婚約者そして悩み
感想がほしいです……。
私がシーリーさんに出会ってから一週間が経った。
学校では本格的な授業が始まっていた。
授業は主に魔法、剣技、座学の3つだ。
ただ魔法も剣技も座学で知識を身につけてから出ないとあまり意味がないので、今は座学を中心にやっている。
しかし、問題がある。
このままのペースで行くと半年後にある交流戦までにほとんど実戦ができないことだ。
なんで入学して半年で交流戦なんかするんだよ。
まだほとんど何も学んでないじゃん。
先生によるとこの時期にAクラスとDクラスで対決させ、負けてるDクラスをバカにしているらしい。
ほんとサイテーだね。
魔力量は女子の方が後から増えやすくなるのだ。
最終的には男子より女子の方が多くなることが多い。
だから早めに交流戦をするのだろう。
まあ今年はDクラスが勝ってAクラスをバカにするんだけどね!
そして今、私はすごく衝撃を受けている。
「も、もう一度言ってください。」
「勇者はアーリーの婚約者だぞ。」
「えー!」
時は数分前。
私はいつものように勇者をボロクソに言っていたのだ。
いや、私悪くないよ!
だってあいつなんかいっつもついてくるんだもん。
暇が有ればアーリーのところに来て、アーリーが汚れるからお前はどっかいけとか、アーリーを連れ回すなとか言ってくるんだよ。
アーリーは私の抱き枕なんだよ!
「違うと思うぞ。」
アーリーは私のものなのに、いちいちやってきては文句を言ってくる。
「だからお前のものではないと思うぞ。」
「先生うるさいです。心の中の声まで突っ込まないでください。」
「いや、普通に声漏れてたぞ。」
「……とにかくうるさいです!」
「分かった、分かった。」
えーとなんの話だっけ?
あ、そうだ。
まぁなんやかんやで勇者の悪口を言ってたところに先生から天地を引き裂くぐらい衝撃の事実を知らされたのだ。
勇者がアーリーの婚約者なんて私は絶対に許しません!
というわけで勇者をボコろう。
ちょうど半年後に交流戦という絶好の機会があるのでそれまでに鍛えまくろう!
そのためにはやっぱり冒険者再開だね。
目標はとりあえずAランクまで上がること。
Aランクに上がるには実績を積み、試験に合格する必要がある。
Aランクになるといろいろなことができるようになって便利なのでこれを機になってしまおうというわけだ。
冒険者を再開すると言ってもさすがに学校がある日に依頼を受けるわけにはいかない。
学校は6日に1日休みなので、その休みの日に依頼を出来るだけこなす必要がある。
ちょうど明日が休みなので明日から頑張ろう!
「というわけで今日はいっぱいモフモフするぞ〜!」
「何がというわけでなのかはわかりませんがモフモフしましょう。」
あっ、そういえば。
これを機に……。
「そういえばアーリー。なんであんなクソみたいな勇者が婚約者なの?」
「それは父が決めたことなんです。あんまり乗り気ではないんですけど……。でも、国のためなら仕方ないなと。」
「なんで勇者と結婚するのが国のためになるの?」
「勇者というのは1人で1軍に匹敵するほどの戦力です。どこの国もその力を欲しています。勇者と婚約すると、それだけで勇者が手に入るのです。」
「でも、アーリーは嫌な思いをしてるんでしょ?国民が嫌な思いをしてるじゃん?」
「えっ?」
「だから、アーリーが嫌な思いをしてる時点で国のためになってないじゃん。」
「私は王女なので
「王女だったらなおさらだよ。」
「どういうこと?」
「王女って王様の子供でしょ。子供を幸せにできないのに、国を幸せにできるわけないじゃん。」
「レーカちゃん……。」
「アーリー、幸せっていうのは自分で掴み取らないといけないんだよ。決して向こうから歩いてくるわけではないの。」
「……。」
「お父さんにはっきりと自分の意思を伝えた方がいいよ。私はあんな人と結婚したくないって。」
「うん、ありがとう。頑張ってみる。」
「今日だけは私がお姉ちゃんになってあげる。だから、頼ってもいいんだよ。」
アーリーは私に寄りかかると泣いてしまった。
多分王女だからっていろいろ我慢してきたのだろう。
最近ちょっと難しい顔してることが多かったから、回り道して論点ずらしてなんてめんどくさいことしてでも聞き出してよかった。
勇者の話題はダシになったのだ。
ハッハッハ。
アーリーだってまだ12歳ぐらいのはずだし、そんな子にこんな思いをさせるなんて。
国王とは後で話をする必要がありそうだ。
私は泣いてるアーリーをそっと抱きしめながら、これからのことについて考えた。
とりあえず今日のモフモフはお預けだね。
私がモフモフ以外を優先するなんて珍しい。
あれ?
珍しい?
前世の私ならある程度我慢などをしていた。
もしかして体に合わせて精神年齢が少し落ちていた?
これは後で少し考える必要がありそうだ。
とりあえずアーリーを王城まで連れて帰って、シーリーさんにお願いして国王に合わせてもらおう。
考えがまとまったので即行動だ。
私は泣き疲れて寝てしまったアーリーを抱えて、王城に転移した。
そこでアーリーをベッドに寝かせると、魔法でシーリーさんの位置をさぐる。
「いたいた。ってまた調理場じゃん。」
また、あの美味しそうなクッキーを作っているのか、けしからん。
私が食べてやろうではないか。
……じゃなくて国王だ。
私はシーリーさんのもとに転移した。
「あら?レーカちゃん!クッキー食べる?」
「シーリーさんこんばんは。今日は用事があって……。国王に合わせてください。」
「分かったわ。ついてきて。」
へっ?
いやいや、そんな簡単に会える人じゃないでしょ。
まぁ私としては楽だからいいんだけど。
国王と対面した私の行動は早かった。
「このクソジジィー!」
今の私の力を最大限に発揮したパンチは吸い込まれるように国王の顔面に向かっていった。
「うおっ!」
いくら5歳児の体といえど、私の前世からの集大成とも言える一撃に国王は吹っ飛んだ。
国王は国王とは思えないほど鍛えられていた。
冒険者でもよっぽど腕がないとこの人には勝てないだろう。
そう思ってのさっきの一撃だ。
「なんだなんだ。やってくれたな。俺はやられっぱなしでいるほど優しくねーぞ。たとえ子供が相手でもな。」
やっぱり。
避けられこそしなかったけどかなり逸らしていたから平気そうだね。
面白くなってきた!
そこから白熱した戦いが続いていた。
私は国王の表情、視線、筋肉の動きなどあらゆる情報から次の行動を推測する。
そうすることで国王の攻撃を一度もくらわずにいた。
しかし、私の方が有利かと言われればそうでもない。
この体だと一発でもまともにくらうとアウトなので思い切って攻められないのだ。
このままだと疲れるだけで終わる気がしない。
そう思っていたところに声をかけられた。
「あぁ、負けだ負け。お前さんちっちゃいのに強いな〜。んで、何が目的なんだ。ある程度だったら聞いてやるよ。」
「アーリーの婚約の話を白紙にしてほしいの。」
「別にいいぞ。」
はっ?
いいんか〜い!
なんか王族って思ってたのと違う気がする。
疲れた。
ベッドで寝よう。
ベッドよーし。
ペットよーし。
抱き枕よーし。
うん?
ペット?
まぁいっか。
おやすみ。