表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
71/458

第70話 随分と古いけど

 エルフの里には代々、祈祷師と呼ばれている人がいるという。

 僕たち人族でいう神官に当たり、『神託』に相当する『祈祷』というギフトで、エルフたちを祝福するのが祈祷師の役目だ。


 なので、エルフたちは例外なく祝福を受けていた。

 238人のうち、ギフトを授かっているのは20人ほど。

 未祝福の子供を入れてもだいたい十分の一くらいで、人族よりやや少ない印象かもしれない。


 彼らのギフトは、種族の特性なのか、『弓技』や『白魔法』、それから『緑魔法』の割合がかなり多かった。


 そんな中にあって、フィリアさんは『弓技』と『緑魔法』の両方を持っているという。

 セレンと同じダブルギフトだ。


 一方で、ドワーフたちには、神官や祈祷師に相当する者はいなかった。

 そのため彼らは全員がギフトを持っていない。


「『神託』でもギフトを授けられるのかな?」

「実際に試してみましょう」


 そこでミリアが『神託』を使い、ドワーフたちを祝福することにした。

 種族が違うとダメなのかな? と思いきや、


「どうやら上手くいったようです。10人ほどにギフトを授けることに成功しました」


 その後、エルフの『祈祷』でも祝福を与えることができ、いずれも種族を問わないことが分かった。


 サンプルが少ないけれど、ドワーフで多かったのは『鍛冶』や『採掘』、それに土や石に関する魔法の才能である『黄魔法』といったものだった。

 やっぱり種族特性があるらしい。


 そんな中、珍しかったのが、


ドナ

 年齢:11歳

 愛村心:低

 適正職業:職人

 ギフト:兵器職人


「『兵器職人』……?」


 随分と物騒なギフトだ。


 十一歳になったばかりの少女なので、まだギフトを授けることはできていないけれど、彼女は名前をドナと言った。


 そんな彼女は、大人たちが地下に籠っている中にあって、よく地上に出てきては興味深そうに村の建物なんかを眺めていた。

 好奇心が旺盛な子なのかもしれない。


 中でも、僕が施設カスタマイズを使い、武具を量産していると、必ずと言っていいほど見学に来ていた。

 シャイな子らしく、何も言わずにじーっと座って見ている。


「武器が好きなの?」


 作業しながら声をかけてみた。


 基本的に男性は厳つく、女性はふくよかなドワーフたちだけれど、子供の頃の見た目は人族とあまり変わらない。

 むしろ幼く見えるくらいだ。


 エルフほどじゃないけれど、寿命が長いドワーフも幼い期間が人族より長いらしい。

 そのため十一歳のドナも五、六歳くらいの子供に見えて、つい小さな子供に話しかけるような口調になってしまう。


「……」


 ドナは無言のまま小さく首を縦に振ったかと思うと、背中に隠していたそれを見せてきた。


「……石板? 随分と古いけど……」


 年季の入った石板だ。

 そこには何やら文字らしきものが書かれている。


「うーん、読めないや。古代文字かな? ドナは読めるの?」

「……」


 ドナは首を左右に振ってから、


「洞窟に……昔から、ある。たぶん、昔のドワーフ」

「昔のドワーフ? ということは、先祖が遺した石碑かな?」

「……ここ」


 ドナは石板の端を指さした。

 そこには何やら絵らしきものが描かれている。


 人型のようだけれど、胴体に比べると頭が大きい。

 手が長くて足が短く、ずんぐりとした体形だ。


「何だろう? ゴーレムかな?」

「……兵器」

「兵器?」

「ん。昔の、兵器……ドワーフが作った。ゴーレムと違う……中に、乗れる。ここ」


 言われてよく見てみると、確かに頭の中心に窓のようなものがあって、そこに人の顔らしきものが描かれている。


「人が乗り込んで戦う兵器、ってことか……」


 もしかしてフィリアさんが言っていたのって、これのことかな?

 ドワーフが強力な兵器を開発して、それで世界を支配しようとしたって。


 人が乗って操縦していたとなると、すでに失われた技術がふんだんに使われていたのだろう。

 きっと現代じゃ、作るのは難しいに違いない。


「あ、だけど。形だけなら作れるかも?」

「?」


 ふと思い至って、僕は石垣を作り出した。


少しでも面白いと思っていただけたら、↓の☆で評価してもらえると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

外れ勇者1巻
4月24日発売!!!
― 新着の感想 ―
[一言] 巨大ロボットを作れる技術力とかヤバすぎだろ
[一言] ドワーフマンションは地下一階が出入り口で下に伸びていく感じでしょうか。 しかし武器職人持ちの娘の愛村心低って盗賊並みに敵対的なのかな、助けてもらったのに。(´・ω・`)
[一言] 宇宙の戦士(パワードスーツ)か装甲騎兵(AT)かw
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ