表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

48/248

第47話「ジェネラル強襲②」

「B隊、ソニックソードが来るぞ!」


 接敵すると同時に、大剣を手にとんでもない速度で突撃してくるリヴァイアサン・ジェネラル。


 全長4メートルの巨体が、身の丈程もある大剣を手に迫ってくるのは、恐ろしいくらいの迫力がある。


 その進路上に立つ四人の騎士達は、誰一人巨体の接近に怯えずに構えて、盾を強化する〈リイン・フォース〉と、ダメージに対して1回だけ50%カットする〈ファランクス〉を重ねがけする。

 上段から振り下ろされる巨大な剣。

 騎士達は二つのスキルを重ねた盾で受け止め、数メートルほど後ろにずり下がった。


 攻撃を止められて、ジェネラルの動きが一瞬だけ硬直する。


 その隙きを狙い、アタッカーの二人が地面を駆けた。


「クロ、行くぞ!」


「うん!」


 ソニックターンで横から急接近したソラは高く跳躍して、風を纏った〈デュアルネイルⅡ〉で背中を二回切りつける。


 クロが少しタイミングをずらして、付与スキルが施された〈ソニックソードⅡ〉で左足の関節を狙い切り裂く。

 二つの電光石火の攻撃は、バックアタックボーナスと弱点ダメージで、敵のライフゲージの一本を三割ほど削った。


 〈属性付与Ⅱ〉を付与された攻撃スキルは、魔法攻撃扱いで軽減されない。


 オマケに弱点を突いた一撃は、さぞ痛かろう。


 大ダメージを受けたジェネラルの視線は、当然こっちに向いた。

 しかし、それは想定内である。


「ギオル!」


「了解したA隊〈挑発〉発動!」


 A隊を率いるギオル達がスキルを使用して、ボスの〈挑発〉を試みる。

 一人目、ミス、二人目、ミス。

 三人目の〈挑発〉が発動すると、成功してジェネラルの視線がオレとクロから外れる。

 敵のターゲットは、強制的に違う方角にいるA隊に引き寄せられた。


 騎士の〈挑発〉は、発動したら確定でターゲットを自分に向けれる万能のスキルではない。

 その効果は、ボスクラスが相手だと高い確率で外れる事がある。

 だからこうやってタンク隊は、一人が成功するまで、スキルが無駄に重ならないように順番で発動しないといけないのだ。


 そして一度発動して、失敗するとペナルティが発生して、次の成功率は下がってしまう。


 だから先に外した二人は、最低でも90秒間の〈挑発〉の使用はできない。


 その為にタンク隊は、基本的にはローテーションさせるために最低でも四人以上の一個小隊を三〜四は必須とする。


 これをアストラルオンラインのトッププレイヤー達は〈Tシフト〉と呼称していた。


 ジェネラルは、剣を横に構える。

 あの予備動作は、片手直剣の刺突スキル〈ストライクソード〉だ。


 剣の質量とモンスターの体格から推察するに、盾で受ければ最悪それごと貫かれる可能性がある。

 受けよりも──回避優先。


「A隊、刺突スキルが来る、横に跳んで避けろ!」


 ソラの指示に従い、ギオル達は即座に左右に別れて跳ぶ。

 先程まで彼等がいた場所を、淡い青色の発光をした渾身の鋭い突きが、地面ごと抉り取った。


「A隊、アタックだ!」


「「了解!」」


 ソラの指示に従い、回避した騎士達が剣に風と共に淡い光を纏う。

 攻撃をして一瞬だけ生まれた隙を狙い、四人のソニックソードが左右からジェネラルの脇腹に叩き込まれた。


 それによって敵のライフゲージが、一気に残り四割まで減少。


 ジェネラルは雄叫びを上げると、距離を少しだけA隊から取って、剣を肩に担ぐように構えた。

 

 あれは片手直剣の二連撃のスキル〈デュアルネイル〉の構えだ。

 敵の狙いは一撃目でガードを確実に崩して、そこから二撃目を叩き込むつもりか。


「A隊、全力防御!」


 ソラの指示を受けて、ギオル達のA隊は一か所に集まって盾を構える。

 使用するのは〈リイン・フォース〉と〈ファランクス〉のスキル。

 巨大化した四人の騎士の盾は、振り下ろされた重たい一撃を受け止め、二撃目も受け止めきる。


「お、おおおおおおお!?」


 HPは三割ほど削られたものの、普通ならば防御しきれない二撃を耐えた事に、ギオル達は感動の声をもらす。


 その事に、ソラは少しだけ鼻が高くなる。


 戦闘が始まる前に、自分が彼等に付与した最大5つの付与スキル枠。


 一つは最大10回までの攻撃に〈風属性Ⅱ〉を付与する事。

 その内の残り四つは〈防御力上昇付与〉の重ねがけだ。

 これによって5回までは、受けるダメージを大きく軽減する事ができる。


 クソまずいマジックポーションを何十本も飲む苦行は、辛いものだった。

 だがそのおかげで、ここにいる部隊は今ならば、トップクランの精鋭達よりも上の戦力と化していた。


「クロ、強撃一回!」


「りょーかい」


 ジェネラルの左右に回ったソラとクロは、剣を横に構えて跳躍。

 タイミングを合わせて、二つの青い風を纏う〈ストライクソードⅡ〉を左右から無防備な脇腹に深々と突き刺した。


『グオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!?』


 クリティカルヒットしたダメージは、一気に一本削って、残り一本に追い込む。


 するとジェネラルが、大きく息を吸い込むモーションをした。


 膨らんだ大きな胸。


 相手は、リヴァイアサンタイプ。


 この状況で考えられるトリガー技なんて、もはや一つしか考えられなかった。


「全隊下がれ、毒の霧が来るぞ!」


 ソラが叫ぶのと同時に、ジェネラルは口から猛毒の霧〈ポイズン・ミスト〉ではなく〈ヴェノム・ミスト〉を二回放出した。


 こうなる事をある程度予想していたソラは、状態異常耐性Ⅱと4回も積み重ねた耐性付与スキルで2回の判定とも無効にしたが、他のメンバーはそうはいかない。


 クロは4回重ねた耐性付与のおかげで、一回分の毒はなんとか回避できた。

 しかし、ヴェノム・ミストは相手に毒を二回付与するもの。

 1回目は防げても、2回目を受けてしまい、毒状態になる。

 他の騎士隊のメンバー達は、耐性付与を施す枠がなかった為に、受けた毒レベルが2になっていた。


 視界の端で、HPが毎秒5も削られているのが見える。


 ……まずい、このままでは騎士隊が先に壊滅するぞ。


 しかし、毒を回復するアイテムが、よりによってこの序盤には存在しない。

 それが〈リヴァイアサンタイプ〉の驚異を更に底上げしていた。

 だからソラは、この場で唯一解毒できるアリアに視線を向けると。


「騎士隊は一度、アリアのいるラインまで下がって守りを固めろ!」


「ソラ様!?」


 ギオルが驚きの声を上げた。


 自分達は、まだ戦える。


 そう言いたいのだろうが、ソラは首を横に振って否定した。


「クロは直ぐに解毒しなくても、ポーションでなんとなるけど、騎士隊の毎秒5のダメージは放置できない。それにオレ達と違って、アンタ達は死んだら復活リスポーンしないだろ?」


「……了解しました。全隊、陣形を崩さずアリア様の元まで下がるぞ!」


 それをさせまいと、リヴァイアサン・ジェネラルが咆哮して、騎士隊を追撃しようとする。


「させるかよ!」


 敵の〈ソニックソード〉に、横から割り込んだソラの〈ソニックソードⅡ〉が叩き込まれ、僅かに軌道をずらす。

 ジェネラルの剣は、騎士隊の真上を空振りした。


「クロ、Aシフト!」


 ソラが叫ぶと、クロが反応してジェネラルの脇腹を〈ソニックソードⅡ〉で切り裂いた。

 敵のHPが、数ミリだけ削れる。

 明らかに先程よりも削れていない。

 もしかしたら、二本目はHPの総量が一本目よりも多いのかもしれない。

 ソニックターンで即座に側に帰ってきた彼女に、ソラは告げた。


「クロ、オレが敵のスキルを受ける。君はタイミングを見て〈Aシフト〉を頼む」


 Aシフトとは、アサルト・シフトの略。

 ツーマンセル以上で敵の攻撃を一人が受けて、生じた隙を狙ってスキルで反撃する事を、アストラルオンラインではそう呼称する。

 本来ならば、四人の編成でやる作業だがこの状況だ。

 二人で切り抜けるしかない。


「オレ達なら勝てる。行くぞ、クロ」


「……うん!」


 クロは少し間を置くと、嬉しそうに頷く。

 現状でアストラルオンライン最強とも言える自分とクロのタッグならば、後一本削るのは不可能ではない。


 白銀と漆黒の少女は、たった二人だけで強敵である〈リヴァイアサン・ジェネラル〉の前に立ちはだかった。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] この章をありがとう
[気になる点] ハルトって奴の事かな?多分何かの伏線かな?私の考えではクロの親だと思うけどね、後はハルトのPCでもNPCでも敵mobでも無い黄色いカーソルの正式名称が気になるね
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ