尾と手はしっかりと私の手を握っていて・・、緊張と不安よりも、ドキドキの方が大きくなっていて、・・・・・私は大変、困る。




