入学試験そしてトラブル
建物が多い。
私の王都の第一印象はそれだった。
私は王立学園に入るために王都に来ている。
王都はやはり人が多くあまり落ち着かない。
入学試験は明日なので今日は王都を見回ろうと出てきたのだが、特に気になるところもなくブラブラするだけになってしまった。
帰ろうかな。
私がそう思ったとき人が集まっているのが見えた。
行ってみよう。
「おい、さっきの本当か?」
「分からん。だが、少なくとも騎士は本物ぽかったから本当なんじゃないか。」
「勇者だけでなく王女も学園に入るのか。」
学園って王立学園のことかな?
王女様に勇者が学園に入るらしいね。
すごくどうでもいい。
帰ろう。
いい朝だ。
今日は学園の入学試験だ。
さっさと受かってモフモフしに行かないと。
私は素早く準備を済ませると学園に向かった。
まずは座学だったが、なんというかすごく簡単だった。
新手の罠かと思ってしまったほどだ。
試験時間は50分だったのだが、5分ぐらいで終わってしまった。
そして時間がかなり余ったため寝てしまった。
すると、終わりに気づかず周りの人はほとんど次の試験に行ってしまった。
ほとんどというのは、わざわざ私を起こしてくれた人がいるからだ。
「ありがとう、起こしてくれて。」
「いえいえ。1人だと少し心細かっただけですから。」
金色の長い髪を触りながら少し恥ずかしそう話している少女は、アーリーというらしい。
本当にアーリーがいなかったら失格になってたかもしれない。
しっかりと感謝しよう。
そんなことを考えていると次の試験会場に着いた。
次の試験は魔法の試験だ。
アーリーが先に受けたのでその様子を見ていたのだが、正直言ってしょぼい。
的に当たったは当たったのだが威力が足りず壊せていなかったのだ。
さすがに私でもあの的は壊せるよ。
アーリーは12歳らしいが、いくら前世の知識があるとはいえ5歳に負けたらダメでしょう。
しかし、本人は満足そうな顔をしているので言わないでおく。
とりあえず、やるか。
私が使ったのは威力を極限まで落とした火の玉を出す魔法。
威力を極限まで落としたにもかかわらず的は粉々に砕けてしまった。
アーリーは驚いた顔をしていたが、正直これくらいは誰でもできると思う。
「アーリー次行くよ。」
私は驚いて未だにぼーっとしているアーリーに声をかけると次の会場に向かった。
最後は実技という名の剣術。
会場に行くと試験官と誰かが戦っていたので、どうやら追いついたようだ。
うん。
試験官も弱いな。
お母さんの方が圧倒的に強いし。
実技試験もアーリーが先に受けたが、これも正直しょぼかった。
しかし、ちゃんとした師匠にちゃんとした剣を習えば強くなるだろう。
私の試験は試験管をボコボコにして終わった。
試験が終わると大きな広場に集められた。
どうやら試験の結果を伝えるそうだ。
普通後日やるもんじゃない?
まぁ助かるからいいけど。
紙が張り出され、それに合格者の名前が書いてあるそうだ。
紙が張り出されるとみんなが紙に殺到した。
いや、そんなに急いで行っても結果は変わらないでしょ。
私の名前はすぐ見つかった。
なぜなら1番最初に書いてあったからだ。
満点1位の合格らしい。
お母さんにいっぱい褒めてもらおうっと。
ちなみにアーリーの名前もすぐ見つかった。
2位だったからだ。
あれで2位?
この学園大丈夫かなぁ?
まぁいいや。
私はモフモフするだけだし。
すると近くにアーリーがいたので声をかける。
「アーリーも合格してたね。おめでとう。」
「ありがとう、レーカちゃん。ていうか、レーカちゃん5歳だったよね。5歳でスキルもまだ持ってないのに1位ってすごいね!」
スキル?
そういえばフィルさんもなんかそんなこと言ってたような気がする。
まぁなんかどうでもいいものな気がするけど、一応どんなものなのか聞いとこうかな?
「ねぇアーリー。スキルって何?」
「そっか。レーカちゃんはまだ知らないんだね。スキルっていうのはね、神様からの贈り物なんだよ。もらったスキルによってできることが違うんだけど、戦闘系のスキルだと強い魔法が使えるようになったり剣の腕が上達したりするの。スキルにも強い弱いがあって強いスキルを持っているとそれだけで優遇されるの。」
神様?
神様はそんなことするようなやつではなかったと思うんだけど。
前世で一度だけ神様に会ったことがある。
神様というのは、全知全能なんかではなく、人より少しだけできることが多くとても長生きするだけで人とそんなに変わらなかった。
寂しがりやで優しくて、いい神様だった。
しかし、神様というのは人に対して平等でなければならないらしい。
私ばかりに構うわけにはいかなかった。
本当はもっと話したかっただろうに。
そんな神様がスキルなんてものを与えるだろうか。
スキルは差別を生んでいる。
自分のやりたいことを我慢してでも、平等を大事にしていた神様が本当にそんなことをするだろうか?
少なくとも私の知ってる神様だったらはそんなことはしない。
だから、アーリーが言う神様と私が知ってる神様は別物だろう。
それに借り物の力で強くなれるわけがない。
力に振り回されておしまいだろう。
そういえば実技試験で同じような動きをしている人がたくさんいた気がする。
機械的な動きだったので印象に残っているのだ。
あれは動きに補正というよりで決まった動きしかできないようにしているだけだ。
なんかめんどくさいことが起こりそうな気がする。
スキルって本当にめんどくさい。
なんでこんなもの作ったんだろ?
まぁいいや。
なんかあったらあったでその時に考えよう。
はい、ありました。
いや、早いよ。
普通もうちょっと後でしょう。
小説書いている人のゴホゴホ……、私の気持ちも考えてくれるかな〜。
今何が起こっているかと言うと、自称勇者のやばいやつに絡まれてます。
5歳でスキルもないくせに1位なんてありえないとか、勇者である僕が負けるはずがないとか。
スキルスキルうるさいんだよ。
要するにガキだね。
いやまぁ12歳らしいし本当にガキなんだけど。
ちなみに自称勇者くんは3位だったらしい。
アーリーにも負けてるじゃん。
「おい、聞いてるのか。王女であるアーリー様はともかく貴様のようなスキルもないやつに僕が負けるわけがないだろ。どんな不正をしたんだ、答えろ!」
うん?
アーリーって王女だったんだ。
はーん。
ひーん。
ふーん。
へーん。
ほーん。
はひふへほ。
じゃなくてなんの話だったっけ?
そうだ。
アーリーが王女って話だ。
まぁどうでもいいか。
どうせ、態度を変えるつもりもないしね〜。
「おい、無視するな!」
「うるさいな〜。自分が弱いからって人のせいにしないでくれる。そんなことよりアーリー、一緒に学校見て回らない?」
そう言って、私はアーリーのところへ行くと、
「アーリー様を呼び捨てだと。ふざけるな。お前如きがアーリー様に近づくんじゃない!」
なんでお前が怒るんだよ。
それを決めるのはアーリーであってあんたじゃないでしょ。
アーリーの決めること勝手に決めてるあんたは何なのよ?
私はイラついていた。
私は早くモフモフしたいの!
どうでもいい話するなよ!
なんか余計にイライラしてきた。
もう我慢できない。
「いい加減黙れ。」
そう言いながら私は殺気を放つ。
「私もアーリーもあなたに興味がない。だから話しかけないで。」
それだけ言い残し、私とアーリーは学校を探索しに行った。
その後しばらくの間、そこはシーンとしていた。