ここはどこ?
川に落ちて、死にそうになって助け出されたものの、帰れないという衝撃の事実に、私は混乱した。いや、逆に混乱しない人間がいるなら教えて欲しい・・、どうすればいいのかと・・。
「トト」
助けてくれたお兄さんが誰かを呼ぶと、プールの向こうに扉があって、そこが開くとトタトタと足音が聞こえる。
猫耳がついた10歳くらいの薄い茶色の髪をした少年が走ってくる。なんなら尻尾も付いてて動いてる。え・・・、尻尾動くの??どういう原理で???
私の側に来た少年に、ジャラジャラをめっちゃつけたお兄さんが睨む。
あ、怖い・・。しかし絡んだら止め・・られそうもない〜〜。
「はいはい〜〜、クロ様お呼びですか〜」
「歩いてねぇで、転移して来いよ」
「え〜、転移したらお姉さんびっくりすると思ったゆえの配慮ですけど」
「・・・・そーかよ」
少年に話しかけていたお兄さんは、私を見るので、ビクッと体が跳ねる。
「とりあえず、着替えろ」
そう言われて自分の体を見ると、レインコートはないし、裸足だし・・何よりワイシャツが濡れて下がスッケスケである・・。下着までびっしょり・・。脳みそが理解した途端、体を手で覆う。
「〜〜〜〜〜〜!!!!!!」
声にならない叫びと共に、顔が真っ赤になる。
お兄さんがため息をついて、自分の上着を脱ぐとバサッと頭に掛けてくれた。
「着とけ」
あ、優しい・・。そしていい匂いがする。
貸してもらった上着で体を隠しつつ、顔をあげる。
「あ、ありがとうございます」
「ん」
お兄さんはそう言って、横にあった階段を登って、奥の部屋らしき所へ行ってしまった。
ちょっとぽかんと見ていると、少年が近寄ってきた。
「初めまして〜、僕トトって言います」
「あ、たえと言います」
「たえさんですね。可愛い名前ですね!」
「あ、ありがとうございます・・」
猫耳の少年は、にっこり笑うと耳がピコピコと動く。可愛い!!!
「風邪ひいちゃいますから、とりあえずお着替えしましょう」
「は、はい・・」
「こっちです〜」
そういうとトト君は、さっき来た扉の方へ私を連れて行く。
真っ白な扉を開けると、外廊下になっていて、周囲を見ると庭園なのか綺麗に木々や花が咲き誇っている。
「わぁ、綺麗ですね!」
「そうでしょ〜!ここは一年中こんな感じです〜。あ、冬もありますけどね」
「冬もある・・?」
不思議な表現だなぁと思いつつ、外廊下に繋がっていた扉を開けると、右手は全面ガラス張りのサンルームになっていて、植物が飾られていて、ハンモックまである!気持ち良さそう・・。
左手に部屋があるのか、扉がいくつかあり、真ん中辺りの扉をトト君が開けて一緒に入ると、さっきの庭園だろうか、花がたくさん咲いている様子がよく見える部屋だった。
白い壁に、下は絨毯がいくつも敷いてある。
トト君は右側にある扉を開けて、中へ入るので私もついていくと、洋服がたくさん吊るされていた。
「わ・・、凄い数・・」
「ね〜、そうですよね!あ、これがいいかな」
そういって、トト君は薄い水色のワンピースを取って私に渡す。くるぶしまであるんじゃない?ってくらいの長さだ。リボンがついていたので、腰で結ぶタイプらしい。
「えーと下着類はここの棚の中にあるので、好きなの着てください」
「あ、ありがとうございます」
ああ、少年にそんな事を気遣って頂いてしまった・・。すみません・・。ちょっと年上として不甲斐なかった・・。お礼を言って、衣装部屋で下着を探して着替える。・・なんかサイズぴったりなんだが・・。
着替えて濡れた服を持って部屋を出ると、トト君が濡れた洗濯物をさっと受け取って、
「洗っておきます」
「え!いえ自分で洗いますよ!そんな申し訳ないです」
「でも、こっちの勝手がわからないでしょ?大丈夫ですよ。ここ、働いている人たくさんいるんで」
「は、はぁ・・・?」
トト君はにっこり笑うと、また耳がピコピコと小さく動いた。
・・・可愛い!触りたい・・。