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無邪気で無神経な聖女様

聖女シャリーナ視点


私はシャリーナ。私は田舎の男爵令嬢。そして私は聖女様!


突然私の右腕に聖女の証が浮かび上がったとき、最初に思い浮かんだのは麗しい王子様のこと。

この国の王太子殿下が聖女を妻に望んでいるというお話は、田舎のしがない下級貴族である私でも聞いたことがあるくらい有名な話だった。

王太子殿下、ジークハルト様をお見かけしたのは14歳で社交界デビューのために王宮へ上がったときにたったの一度だけ。金髪碧眼のかっこいい王子様。デビューの令嬢はみんな見惚れていたと思う。

でも彼の隣には、絶世の美少女と有名なエリザベス・マルセルス公爵令嬢が寄り添っていた。

ジークハルト様に見惚れていた令嬢が、エリザベス様を見てあれにはかなわないと肩を落とす中、私は全然違うことを思った。

あんなに綺麗で身分もある人が婚約者なのに、聖女様を望んでいるの??

もしかして・・・・エリザベス様は噂とは違ってあんまり性格がよくないとかなのかな?

そう、噂で知るエリザベス様はまさに完璧。あんなに綺麗で美しいのに、身分はもちろんマナーも完璧!性格もよくってみんなに愛されているのだとか。

でも、私、噂を聞いたときに思ったの。そんな素晴らしい人いるわけないじゃないって。


だから私が聖女だと分かったとき、一気に期待でいっぱいになった。

もしかして。もしかして。もしかして。

あの麗しいジークハルト様は私のものになるかもしれない!!


とはいえ、聖女として王宮に上がるのは本当に怖かった。

だってそうでしょ?私の家は没落寸前の男爵家。ほぼ平民のようなもの。

将来はなんとか大きな商家の息子に嫁入りできれば運がいいかなってくらいだったから、マナーだってそんなに学んでないし。コロランド男爵領はとっても田舎で王都にだってデビューの時以来行ったこともない。

場違いだって思われないかな?田舎者ってバカにされないかな?他のご令嬢や、もしかして使用人にだっていじめられるかもしない。

でもそんな心配は杞憂だった。


不安で不安でびくびくしてた私のもとに、ジークハルト殿下がすぐにかけつけてくれたの!!

まるで夢のようだった!あの誰もが憧れる王子様が私のためだけに走ってきてくださったのよ?

嬉しくて、ついお願いしてしまった。

「王宮は初めてで不安なのです。ジークハルト様がずっと一緒にいてくださったら頑張れる気がします」

ジークハルト様はちょっと驚いた顔をしていたけど、すぐに頷いてくださって、それからは本当にずっとそばにいてくれた。毎日毎日毎日。

ふとエリザベス様のことを思い出してジークハルト様に聞いてみたことがあるけど、「シャリーナは心配しなくていいよ」と優しく言ってくださった。私と一緒にいるために、公務も立て込んできていると侍女が言っていて少し申し訳なくなったけど、ジークハルト様は大丈夫だと言っていたし。それに正直、そこまでして私のそばにいてくれることが嬉しくって、もう大丈夫ですって言えなかった。


それに、侍女や護衛が私を見る目がちょっとだけ冷たく感じて、ジークハルト様がいなくなったらいじめられるんじゃないかって怖かった。ジークハルト様にそう言うと、「そんなことは起こらないよ」と手を握って慰めてくれた。なんて優しい王子様なの?

怖い教育係に責められて辛い時も、ジークハルト様に泣きついたら教育係と話してくれた。

こういうのってやっぱり自分のペースでするのが大事だと思う。しないって言ってるわけじゃないんだし意地悪されたら頑張れないもの。


そんな風だから私はどんどんジークハルト様を好きになっていった。

どこまで許してくださるかな?と思って腕を組んでみても、抱き着いても、しなだれかかっても拒絶されなかった。

そうよね、私は聖女だもの!ジークハルト様がずーっと妃にしたいと望んでいた聖女様!

きっとジークハルト様も私のことを愛してくださっているんだわ!

一つだけ不満なのは愛の言葉をくださらないことだけど、まだ婚約していないからきっとジークハルト様も我慢しているのよね。

勇気を出して「ジーク様」とお呼びしてみたら、うれしそうに微笑んでくださった。

ああ、なんて幸せなんだろう???

まさか私に聖女の証が現れて、憧れの王子様に望まれて妃になれるだなんて!!

おまけにジーク様は王太子殿下。私は将来王妃になるってことよね?

本当に夢のよう。聖女の証が現れた時から、私の世界はバラ色になった。

正式にジーク様の婚約者になったら、お父様とお母様も王都に呼べるかしら?


ふと美貌の公爵令嬢を思い出す。

あの方はジーク様に婚約解消されたらどうするのかな?

まああれだけ美人なんだし、最初からジーク様は聖女を望んでいると分かっていたのだから、私が気にすることじゃないよね。

それにエリザベス様には悪いけど、ジーク様が私を望んでいるのだから仕方ない。




気になったのは一瞬で、すぐに幸せな未来のことで頭がいっぱいになった。

私の聖女のお披露目のパーティーの頃には、きっと私が婚約者としてジーク様の隣に立つんだろうな。





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