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アリス



「やぁ、エリカじゃないか。」


「ッ!ヒシルお兄様……。」


ちょっと私を盾にしないでよ。

って言うか貴様は誰だ。

こんなお淑やかなエリカは見たことがない。

つまり絶対エリカの偽物だ!










話は少し前に遡る。

オークの依頼の報酬を受け取った私たちは一度サラの店に行くことにした。

いや、別に用事は無かったんだけどね。

エリカがお兄様に会いたゲフンゲフン、この目で確かめるまで納得しないとかうるさかったからしょうがなく来ただけである。

ちょうどその時エリカのお兄さんが店番をやっており、今に至るというわけだ。




「まさかエリカが店長と知り合いだったなんて。エリカも教えてくれたら良かったのに。」


ちょ、だから私の後ろに隠れるんじゃない!


「ああ、うちの妹がごめんね。妹は恥ずかしがり屋でいつもこうなんだ。」


恥ずかしがり屋?

いつもこう?

誰だその普段のエリカとは対極に位置するような人は!


まぁ後ろからの圧がすごいので口にはしないが。

でも、お兄様の前では可愛い子ぶるってやっぱりエリカってブラコ、痛い痛い痛い。

すいませんでした、だからつねらないで下さい。


「そういえば店番をヒシルさんに任せることになったので、これからは私も冒険に行けますよ!」


「えっ?」


「へっ?」


サラと一緒に冒険?

なんか悪い未来しか想像出来ない。


「えって、何ですか?もう、せっかくみんなで冒険出来ると思ったのに。」


だって、ね〜。

なんかサラはいろいろやらかしそうな気がする。

多分エリカも同じこと思ってるはず。


「私は大歓迎ですよ!サラさんと冒険したいです。」


「アーリー、私の味方はアーリーだけだよ〜。」


「アーリー無理しなくて良いんだよ。嫌なときははっきり言わないと。」


サラに気をつかう必要なんてないのに。


「レーカちゃーん?そうなこと言う子はお仕置きだ〜!」


サラは私に向かって真っ直ぐ飛び込んできた。

しかし私は常日頃からカウンター魔法を体の周りに張り巡らせている。


ドカーン!


つまりどう言うことかと言うと相手は死ぬ。


「勝手に殺さないでください!」


あっ、生きてた。


「ところでエリカ、聖女のお仕事はどうしたんだい?」


「辞めました。」


早い。

即答だったね。


「……そうか。エリカが選択したのなら、エリカにとってはそれが一番正しいのだろうね。」


あぁ、良いな。

こうやって自分の選択を認めてくれる存在というのはとても貴重だ。

本当に良いお兄様だ。

エリカぎ好きになるのも頷ける。


ただこの人は絶対何かを知ってる。


「あっ、そうだ。レーカちゃんだっけ?少しちょっと話せるかな?」


「2人で?」


だから、後ろからのの圧が凄いんだって。

羨ましいなら素直にそう言えば良いのに。


「うん、妹のことでちょっと、ね?」


圧が少し和らいだ。

自分のことと聞いて少し嬉しいみたいだね。

誰も良いことなんて言ってないのにね。

あ〜はいそうですか。

お兄様がエリカの悪いところを言うはずありませんね、そうですね。

私は何と会話してるんだ、全く。


「まぁ良いよ。エリカのためならね。」


何かを企んでそうな顔。

でも、乗ってあげる。

企みって言うのはあるのがバレた時点で駄目だって誰かが言ってた気がする。

つまり、私の勝ち!


「ありがとう。」


さて、どんな内容なのやら。


そんなことを考えながら私とヒシルは別の部屋に移った。










「さてと。」


ヒシルの顔が変わった。

エリカに見せていた作り物の笑顔から、仕事人の顔付きに。


「君は何者かな?」


「私はレーカだよ。」


「そう言うことを聞いているんじゃない。当初の予定ではここにいるのは3人だ。君はここに存在していないはず。というより君の存在自体がおかしい。本当に君は何者なんだ?事と次第によっては君を……。」


殺さなければならない……か。

それにしても当初の予定ね。

それに胸の辺りに隠しているナイフ、その模様には見覚えがある。

前世でとても馴染み深かったもの。

多分そう言うことだよね。


「当初の予定というのはアリスの予言のこと?」


「君は本当に何者なんだ?いや、ここまで知っている以上君は消さなければいけない人物だ。」


やっぱりか。


「それは辞めた方がいいんじゃない?アリスの命令は私がアリスについて知っていた場合私をアリスの元に連れて行く、そうでしょう?」


「驚いたな。命令の内容まで把握しているのか。だが、確かにその通りだ。というわけで君をアリス様の元へ連れて行く。」


様、ねえ。

本当に立派になったんだね、アリス。


「大丈夫、自分で行けるから。」


「はっ?」


前世で何回も行ったことあるからね。

座標はちゃんと覚えている。

座標さえ覚えていれば魔法で転移することが出来る。


「じゃあ、ちょっと行ってくるから。エリカ達に適当に言っておいて。」


その言葉だけ残し、私は魔法を発動させた。


「転移魔法まで使うとは。まさか……いや、ないか。なにせ、500年も前の話だ。」
















真っ白で何もない空間。

そこにいるのはたった1つの影だけ、だった。


「ほいっと。転移完了!うん、ちゃんと着いてる。」


いや〜、久しぶりに長距離転移したから失敗するかと思っちゃった。


「お久しぶりで御座います。レーカ様。」


「だから、様は辞めてっていつも言ってるでしょ!でも、本当に久しぶり。」


そこに居たのは1人の少女。

外見は15歳ぐらいに見える。

しかし、その動きのひとつひとつはとても洗練されていて、とても15歳とは思えない。


「あなたは何代目?」


それもそのはず。

アリスの記憶は継承されているから。


「私で16代目になります。」


「そっか……。よく頑張ったね。」


16代。

1代で大体30年ぐらいだからだいたい500年ぐらいか。

つまりあのアリスには500年間の記憶が詰まっているのだ。


アリスの役割は歴史の記憶をこの国の統治。

アリスという国の全てと言っても過言ではない。

アリスという国の全てのルールはこのアリスによって決められて、このルールを破ったものは全てこのアリスに裁かれる。

この広い国を統治し、管理しているのがアリスだ。


「レーカ様がいなければこの国は滅びていました。本当に有難う御座います。」


「辞めてよ、お礼なんてもう何回も聞いたよ。」


「レーカ様が望むなら、この国はレーカ様にお譲りします。」


「いやいや、要らないよ。」


統治なんて面倒臭いしね。


「そうですか……。」


それに


「アリスはこの国が好きでしょ?」


「はい、とても。」


「ならやっぱりアリスが治めるべきだよ。」


良い国みたいだしね。

アリスが独裁で非人道的なことをやってるならともかく、平和で良い国をわざわざ混乱させる必要はない。


「レーカ様は本当に変わってませんね。」


「変わらないよ。これからもね!」


あまり長居してアリスの仕事を邪魔してはいけない。

彼女のやるべきことはたくさんあるのだから。


「また遊びに来るよ。」


「はい、次はもっと時間がある時に。レーカ様のお話を聞かせてください。」


本当にこの子は話が好きだな。

初代の頃から変わってない。

変わってないのは私だけじゃないね。


「うん、またね。」


「はい、また。」


私は転移魔法で私達の家に戻った。




「あっ、レーカちゃん!こんな遅くまでどこに行っていたんですか!ヒシルさんに聞いても教えてくれないし。心配したんですよ。とにかく今日はもう遅いので早く寝ましょう。」


フフ。

なんか良いな。

そうだ、次に会う時はアーリー達の話をしてあげよう。

私の最高の仲間だって。


「うん、寝ようか。」


今日は本当に良い1日だったな。

アリスが元気で良かった。

本当に……。












「レーカ様が元気そうで何よりです。本当に。うう。良かった。やっと、()()に直接お礼を言えた……。」








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