第96話 超マジウハウハ
アレクさんたちを皮切りに、あれから冒険者も沢山この村にやってくるようになった。
もちろん彼らの最大の目当てはダンジョンだ。
しかも宿から直接アクセスできるとあって、非常にありがたがられている。
……お陰で魔境の方はまったく見向きもされなくなっちゃったけど。
まぁオーク肉は以前のように狩猟班が獲ってきてくれるからいいんだけどね。
「ダンジョンポイントがどんどん入ってきて超マジウハウハなんですケド!」
ダンジョンマスターのアリーも喜んでくれている。
今では十階層にまで拡大させることができたという。
冒険者たちには、ちゃんと村人鑑定Ⅱで見極めてから、祝福を与えている。
アレクさんたちのように全員がギフトを得る、とはさすがにいかなかったけれど、比較的高い確率で冒険に役立つギフトを授かっていた。
さらにこの村で販売されている武器や防具についても、大いに喜ばれている。
なにせ『鍛冶』のギフトを持つドワーフたちに作ってもらっているのだから、その性能は量産品であってもピカ一だ。
その上、安い。
素材をアリーから貰ってるからね。
ダンジョン産の素材は、強力な武具を作るのにとても役立つのだ。
……お陰で、もう僕が施設カスタマイズで武器を作る必要がなくなっちゃったけど。
冒険者だけじゃなくて、移住者も増え続けている。
つい先日、三千人を超えたばかりだと思っていたのに、すでにその倍以上、六千人を超えてしまっていた。
そうなるともう、ちょっとした規模の都市だ。
当然、その存在は広く知れ渡ることになり、また移住者が増えるという好(?)循環。
そんな折、半年ぶりに北郡の代官であるダントさんが村にやってきた。
護衛のバザラさんも一緒だ。
あれ?
バザラさんが腰に提げている剣、この村で売ってるもののような……?
「ルーク様、お久しぶりです」
「あ、どうもお久しぶりです、ダントさん」
「この短期間で物凄く発展されましたね。さすがはルーク様です。先ほどから驚かされてばかりですよ」
ダントさんはやたら興奮した様子で、ここに来るまでに見てきた村の変化を色々と語ってくれた。
商業の発展やエルフやドワーフの移住、それにダンジョンの存在など、どうやら大よそのことはすでに知っているみたいだった。
「それになによりこの村の武器です! これほどの性能のものが、あんなに安く手に入るなんて! ついダント様からお金を借りて衝動買いしてしまったほどですよ!」
バザラさんがダントさん以上に興奮しながら言う。
あ、やっぱりその剣、この村で買ったものだったのね。
幾ら安いと言っても、さすがに手持ちのお金だけでは足りなかったのかな。
ダントさんが苦笑している。
「それでルーク様、実は重大なご報告がありまして……」
一転して神妙な顔つきになるダントさん。
そうして驚きの事実を告げたのだった。
「アルベイルがシュネガーに勝利いたしました」
えっ?
……早くない?
「ついこの間、戦端が開いたばかりじゃないですか?」
「ええ。僅か一か月ほどの短期決着でした。アルベイル軍はシュネガーの名立たる都市を次々と陥落させ、あっという間に本拠地の領都へ。そこで最大の戦いが起こりましたが、それもアルベイル側が圧倒。城が陥落する間際に、シュネガー家は全面降伏したようです」
一か月。
この規模の戦いとしては異例の早さだろう。
そしてシュネガー家を取り込んだアルベイル家は、名実ともに王国一の力を持ったということになる。
「弟君のラウル様も、初陣ながら大いに活躍されたそうです。その功績により、今後は元アルベイル領を一任されることになるようです」
父上はまだ不安定な元シュネガー領の統治に専念するという。
元からアルベイル領だった地域なら、まだ若いラウルでも十分に統治できるとの判断だろう。
「そして恐らく、近いうちにこの村のこともラウル様に知られてしまうはずです。そうなってしまったときのために今から対策を練っておくべきであると、差し出がましいですが進言させていただきたく参ったのです」
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