第479話 そういうビジネスモデルでいくのね
世界中のパンが集まる都市〝パンタウン〟。
そこでは美味しいパンたちが平和に暮らしていたけれど、そこに突如として現れたのが邪悪なカビの化身、カビラスだった。
カビラスはカビの胞子をパンタウンに撒き散らし、パンたちを次々と腐らせていく。
悲嘆にくれるパンタウンのパンたち。
しかしそんなカビラスに立ち向かう、八枚切りの八枚の食パンたちがいた。
それがパンタウンのヒーロー、食パンメンだ。
と思いきや、彼らはその性格の違いから衝突を繰り返していて、カビラスと戦うどころではなかった。
誰もが絶望する中、唯一、パンたちの期待に応えようと、カビラスに立ち向かった食パンがいた。
ヴェイン・パンだ。
「ふふふ! 安心したまえ、パン諸君! 僕にかかれば、カビラスなんて敵じゃあない!」
黄金に輝くパン身を持ち、自信満々なヴェイン・パンに、希望を抱くパンタウンのパンたち。
「喰らうがいい! ゴールデン・グレア!」
ついにヴェイン・パンの必殺技がカビラスに炸裂する。
だけど……ただそのパン身が輝いただけで、カビラスには何のダメージを与えることもできなかった。
実はヴェイン・パンは、派手な見た目と自信満々な態度とは裏腹に、何の力もない雑魚パンだったのだ。
「弱っ」
「役に立たねぇのかよ」
「あんな満を持して登場したのに笑」
ヴェイン・パンの虚飾を知ったパンたちから、誹謗中傷が飛び交う。
「そ、そんなことはない! 僕は最強のヒーローなんだ! 美味しくて強くてカッコよくてっ……カビラスになんて負けるはずがないっ!」
それでも自分を疑うことなく、カビラスに立ち向かうヴェイン・パン。
でもやっぱり手も足も出ない。
「……そうさ……僕は……本当は、ただの八枚切りのパン……本当は、ヒーローなんて器じゃないのさ……」
やがてボロボロとなったヴェイン・パンは動けなくなり、自失状態になってしまう。
けれど、そんなヴェイン・パンの頑張りを見た他の食パンたちが我に返る。
「ただプライドが高いだけの俺より、たった一枚でカビラスに立ち向かったお前さんの方が何倍もカッコいいぜ!」
「その通りだ! ただ怒ってばかりで、何もしてねぇオレ自身に腹が立って仕方がねぇ!」
「あたしったら、自分のことばかり考えていたわ!」
「おれは……もう少し……働くべきだった……」
「うふぅん、よ~く考えたらぁ、このままカビラスを放置してると、かわいいパンたちがいなくなっちゃう。それは許せないわぁ」
「カビで、食べるものが減る、確かに、許せない」
「一人だけ目立って許せない……っ! 私だって、もっとみんなの注目を浴びたいのにっ!」
どうやら彼らは自分たちの罪を反省したようだ。
……何枚かは欲望そのままだけど。
そうして八枚の食パンたちが、力を合わせてカビラスに立ち向かう。
「「「「合体!」」」」
ついには一斤の食パンに合体してしまう。
食パン部分はともかく、人の身体の部分が折り重なっているのは非常にシュールだし、動きにくそう。
「必殺! トースト・ジャッジメント!」
そして高温の熱放射によってカビラスを焼き尽くし、パンタウンの平和を守ることに成功したのだった。
――というのが、ヒーローショーのあらすじだ。
「なるほど……最初はどうなることかと思ったけど、意外と悪くなかったね」
「絵本の第一巻の内容をもとに作ったそうです」
子供たちも大盛り上がりで、あちこちでヴェイン・パンの必殺技、ゴールデン・グレアの真似をしている。
いやそこはトースト・ジャッジメントでしょ。
「コルネによると、今後はこのヒーローショーを世界各国で行っていくそうです」
「世界展開させるの!?」
「はい。観覧は無料。ただし、食パンメンのグッズを作成して、そちらで儲けようと考えているようです」
「そういうビジネスモデルでいくのね……」
好きなキャラクターのグッズなんて子供はみんな欲しがるだろうし、親も子供にねだられたら弱いもんね。
それに入り口を無料することで、まずは食パンメンのことを知ってもらおうというのだろう。
「(しかしこの作品、せっかく世界展開するというのに、肝心のルーク様が一度も登場しないのはいかがなものでしょう。……どうにかしてルーク様を登場させられれば、布教に有効かもしれませんね)」
「ミリア? なんか今また良からぬことを考えてない?」
◇ ◇ ◇
ルークの村でヒーローショーが好評を博している頃。
ローダ王国内にある謎の古代建造物で、とある異変が起こっていた。
「なっ……蒼穹の塔の入り口がっ……開いているだとっ!?」
蒼穹の塔。
まるで天空を貫くかのように聳え立つことから、その名を付けられた古代の建造物だ。
いつ誰がいかなる目的で建造したのかも定かではない。
ただ、塔内への唯一の入り口と思われる両開きの扉はずっと固く閉じられ、誰にも開けることができなかった。
それが今、なぜか扉が大きく開いていたのである。
「た、た、大変だっ! 早く村のみんなに知らせないと……っ!」
発見したのは、塔の麓にある村に住む男だ。
村にとってこの塔は神聖な存在とされていて、各世帯が持ち回りで周辺の掃除をしているのだが、そのためにやってきてたまたま扉が開いているのを見つけたのだ。
慌てるあまり何度も転びそうになりながら、彼は大急ぎで村へと引き返していった。
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