モフモフ狼
「こんにちは。」
「白銀の騎士様!猫面ちゃん!それにエリカさんはお久しぶりですね。」
「今日は西の森に行こうと思います。」
「アラクスの森ですね。ではこちらからどうぞ。」
この1年間で私とアーリーはCランク冒険者になっていた。
ちなみにBランクになるには特別な試験が必要なそうなので、めんどくさくてなっていないが一応なれる実力はある。
Cランクになるといろいろ優遇されていて、依頼を探してくれるのもその一つだ。
「猫面ちゃん、飴ちゃんいる?」
ギルドの飴は絶品だ。
貰わないという選択肢はない。
「あら?今日は本物の猫ちゃんも一緒なのね。」
フェルのことかな?
本当は猫じゃないんだけど。
まぁいっか。
ほとんど一緒だし。
目は死んでるけど。
「はい、そうなんです。本人が行きたがっているみたいでして。」
「そうなの?猫ちゃんも頑張って!」
余計な詮索はしない。
そういうところもいいよね、冒険者ギルドは。
それにしても一年前に登録しただけのエリカの名前を覚えているなんて流石だね。
私は毎日来てるのに未だに受け付けの人の名前覚えてないからね。
まぁいつも飴ちゃんの人って言ってるからだけど。
「気をつけて行ってらっしゃい。」
「ありがとうございます。」
さぁいよいよモフモフとのご対面だ。
三人+一匹で空の旅。
なんか人数が変わるとそれだけで雰囲気が変わって楽しいね。
「レーカちゃん、なんだか楽しそうですね。」
「今日はエリカとフェルがいるから。」
「私も久しぶりに運動できて楽しいのよ。」
「私は出来れば家にいたいわ。」
やっぱりエリカってニートだよね。
「ちょっとは日光に当たった方がいいと思いますよ。」
「はいはい。」
これもこの一年間ずっと変わらない構図だ。
エリカがだらけてアーリーが怒る。
まぁエリカが真面目に動くとエリカじゃない気がするんだけど。
そんな話をしながら進んで行くと西の森に到着した。
そこは他の場所とは空気が違った。
いつもならゴブリンやウルフなどのあまり強くないモンスターがはびこっており、騒がしいことで有名だった。
しかし、今の西の森を一言で表すと静寂、何の音も聞こえなかった。
「レーカ、この奥にいるのよ。」
「うん、なんかビリビリする。」
この先に強大な力を持った何かがいる。
それだけは肌で感じることが出来る。
「アーリー、エリカ大丈夫?」
私はこう言うプレッシャーに慣れているが、エリカはもちろんアーリーでさえ厳しそうだ。
「はい、なんとか大丈夫そうです。」
アーリーは本当になんとか大丈夫そうだ。
「エリカは?」
返事がない。
エリカ?
不思議に思って後ろを振り返ると、そこにエリカの姿はなかった。
「あれ?エリカは?」
「あれ?さっきまでいたんですけど。」
「フェルもいない。」
いない。
おかしい。
もしかして先に行った?
「アーリーとりあえず行ってみよう。もしかしたら先に行ったのかもしれない。」
「そうですね。行きましょう。」
まぁフェルがいれば大丈夫だと思うけど。
私たちが急いで向かった先で見たのは、三匹の狼の子供と一緒に寝てるエリカとそれを呆れたように見つめるフェルだった。
「何してるんですか?」
アーリーも呆れてる……。
まぁ私も同じ気持ちだけど。
「何って見たら分かるでしょ。寝てるんだよ。」
「そう言うことじゃなくてですね。なんでそんなことしてるんですかって聞いているんですよ。」
「なんでって?そこにモフモフがいたから?」
なるほど。
モフモフがいたら一緒に寝る。
確かにそうかも。
「レーカちゃんも納得しないでください。この森は危険なんですよ。一人で動くと危ないじゃないですか。」
「そうだ。一人で行くなんてずるい。」
私も連れて行くべきだと思う。
「レーカちゃんそういうことじゃないです。」
「えっ?違うの?」
私も寝たいな〜。
あの毛並み絶対フサフサだよね。
「とにかく狼の親が来る前にここを離れますよ。」
『えー』
そんな〜。
私もあの中に埋まりたいのに。
「えーじゃありません!とにかく行きますよ。」
えー。
しょうがないな〜。
でも、モフモフが〜。
どうしよう。
あっそうだ。
「ねぇアーリー。」
「なんですか?」
「あの子達連れててっていい?」
あの子達を連れて行けばここから離れられるし、私はモフモフと戯れられる。
完璧!ドャ。
「ダメに決まってるじゃないですか。本気で言ってるんですか?」
「えっ、ダメなのもう連れて帰る準備してたんだけど。」
流石はエリカ。
行動が早い。
「ダメです!」
「え〜。」
「ダメなものはダメです。」
「でもさ、もう来ちゃったよ。」
「ダメなものはダメです。って、何が来たんですか?」
この大きさ、この威圧感、この毛並み、どう考えてもこれは、
『親。』
「えっ?」
「貴様ら我が領地に入るだけでは飽き足らず、我が子まで連れ去ろうと言うのか!」
このプレッシャー、かなり怒ってる。
「どうしましょう?かなり怒ってますよ。」
確かにこのまま襲われたら私たちは全滅だろう。
でも、そうならないための秘策がある。
「エリカ。」
「了解。」
エリカが魔法のような何かを発動させると、溢れ出る緑光が狼の親を包み込んだ。
「これは……なんだ?」
「病。」
「何故それを?」
そう。
この狼は病にかかっていたのだ。
まぁ私レベルになると鳴き声からそのモフモフがどのような状態なのか把握することが出来る。
朝の鳴き声から狼が病であることを見抜き、聖女であるエリカを連れて来たのだ。
「調子どう?」
「うむ。悪くない。感謝する。我はもう長くないと覚悟しておったのだが、貴殿らのおかげで生き長らえることが出来そうだ。」
「あの〜、どういうことかちゃんと説明してもらって良いですか。」
「狼が病だった。治した。というわけでウチの子になった。以上。」
「全然分かりません。とりあえず今一番気になっているのは、エリカ先輩って魔法使えたんですか?」
「いや、これは魔法じゃなくて法術って呼ばれてるやつだよ。まぁ教会が勝手に認定してるだけで魔法と何も変わらないけど。」
「エリカ先輩って法術使えるんですね。」
「使えるも何もエリカは多分聖女だよ。」
「えっ?そうだったんですか?」
聖女というのは教会に認定された法術を使いこなす女性のことを指す。
聖女に任命されるのは一人までなので、次の人が任命されると引退という形になる。
「まぁ元だけどね。ていうかレーカにも教えてないはずなんだけどな〜。どうして知ってたの?」
確かにエリカから教えてもらったわけではない。
しかし、痕跡はたくさんあった。
「あのモフモフ達も同じようにして集めたでしょ。いくら教会が法術と言い張ろうと法術は魔法の一種だから、見れば分かる。」
「なるほどね。なんか隠してそうだけど、今はいいや。」
流石エリカ。
アーリーと違って私が何かを隠してることには気付いてるね。
「それでこれからどうするんですか?」
「とりあえず連れて帰って、この狼はアーリーの守護獣にする。」
「そうですか。……えっ?」
「そうね。それがいいのよ。」
「うむ。いいだろう。」
「えっ、えっ?」
「おめでとうアーリー。」
「ほら帰るよ。」
モフモフと寝るの楽しみだな〜!
お布団が恋しい。
そんなこんなで私たちは帰路に就くのであった。




