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第35話 いかなる犠牲をも厭いません

 全然期待し過ぎなんかじゃなかった。

 オーク肉、めちゃくちゃ美味しい。


「え? 何これ? 肉汁が溢れて口の中が幸福で満たされるんだけど?」


 どこが所詮ちょっといい豚肉だ。

 実家で食べたやつとは大違いだった。


「鮮度が違うのよ。オークなんてそこらに棲息してるような魔物じゃないもの。市場に出回るまでにどうしても日数がかかってしまうのよ」


 セレンに言われて納得する。


 もし都市の近くでオークが発見されたら、即座に領兵か冒険者が派遣される。

 繁殖する暇もなく殲滅させられるので、こうした辺境や森の奥にしか生息していない。


 オークは危険過ぎて家畜になんてできないしね。

 野生を狩る以外に、その肉を手にする方法はないのだ。


「「「な、なんじゃこりゃあああああああああっ!?」」」

「「「う、うめええええええええええええええっ!?」」」

「「「そんちょおおおおおおおおおおおおおおっ!?」」」


 村人たちも今まで食べたことのないオーク肉の美味しさに驚愕し、狂乱している。

 と言っても、さすがにこの人数だし、二体丸ごととはいえ、一人当たりの分量はごく僅かなもの。


 それでも最近になって作られるようになったお酒も振舞われて、肉祭りは夜遅くまで続いたのだった。







「また随分と大きな実ができたね……」


 村の畑で新たに収穫された野菜たちを前に、僕は思わず圧倒されていた。


 僕の太腿くらいありそうなニンジンや、僕の頭のサイズに匹敵するジャガイモ。

 白菜に至っては僕の身体よりも大きい。


 最初の収穫の時も通常よりかなり大ぶりな作物だったけれど、今回はさらにその上を行ってしまったようだ。


 しかも、収穫までの期間が短くなっている上に、収穫数そのものも多い。


「もしかして『達人農家』のギフトのお陰かな?」


 難民第四陣に盗賊団までもが村人に加わったことで、さすがに食糧が足りなくなるかも……と思っていたけれど、この様子なら大丈夫そうだ。

 むしろ余るんじゃ……。


 特に今は夏だ。

 食べ物が腐りやすい季節。


「というわけでセレン、いつものお願い」

「はいはい」


 セレンが青魔法を使って野菜を氷結させていく。

 こうして凍らせて土蔵に入れておけば、通常よりも長く新鮮なまま保存しておくことができるのだ。


「……村長、実はご相談したいことが」

「ベルリットさん? はい、何でしょう?」


 改まった様子で難民たちのまとめ役であるベルリットさんがやってきたので、話を聞いてみる。


「以前もお話ししましたが、我々の多くは村に高齢の親を残してきておりまして……」

「あ、いいですよ」


 ベルリットさんの要望を察して、僕はすぐに頷いた。


 この村に来た難民たちは、元々住んでいた村を捨てた際、体力が乏しく足手まといになりかねない高齢者を村に置いてきたのだ。

 しかしこうして新たな定住地を見つけた今、そうした老人たちを連れて来たいと考えるのは自然なことだった。


 この村に負担をかけまいと、今までは黙っていたのだろう。


「ここに連れてきたいっていう話ですよね? もちろん構いません」

「ほ、本当ですかっ?」

「はい。幸い食料も余っていますし……そうだ、セレン」

「話は聞いていたわ。護衛を頼みたい、っていうことね」


 盗賊に遭遇するかもしれないので、セレン率いる狩猟チームに協力してもらうことにした。

 もちろん彼らの中にも、親や祖父母を残してきたという人がいるはずだ。


「「「ルーク様! どうか我々にもお手伝いをさせてください!」」」

「ん?」


 そこへやたらと元気な声が聞こえてきたので、僕は誰だろうと思って振り返る。

 するとそこにいたのは、先日、更生施設を出て完全に精気を失っていた盗賊たちだ。


「武技系のギフトは持っていませんが、戦いには慣れています!」

「万一のときは、我々を盾にでも囮にでもしていただければ!」

「罪深きこの身、いかなる犠牲をも厭いません!」


 あまりの変貌っぷりに、僕は目を疑ってしまった。


「え? 君たち本当にあのときの人たちと同一人物……?」


少しでも面白いと思っていただけたら、↓の☆で評価してもらえると嬉しいです。

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外れ勇者1巻
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― 新着の感想 ―
心を潰してから教義で染め上げる! 完全に女史二人でカルト教団の暗部やってて草
[気になる点] そういえば塩とかの調味料はどうしてんの?まさか味付けなし?
[良い点] 洗脳済みか? 愛村心はどうなってるんですかね 悪人が一瞬で判るのは便利すぎるな
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