第464話 意気投合してる場合じゃないでしょ
ダイモン族の本拠地であり、魔王の住処があるとされる奇岩地帯。
不思議な形状の岩々が並ぶ複雑な道を、僕たちは最大の警戒と共に進んでいた。
「……こっちだ」
魔族のいないルートを行くうえで、やはり頼もしいのは『索敵』ギフトを持つディルさんの存在だ。
彼がいなければ、穴から出てきた魔族と鉢合わせるなんてことも少なくなかっただろう。
時には岩の中を進むこともあった。
内部はやはり分かれ道が幾つもあって、しかも他の岩と無秩序に繋がっていたりする。
「っ……また、行き止まりか……」
ディルさんが足を止めた。
『索敵』ギフトでは道順までは分からないため、どうしても袋小路に迷い込んでしまうことがあった。
「すまない。私もおおよその方向性しか分からぬのだ」
「仕方ないよ。この一帯自体が、巨大な迷路みたいなものだしさ。多分、ここに住んでるダイモン族ですら迷うんじゃないかな?」
幾度となく道を引き返し、時にはどっちに向かっているのか分からなくなりつつも、太陽の位置などで方角を確認しながら進み続けること、数時間。
やがて遠くにひと際巨大で変わった岩が見えてきた。まるで竜巻やネジのように、渦巻き状に天へと伸びていく特殊な形をしている。
「っ……あれだ。間違いない。あそこに魔王がいるはずだ」
幸いここまでまだ魔族とは遭遇していないが、
「この先、かなりの数だ……完璧に避けながら進むのは、現実的ではない……」
万一見つかったら魔族が殺到してくるだろう。
やはり魔王の拠点とあって、簡単には辿り着けそうにない。
「はっ、望むところだ。邪魔するやつらはぶっ飛ばしてやるぜ」
「相変わらず好戦的すぎでしょ、あんた。聖水で呪いを解いていけばいいでしょ」
「いや、セレン、全員に聖水を使ってたら、さすがに足りなくなっちゃうと思う。それに仮に呪いが解けたところで、こんなところに現れた僕たちを見逃してくれるとは思えないし……」
ビビさんによれば、魔王の種族はダイモン族であるという。
同族なのだから、たとえ呪いがなくとも魔王に従おうと考える者がいてもおかしくはない。
そのときディルさんがハッと後ろを振り返った。
「……気を付けろ。誰か……そこに、隠れているかもしれない」
みんなが一斉に武器を構えた。
警戒し、ディルさんが指摘する岩陰を睨みつける。
「おい、どっちだよ。いるんならとっとと出てきやがれ。ぶっ殺すぞ?」
ラウルがドスの利いた声で脅しながら、無造作にその場所へと近づいていく。
「わっ……ま、待ってくれっ! お、おいらは別に、お前たちに危害を加えるつもりなんてない……っ!」
慌てながら飛び出してきたのは、ダイモン族と思われる男だった。
赤みを帯びた肌に、灰色の頭髪。
そして筋骨隆々の体躯が、ダイモン族の特徴だ。
だがその男は細身で、背も高くない。
ちょうど人間の男性平均くらいのゴアテさんより低くて、十五歳の絶賛伸び盛り中のラウルと同程度といったところ。
平均身長が190を超えているらしいダイモン族からすると、かなり小柄である。
「ダイモン族の子供……?」
「そのようね」
顔つきも幼さが残る感じだし、まだ子供のダイモン族と考えるのが正解だろう。
と思いきや、どうやら違ったらしく。
「おいらは子供じゃない! 年は十八歳! れっきとしたダイモン族の成人だ!」
「え……」
「ど、どうせおいらは人間から見てもチビで童顔で子供っぽいよっ!」
「ご、ごめんなさい」
腹を立てるそのダイモン族に、僕は思わず謝った。
なんだろう……ものすごく親近感が湧くっ!!
気づけば叫んでいた。
「でも僕もあなたと同じなんだ! もう十五歳なのに、身長の伸びが止まっちゃって! 多分もうずっとこの大きさのままだよ! 家族は別に小さくないのに!」
「っ……おいらも同じだ! うちの家も、親父も母ちゃんも兄貴も姉貴も弟も、みんなダイモン族の平均以上なんだ! なのにおいらだけっ……」
「その辛い気持ち、分かるよ! 女の子よりも小さいから、女の子扱いされたりするよね!?」
「される! おいらは男なのにって、いっつも思ってる!」
「一緒だ!」
初対面だというのに、僕たちは完全に気持ちが通じ合った。
まるで生き別れた兄弟に再開したかのように、両腕を広げて抱き合おうとして、
「ちょっと、ルーク! 意気投合してる場合じゃないでしょ! 相手は魔族なのよ!」
セレンに怒鳴られ、ハッと我に返る。
「そうだった……」
僕は慌てて距離を取った。
「あ、安心してくれ! おいらは他の連中とは違う! ちゃんと正気だ!」
「って、本人は言ってるけど……」
「騙されちゃダメよ、ルーク」
「一応、ダイモン族がそういう搦手を使うようなイメージはないが……」
ビビさんによると、ダイモン族は正面から堂々と戦うような性格で、策を弄したりするのは苦手らしい。
「そこのダークエルフの言う通りだ。おいらは騙そうなんてしていない。むしろ協力したいと思ってるんだ。お前たちも魔王を倒しに来たんだろう?」
「……お前たちも?」
「ああ。ほんの少し前にも、魔王を討伐するっていう人間たちがやってきたんだ。五人組だった」
「っ……父上たちだ!」
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