第84話 今まで通りの生活ができるかと
「移動が終わりました! ご協力ありがとうございま~す!」
よし、これで村をダンジョンの近くまで持ってくることができたぞ。
「後は、地下から……」
僕はドワーフたちが住んでいる地下道へと降りた。
「一体どうするつもりなのよ? 村ごとダンジョン近くまで移動させて……」
「それにしても相変わらずとんでもないギフトだな……」
呆れながら後を付いてきたセレンとフィリアさんに問われ、僕は応える。
「村のこの地下道をそのままダンジョンに繋げちゃうんだ」
「「え?」」
「よし、この辺かな」
僕は地下道の端までやってくると、そこからさらに地下道を延伸させた。
するとほんの十メートルほど進んだところで、洞窟にぶち当たった。
「ここからはダンジョンの中だね。アリーはいるかな?」
「なんか勝手に侵入ルート作られたんですケドおおおおおおおおおおっ!?」
「あ、来た来た」
妖精のアリーが飛んでくる。
「大丈夫。僕の村の地下道と繋げただけだから」
「それ、何の意味があるのか分からないんですケド……」
胡乱げにしているアリーはひとまず置いておいて、僕は地下道に戻って何事かと集まってきたドワーフたちに告げる。
「皆さんにはこれから、あちらのダンジョンの方に住んでいただこうと思っています」
「だ、ダンジョン……? もしかして、おいらたち、何かまたやっちまったとか……」
「いえ、別にそういうんじゃないです」
不安そうにしているドワーフの代表、ドランさんに、僕は事情を説明した。
「なるほど……おいらたちがダンジョンに住めば、それだけでダンジョンが発展していく、と……」
「はい。もちろん今住んでいるマンションはそのままこっちに持ってきますし、ダンジョンマスターと交渉して、ちゃんと魔物に襲われないようにもします。地下道を通れば、いつでも村と行き来できますから、今まで通りの生活ができるかと」
そう。
僕が考えたいいアイデアというのは、ドワーフたちをダンジョン内に移住させるというものだった。
「確かに、元より地下の暗い空間に住むのを好む彼らなら、こちらでも苦も無く生活することが可能だな」
「だからわざわざ村をここまで移動してきたのね……」
「うん、ダンジョンの方を移動させるのは無理そうだったから」
ちなみにダンジョン内にいると体力を奪われるとか、そういったデメリットは一切ない。
ただ居てくれるだけで、ダンジョンポイントが増えやすくなるのだ。
「ちょっ、ナイスなアイデアなんですケド! 百人以上が常にダンジョン内にいたら、どんどんポイントが貯まっていくんですケド!」
アリーも喜んでくれたようで、ビュンビュンと飛び回ってその気持ちを表現している。
「こんなおいらたちでもお役に立てるというなら……」
「ありがとうございます、ドランさん。じゃあ、早速、あのマンションたちをこっちに持ってきますね」
「アタシは魔物が入って来れないようにしておくんですケド!」
こうして、ドワーフたちがダンジョン内で生活することになったのだった。
ついでにダンジョンまで直通になったので、狩りにも来やすくなった。
「できればミノタウロスが多いとありがたいんだけど」
「それくらいお安い御用なんですケド! 勝手に倒して、持ち帰ってもらえばいいんですケド!」
よし、これでいつでも簡単にミノタウロスの肉が手に入るぞ。
ちなみにダンジョンマスターであるアリーは、このダンジョン内から出ることができない。
地下道の方に行こうとしても、何か見えない壁に阻まれているかのように、先へと進めなくなってしまったのだ。
村の方に行けないことに、アリーは残念がったけれど、
「よかったら遊びに来てくれたら嬉しいんですケド! ずっと一人で、毎日すっごい暇なんですケド! 寝ること以外にやることないんですケド!」
よっぽど退屈なんだろうな……。
「う、うん、いいよ」
「やった! チョー嬉しいんですケド! あと、できたらイケメン連れて来てくれたらもっと嬉しいんですケド!」
「イケメン……?」
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