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エリザベスに恋焦がれる隣国王太子

隣国王太子視点


大陸一の大国の第一王子であり王太子。それが私、レイモンド・リッドフィールドの身分である。父である現国王は側妃や愛妾を一人も持たず、最愛の王妃だけを大切にしていた。私の下には第二王子であるユリウス、第一王女であるマリアンナがいる。

大国の王妃である私の母は、隣国の公爵家出身だった。

そんな母の出身国、フェルリア王国マルセルス公爵家のエリザベス嬢の婚約が解消されたという話が飛び込んできたのは突然だった。


「レイモンドお兄様!これはチャンスですわ!」


マリアンナが興奮気味に目を輝かせる。


「こらこらマリー。エリザベス嬢からしたら婚約解消なんて不幸な出来事なのに、あからさまに喜んでは駄目だよ。・・・・・もちろん、兄上がこの機会を逃すわけがないですよね?」


口ではマリアンナをたしなめているものの、ユリウスも嬉しそうな顔を隠しもしない。

かくいう私も無意識に顔が緩むのを引き締めることを早々に放棄した。


「もちろん、向こうが手放してくれたのなら、私が遠慮する理由はもうない」





かわいいエリザベスと初めて会ったのは私が8歳の頃。エリザベスは4歳だった。

母についてフェルリア王国に行き、数か月過ごす中で、母と仲の良かったエリザベスの母、マルセルス公爵夫人を通じてその家族と交流を持つこととなった。

マルセルス公爵家にはエリザベスと、その兄で私と同い年のフェリクスの二人がいた。


初めて見た時は、天使がいると思った。


色白な肌に映えるふわふわのプラチナブロンドの髪に、くりくりと大きな、キラキラと輝く赤い瞳。

あどけない顔で、それでもそのころからまさしく淑女であることを物語る完璧なカーテシー。

エリザベスは4歳にして、言葉では言い表せられないほど美しく可憐だった。

突如降臨した(かのように見えた)天使に思わず言葉を失った、常にない私の姿に随分と母上に揶揄われたことも覚えている。

それから滞在中はずっとエリザベスと一緒にいた。

当時5歳のユリウスと、3歳のマリアンナがともに来なかったことにつまらなさを感じていたこともすっかり忘れていた。フェリクスも一緒にいたはずだけれど、エリザベスに夢中であまり覚えていない。(後にそのことを知ったフェリクスはとても不機嫌になった。)

4歳にして令嬢然としていたエリザベスも、ずっと一緒にいるうちに私になついてくれ、互いに得意な魔法を披露しあったりもした。エリザベスは光の魔力持ちで、治癒魔法を得意としていた。その際、エリザベスは「秘密だよ」と言って瞳の秘密も教えてくれた。あまりに可愛くて悶絶した。さらにその秘密は、エリザベス自ら教えたのは家族と私だけだと聞いて感激したことも付け加えておく。二人で近場を探検し、偶然発見した怪我をした子供をエリザベスが治癒したこともあった。見た目も中身も能力も天使だと思った。私が国に帰るときには泣いて寂しがってくれた。それが嬉しくてたまらず、将来はきっとエリザベスを妃に迎えて、ずっと一緒にいようと思ったものだ。

実際、国に帰り父上にもエリザベスを婚約者にとねだり、母上もそれを喜んだ。


しかし、いざ他国の公爵令嬢であるエリザベスを婚約者に迎えるには、政治的問題から整えなければならないことがいくつかあり、それが終わる前にエリザベスは自国の王子の婚約者になってしまった。未だにあれほど絶望を感じたことは他にない。


あのときの絶望から10年。エリザベスを諦められず、この歳まで婚約者を決められずにいたけれど、こんな幸運が待っているなんて。


フェルリア王国王太子のジークハルト殿が、幼いころから聖女を妻にと熱望している話は聞いていた。

初めてフェリクスからの手紙でその話を聞いたときは「それならエリザベスを返してくれ」と随分悔しく思ったものだ。

でもジークハルト殿がどれほど願っても、聖女は望んで現れるものではない。

現実的に考えて、よほどのことがないかぎりエリザベスはジークハルト殿の妃になるのだろう。

10年経った。その間フェリクスと手紙のやり取りをしても、直接エリザベスと会うことはなかった。会ったら情けなくも泣いてしまうと思ったからだ。

それでもエリザベスを欲する気持ちはなくならなかった。むしろどんどん強くなる。

それは執着にも近い心の底からの渇望だった。

エリザベスの不幸を望むようなものだとは分かっていたが、ジークハルト殿とエリザベスの婚姻がダメになるような、よほどのことが起こらないかといつも願っていた。


そして、ついに私の願いは叶った。


久しぶりに届いたフェリクスからの手紙には、隣国で聖女と思われる者が現れたこと。

ジークハルト殿はその聖女のそばを片時も離れず、エリザベスはしばらく便りも何もなしに捨て置かれていたこと。

ついに二人の婚約が解消となったことの経緯が書かれていた。

ジークハルト殿自身が、そもそも聖女が現れれば自分の妃にすると明言していたこと、その際はエリザベスに身を引くように言い含めていたこと、その全ては両陛下やマルセルス家の者、また城に勤める者なら誰もが知るところだったことから、現状を鑑みても致し方なしとの判断で、つつがなく解消となったらしい。


なんて馬鹿な男だろうと思う。

きっと悲しんだであろうエリザベスの気持ちを思うと腹も立つ。

だが、同時に感謝せずにはいられなかった。

ありがとう、ありがとう。エリザベスを手放してくれて。


私が気持ちを憚らず零していたため全てを知っていたユリウス、マリアンナの後押しもあり、今度こそ他の者に奪われないように、早速動くことにした。



まずはフェリクスへの返事とともにマルセルス公爵家へ訪問の許可を願う手紙を書く。

フェリクスも公爵夫妻も私がエリザベスを望んでいることは知っているので、婚約がこのような形でなくなった今、私の訪問を拒むことはないだろう。

決して少なくない公務を私の分まで全て行ってくれると申し出てくれた弟妹に感謝しなければ。

10年、公務で隣国へ赴いた際に遠目で見ることしかなかったエリザベス。




君と会えるのが楽しみでたまらないよ。



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