嵐の日に。
私、花季 たえ・・。
そこら辺によくいる女子高生だ。
いや・・ある意味真面目な方だ・・そこは付け加えておく。
今日は「明日絶対提出しないと、成績下げるから」と言われたレポートの提出日だ。なぜ!よりにもよって今日?
外は朝から土砂降りだが致し方ない・・。泣きそうだけど。
今日は生徒会の会議もある。押し付けられた書記だけど・・行くしかない。
ビニールバックにジャージを入れておいて、制服が濡れるだろうから、これに着替えればいい。
携帯を見るけど「登校、気をつけてね!」くらいのメールしか学校から来ていない。可憐な17歳の乙女が万が一、事故ったら責任取れよ!!そう思って恨めしく電源を切ってカバンにしまった。
見てくれはこの際仕方ない・・。
お母さんの使ってるレインコートとレインブーツを装備して、家を出た。ああ、土砂降りだ・・。でも、レポートと会議・・。きっと皆サボっているかもしれないけど・・。
半泣きになりつつ、学校へと歩いて行く。
轟々と鳴る風の音にちょっとビビりつつ、途中の橋を渡る。
わ、水が結構多くない?
橋の真ん中を歩こうとしたら、向こうから車が来た。ちょっと怖いけど、橋の端っこへと体を寄せた。
瞬間、ものすごい風が体を煽った。
足がよろけて、橋の柵に体がぶつかる。
あ、危ない・・。柵に手をかけた途端、古い鉄柵が私の体と一緒に崩れた。
え、嘘・・・!!!
手を橋の方へ向けようとしたけれど、遅かった。
そのまま、体は橋の下・・、濁流の中に飲み込まれていった。
ザブン・・・!!!
大きな水音と一緒に、冷たい水の温度と流れの速さに手をバタつかせる。
目を開けられない!上に向かって顔を出したいけれど流れが早くて顔を出そうにも、出せない。
ダメだ・・・、息が・・
そう思った時、私の手首を誰かが強く掴んだ。
グイッと強い力は水の流れを感じないかのように、悠々と手を引っ張り、私の堅い石のような物の所へ引き揚げる。息を思い切り吸う。し、死ぬかと思った・・・。
ゲホゲホと咳をしつつ、必死に息を吸った。
「・・大丈夫か?」
低い声が聞こえる。
男の人・・?
そっと目を開けると、硬い大理石のような場所だ。
ここ・・・室内?そういえば、雨がさっきまで降っていたのに、降っていない・・?
ガバッと顔を上げると、長い茶色の髪を緩く編んで結んでいる緑の瞳をした男性がしゃがんでこちらを見ている。眉がキリッとしていて、ちょっと目は気怠げな感じの・・、えらい美形だ。ものすごい格好いい・・。
あれ・・でもその頭の上の動物みたいな耳は飾り?流行ってるの?
けど、腕輪やらジャラジャラ付いてるし、体にはタトゥーですか?ゆったりした服から結構、腕にがっつり入っているのが見えて・・、まず絶対関わらないようにする人・・ナンバーワン!な、感じだった。
あ、でも・・この人が助けてくれたのかな?
「あ、あの助けて頂いてありがとうございます・・」
「ん」
うん、返事の仕方も結構怖い感じだ・・。
ちょっとビクビクしながら、周囲を見渡す。天井まで大理石のようで、円形のドームになっている。
私は、そのちょうど真下にある丸い、浅いプールみたいな場所のふちに引き揚げられたようだ。
待って・・・?
私は外にいた。橋から落ちて、川に流されたのに・・なぜ、室内???
「・・・えっと、ここ・・・どこですか?」
「神殿」
「え?!私の住んでる所に神殿なんてないんですが・・」
「・・落ちてきたんだろ?」
「・・・橋の下の川には落ちました・・」
「お前、そのままじゃ死ぬから、こっちに連れて来た」
死ぬから連れて来た・・・?
「え、じゃあ帰れるんですか?」
恐る恐る、お兄さんに聞いてみた。
「帰れない」
「なんてこったい!!!!」
私の叫び声は、円形のドームによく響いた・・。