心
「白銀の騎士様、レーカちゃんおはようございます。それにエリカさんとサラさんも。今日は4人なんですね。」
「おはようございます、アクアさん。これからは4人で来ることが多くなりそうです。」
アクアさん、というのは冒険者ギルドの受付の人の中で唯一私とアーリーの本名を知っている人だ。
普段は受付をしているが、実はギルドマスターである。
「そうなのですか。それはこちらとしても有難い限りです。私が言うのもなんですが、この町、クライには優秀な冒険者があまりいませんから。」
実は私達はこの町で1番ランクの高い冒険者だ。
つまり私は偉い!
ドャ!
今日受けた依頼はまたオークの討伐だった。
少し前からオークの目撃情報が相次いでいるらしい。
おそらく教会の仕業なのだろうが、目的も分からない上に確証もない。
そして、それを調べるのは私達の仕事ではない。
「こんなに町の近くにオークの巣があるなんて。」
「まぁまだオークで良かったんじゃない?お肉が美味しいし。」
「まぁそうかも知れませんね。」
まぁ素材に需要がないと狩る側も大変だしね。
ちなみに私達が狩った大量のオークの肉は全て私達とモフモフの胃袋に消えている。
特にホワイトタイガーのタイトは食いしん坊だ。
嬉々として肉を頬張る姿は、普段の威厳が全て消え去りただの可愛いモフモフでしかない。
「レーカが、また妄想の世界にトリップしてる。」
「ちょっとタイトのこと考えてただけだよ!」
全く失礼な。
「まぁ何はともあれ依頼分の討伐は完了ですね。」
「そうだね。そういえばサラ、久しぶりに来てどうだった?」
「やっぱり体を動かすって良いですね。頭がスッキリします。」
ちなみにサラはバリバリの武闘家である。
実は私たち4人の中で2番目に強い。
もちろん1番は私だよ。
ただ最近はアーリーが実力を上げてきている。
油断は出来ない。
「ところでさっきから気になっているのですが、これなんですか?」
「まぁ気になりますよね。」
サラが指を刺したのは人間用と思われる小屋のことである。
前に見たやつと同じような。
うん?
4人組の気配がする。
だんだん近づいてきている。
「いたいた。兄貴、あいつらですよ。」
「なんだ弱そうじゃないか。俺がやる必要あるのか?」
「一応高ランクなんで。保険ですよ、保険。」
近づいてきた4人組は、いかにも悪者っぽい顔つきをしている。
「何か用ですか?」
私たちを代表してサラが声をかけた。
「貴様らを殺してくれと依頼が出ていてな。悪いが死んでくれ。」
依頼?
誰から?
そんな殺されるようなことしたっけ?
全く身に覚えがない。
「レーカちゃん。あの兄貴って言われてる人は、おそらく指名手配されてる人です。気をつけてください。」
アーリーが小声で話しかけてきた。
指名手配なんていつの間に知ったんだろ?
アーリーはいつもどこからかいろんな情報を仕入れてくるのだ。
それにしても指名手配か。
よっぽどのことをやらないとならないんだけど。
アーリーたちは震えている。
まともに戦えないだろう。
まぁ人との戦闘なんてしたことないし、無理もないだろう。
しょうがないし速攻で片付けようか。
魑魅魍魎にかける慈悲なない!
私は魔法を発動させる。
「悪いな、お嬢さんたち死んでくれ!」
相手の構成はおそらく前衛1、中衛1、後衛2。
前衛1が指名手配犯で強いのだろう。
編成が後衛に偏っている。
普通ならそれでいいのかもしれないが、私には大きな隙でしかない。
私は身体強化を発動させ、真正面から突っ込んだ。
「正面から突っ込むとはバカなのか?」
何か言っているが気にしない。
ここはある程度ひらけた場所だ。
魔法で援護されると面倒だ。
だからあえて正面から突っ込むことで、魔法の射線をきる。
そしてそのまま前衛の横をすり抜けた。
「ぬ?」
狙いは中衛。
前衛は固く、後衛はもしものときの備えがある。
1番叩きやすいのは中衛だ。
私は勢いのまま中衛を切り捨てる。
「えっ?」
そして突然の仲間の死に混乱している後衛2人もとる。
防御結界を張っていたが、動揺で制御が崩れている。
2人ともまとめて切り捨てた。
「貴様!」
前衛が怒って突っ込んでくるが、突っ込んでくるならそこに刃を置くまでだ。
「ガハッ。」
戦闘終了。
魔法解除。
「終わったよ。」
「レーカちゃん?」
アーリーたちは呆然としていた。
あまり動揺しないエリカですら動揺していた。
まぁ目の前で人が死んだのだ。
それも私が殺した。
呆然とするのは仕方ないね。
「とりあえず帰ろうか。」
「……そうですね。」
今のアーリーたちには心を落ち着かせるための時間が必要だ。
私たちは依頼達成の報告をするとそれぞれの部屋で休むことにした。
4人組は依頼されたと言っていた。
おそらく教会だろう。
だとすれば今後はこういう機会が増えるかも知れない。
アーリーたちには慣れてもらわないと。
とくにアーリーは今後おそらく悪人を捌く立場になる。
そんなことを考えていると不意にドアがノックされた。
「レーカちゃん少しいいですか?」
アーリーだ。
「入っていいよ。」
アーリーは私の部屋に入ってくると私の隣に座った。
今にも泣きそうな顔で。
わたしはアーリーをそっと抱き締めると、涙を流しながら話し出した。
「レーカちゃん。今日はごめんなさい。」
「何が?」
「私怖かったんです。」
「そりゃ襲われたら誰でも怖いでしょ。」
「違います。この手で人を殺すかもしれないと考えると怖くて動けませんでした。」
「普通の人ならそうなるよ。それに人を殺すことが怖い方がいい。怖くなくなってはいけない。」
「でも、結果的にレーカちゃんのてを汚させてしまった。私の方がお姉さんで私の方がしっかりしなくちゃいけないのに。」
「アーリーはもっと人に甘えていいよ。アーリーはいつも1人で背負いすぎる。だから、せめて私ぐらいには甘えてよ。」
「背負いすぎてるのはレーカちゃんです!私はもっと頼られる存在になりたい!レーカちゃんが無理をしなくていいように。」
私は無理をしているわけではない。
でも、アーリーの言葉はすごく嬉しい。
「泣かないでアーリー。これからなればいいんだよ。私が頼れるような立派な人に。」
「……はい。」
「でも、焦らないで。ゆっくりだよ。焦ってしまう人には頼れないから。」
「……はい。」
さっきから扉の前に2人の気配がする。
おそらくエリカや、サラも聞いているのだろう。
「レーカちゃんはまだ幼いのにしっかりしていますね。まるでお母さんみたい。」
「アーリー、今日は一緒に寝よ。」
そういえばアーリーと寝るのは久しぶりだ。
こっちに来てからはあまり一緒に寝てなかった。
「そうですね。」
「私たちも一緒に寝ていい?」
扉の前にいたエリカたちが入ってきた。
二人とも目元が赤い。
泣いてたのかな?
サラは兎も角エリカまで泣くなんて……。
後で盛大に煽るしかないよね。
「話は全部聞かせてもらいました!これからは4人でしっかり支え合いましょう!」
「そうね。」
「はい!」
「うん。」
サラの言葉に全員が返事をする。
私ももっと強くなる。
私の大事な人を守るために。
「ここか?」
「ああ、間違いない。」
「誰かに見られてもまずい。さっさと終わらせるぞ。」
レーカたちの家の前で話している3人組の背中には十字架が描かれていた。
「教会に背いた罰だ。」
そう言い男たちは魔法を発動させようとする。
しかし、魔法は一向に発動しなかった。
「クソッ。どうなってる?」
「発動させないのよ、そんな魔法。今レーカたちは寝ているの。あの子の邪魔をしないでくれる?」
「誰だ!」
「お前たちに名乗る名なんてないの。どうせ死ぬのだしね。」
決着は一瞬だった。
男たちは一瞬で跡形もなく消されてしまった。
「最近多くなってきたわね。面倒なこと。まぁレーカの邪魔はさせない。それが私の役目。」
そう言いネコの姿をしたなにかは姿を消した。




