鳴き声
「オーーーン!」
町中に響き渡るような雄叫びを聴き、目が覚めた。
何の声?
オオカミかな。
フサフサだといいけど。
後でアーリーと見に行こう。
まだ辺りは暗くアーリーが起きていないので、私はとりあえず素振りでもすることにした。
2階には4人の寝室があり、下に降りるとキッチンやダイニングがある。
そして、ダイニングから中庭に繋がっている。
ここがいつも私が鍛錬しているところだ。
「ふっ!」
真っ直ぐ振り下ろす。
刀は意外と扱いが難しい。
これは私個人の感想だが、剣よりも技量が、必要な気がする。
でも、だからこそ使いこなせたらカッコいいのだ。
刀を使いこなすってやっぱり憧れるよね!
早くお母さんみたいになりたい。
そんなことを考えながら刀を振っていると、いつの間にか日が上っていた。
「レーカ、今日も森に行くの?」
声を掛けてきたのはフェル。
相変わらず死んだ魚のような目だ。
しかし、そこがかわいい。
「行くけど。どうしたの急に?」
「そう。なら私も行くのよ。」
珍しい……。
普段はめんどくさがりで全く動かないフェルが付いてくるなんて。
「やっぱりあの声はやばいの?」
「やばいかどうかは分からないけど、レーカが戦えば間違いなく負けるわね。」
え〜。
どうしよう。
フェルはめんどくさがりで死んだ魚のような目をしてるけど、その言葉には確かな重みがある。
まぁまず間違いなく私よりフェルの方が強いし。
これは割と最近知ったのだが、フェルは猫型なだけで猫ではない。
まぁ通りでフサフサ度合いが格別だったわけだよね。
「変なこと考えないのよ。」
「変なことじゃないよ、重要だよ!」
「何考えたの。」
「フェルのこと!」
あっ、フェルがそっぽを向いた。
これは照れてるな。
私は素早くフェルに近づくと後ろからギューっと抱きしめた。
「もうフェルはかわいいな〜。」
最初のうちはフェルも嫌がる素振りを見せていたが、今ではもうすっかり慣れたようだ。
ついでにブラッシングもしてあげよう。
「ふにゃ〜。」
ブラッシングするとフェルはいつもふにゃ〜ってする。
しかも、毎回ふにゃ〜って言うのだ!
かわいすぎる。
「おはようございます、レーカちゃん。」
私がしばらくブラッシングしているとアーリーが起きてきた。
「おはよう、アーリー。」
やっと朝ご飯が食べられる。
お腹ペコペコだよ。
ちなみに私は料理が一切出来ない。
というかサラも出来ないし、エリカは出来るけど起きるのが遅い上にめんどくさがって作らない。
必然的に朝食担当はアーリーである。
「アーリー、お腹空いた。」
「ちょっと待って下さいね。すぐに用意しますから。」
アーリーはそう言うとすぐに朝食の準備を始めた。
こうして準備しているところを見ると王女の面影はどこにもないよね〜。
国民のためにって強い責任感を持っていたアーリーはどこへ行ったのやら。
まっ、原因は私なんですけどね。
「準備出来ましたよ。」
「いただきます!」
「いつになく早いですね……。」
お腹が空いてるから仕方ない。
今日はいつもより早起きしたし。
それにしてもやっぱりアーリーの料理は美味しい。
どうして、こんなに差ができるのか。
不思議だ。
「どうしたんですか?急に見つめられると恥ずかしいのですが。」
私も料理が上手くなりたいよ。
「アーリーの料理が美味しいなって思っただけ。」
「ありがとうございます。頑張って作った甲斐がありますね。」
アーリーはフェルと違って照れてるのが分かりにくい。
というか分からない。
稀に感情がすごく表情に出るときがあるが、普段はあんまり表情が読めない。
まぁエリカほどではないけど。
「ごちそうさまでした。」
「お粗末様でした。」
美味しかった。
お腹いっぱい。
「そういえば今日はどうしますか?まぁいつも通りギルドには行くとは思いますが。」
「西の森に行きたい。あっちからオオカミの声みたいなのが聞こえた。」
ちなみに今はラウラという町に住んでいるが、北と西は森があり、南と東には平原がある。
ちなみにお母さんやアーリーのお父さんがいるトスタ王国は南にずっと行けば着く。
「オオカミの声ですか?」
「うん。フェルも気になってるらしいから。」
「そうですか。フェルちゃんが……。かなり危険そうですね。」
「フェルも来るらしいから大丈夫だよ。」
「そうですか。なら安心ですね。では、ギルドでは西の森での依頼を探しておきます。」
フワフワかな?
モフモフかな?
すっごくワクワクしてきた。
早く声の主に会いたいな。
「おはようアーリー、レーカ。」
「おはようございます、エリカ先輩。」
「おはようエリカ。」
朝食を食べ終えて、しばらくゴロゴロしているとエリカが起きてきた。
エリカも結構起きるのが遅いけど、サラはもっと遅い。
商人なのに大丈夫なのかな?
まぁ店を開くのは昼からみたいだし、大丈夫か。
「そういえばさエリカ、今日西の森行くんだけど一緒に来る?」
「エリカ先輩も連れて行くのですか?」
「私はパス。面倒くさいし。」
やっぱり言うと思った。
「そっちからオオカミっぽい声が聞こえたんだけど。」
「行く。」
即答。
そして文は最小限。
これがエリカクオリティ!
「大丈夫ですかね?」
「まぁフェルもいるし。」
「それもそうですね。」
それに私の予想が正しければ、今回エリカはかなりいい戦力になる。
「アーリーは盾も持っていってね。」
アーリーには普段は盾を持たせていない。
盾があると避けられる攻撃も盾で受けてしまうからだ。
しかし、今回はそんなこと言ってる場合ではない。
エリカは攻撃を避ける練習なんてしてないから、いざとなったら私とアーリーで守らなければならない。
その場合、私では小さすぎる。
身長が欲しいよ〜!
「はい。」
アーリーもいざとなったらエリカを守れるように今から集中しているみたいだ。
「うーん。おはようございます。」
「あはようございます、サラさん。」
「おはよう。サラ。」
「相変わらず眠そうだね。おはよう。」
サラがやっと起きてきた。
「みんな朝早いですね〜。もう朝ご飯食べ終わったんですか〜?」
「そうですよ。サラさんの分も、もう出来てるので早めに食べて下さいね。」
4人とも家にいるという時間はそんなに短くない。
まぁ2人は昼前から1人は午後からの活動だし、1人はニートだし。
「何、レーカ?」
「なんでもないよ。」
相変わらずエリカは勘が鋭い。
隠し事には気を付けないとね。
またしばらくゴロゴロしたりモフモフと戯れてるうちにいい時間になったので、そろそろ出発することにした。
「準備出来た?」
「うん。」
「はい、出来ました。」
「アーリー、盾は?」
「あっ!」
やっぱり忘れてる。
アーリーはしっかりしているようで抜けてるから気を付けないといけない。
「アーリー、これでしょ。」
エリカが持っててくれたみたいだ。
「ありがとうございます。」
エリカは抜けてるようでしっかりしてるから、安心できる。
ていうか他人のことまでしっかり見てるし。
流石私達の先輩。
私達に出来ないことを平然とやってのける。
「じゃあ行こうか。」
どんなモフモフか楽しみだね!




