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第90話 大き過ぎないか

 俺の名はアレク。

 これでもそこそこ名の知れた冒険者だ。


 冒険者というのは、魔物の討伐や魔境の探索などを生業にしている者たちの総称である。

 その立場は様々で、どこかの貴族と契約を結んで専属で依頼をこなしている者もいれば、特定の依頼者を持たないフリーの者もいる。

 腕に覚えのある奴なんかは、傭兵として戦争に参加することもあった。


 そうした冒険者たちを集め、支援する「冒険者ギルド」なる組織を持つ国もあるというが、生憎とこの国にはまだそんな大層なものは存在していない。


 俺はというと、冒険者仲間たちと四人組のパーティを組んで王国各地を放浪しつつ、主に倒した魔物の素材を売りながら生計を立てている。

 そして今、とある噂を耳にして、アルベルト領の北方へとやってきていた。


「もうすぐ噂の荒野だな」

「ねぇ、本当に確かなの、その噂?」


 疑るような視線を向けてくるのは、パーティーメンバーの紅一点にして最年少のハゼナだ。

 杖を手にしていることからも分かる通り、貴重な魔法使いでもある。


「ああ、かなり確度は高いはずだ。なにせ商人たちから聞いた話だからな」


 アルベルト領の北に存在しているという荒野。

 その周囲に二つの魔境があることで有名だ。


 一つは北の森林地帯。

 そしてもう一つは東の山脈地帯である。


 魔境とは何か。

 諸説あるが、基本的には魔物が棲息している危険地帯のことを指し、普通の人間はまず立ち入らない場所だ。


 だが俺たちのような魔物の素材集めを生業とする冒険者にとって、多数の魔物がいる魔境は、ダンジョンと並んで宝の宝庫と言っても過言ではないだろう。


 ただ、魔境の多くは人里離れた場所に存在しているため、寝床の確保や補給などが難しい。

 そのためなかなか長期の探索はできなかった。


「しかし商人たちによると、その荒野に突如として村ができたそうだ。しかもどんどん人が集まってきているらしい」


 商魂たくましい彼らの情報網にはいつも舌を巻く。

 実際に行ってみなければ分からないところもあるが、賭けるだけの価値はあるだろう。


 やがて荒野が見えてきた。

 ……なるほど、この土地は確かに作物など育ちそうにないな。


 草木すらあまり生えていない。

 ごつごつした岩山があちこちに点在しているだけだ。


 さすがに少し不安になってきた。

 本当にこんな場所に村があるのか……?


「ね、ねぇ、あそこ、急に道があるんだけど……」


 ハゼナに言われて気づく。

 確かに荒野を縦断するかのように、一本の道が真っ直ぐ伸びていたのだ。


 しかも荒野には相応しくない立派な道だ。

 以前、世界一美しいと言われているアルピラ街道を通ったことがあるが……下手をするとそれ以上に見事な石畳である。


 俺たちは驚きながらもその道を進んでいった。

 すると徐々にそれらしきものが見えてきた。


「あれが村かしら? ちゃんと防壁があるのね」

「ああ。魔境から近いし、さすがにそれくらいはないと危険なんだろう」


 しかし近づいていくにつれて、俺たちはその異常さに気づき始める。


「ちょ、ちょっと待て……あの防壁……大き過ぎないか?」


 さっきは遠くからだったため小さく見えていたが、今やちょっとした街を取り囲む防壁ほどの大きさはある。

 しかも恐ろしいことに、これでもまだ距離があるのだ。


「……村、のはずよね?」

「……そのはずだが」







 二つの城門を潜った先には、大きな建物が幾つも軒を連ねる不思議な街が広がっていた。

 食べ物や物品などを販売するお店もあって、ちょっとした宿場町を超える賑わいである。


「本当にここ、荒野だったの……?」

「とてもそうは思えねぇな……」


 いずれにしても、商人たちの話は本当だったようだ。

 これなら魔境の拠点として十分過ぎる。


 寝床となる宿も確保できそうだし、手に入れた素材をこの村で販売することもできるだろう。


「村長のところに挨拶に行った方がいいのかしら?」


〝村〟と呼ばれるような規模の場所だと、挨拶に行かなければトラブルになり得るため、必ず最初に足を運ぶ。

 だがそれなりの街になれば、その必要はないし、会いに行っても追い返されることもしばしばだ。


「村だというし、念のために行っておいた方がいいだろう。しかし噂じゃ、この村を築いたのはあのアルベイル卿のご子息らしいぜ」

「『剣聖技』のギフト持ちで、戦闘卿とか戦争卿なんて呼ばれている、あの……?」


 もしかしたらこんな荒野に村を作ったのは、自ら魔境の探索を行うためだったりしてな。

 父親と同じ戦闘バカってわけか。


「魔物狩りを好むタイプだとすれば、さぞかし野性味溢れる見た目をしていることだろうな」


 そんなことを話していると、一人の少年がニコニコしながらこちらに近づいてきた。

 虫も殺せなさそうな顔をした、十二、三かそこらの少年だ。

 俺たちに何の用だろうか?


「ようこそ、冒険者の皆さん。僕が村長のルーク=アルベイルです」


 ……え?


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