第32話 この村は一体どうなってやがんだよ
僕は牢屋までやってきた。
中に囚われている盗賊たちに睨まれて、少しビクついてしまう僕。
努めて気にしないようにして、僕と彼らの間を隔てるその格子状の部分に軽く触ってみた。
「うん、やっぱり鉄でできてるみたい」
僕が考えたのは、これをカスタマイズすれば、木よりも強力な武器を作り出せるかもしれない、ということ。
「ええと、そのまま使っちゃうと歯抜けになっちゃうから……まずは一本増やして、と」
2ポイントを消費して、鉄の棒を一本増やす。
「「「なっ!?」」」
何をするのかと胡乱げにこっちを見ていた盗賊たちが、突然、棒が増えたことに驚いて目を丸くした。
僕はその増やした棒の片側を切断すると、縦方向に圧縮し、横方向には伸張させ、厚みも減らすよう圧縮していく。
さらに先端を鋭く尖らせ、剣の形へと変えていった。
やがてそれらしい形状になると、今度はもう片方も切断し、施設から切り離した。
カランカランと地面に転がったそれは、まさしく剣だ。
盗賊たちはますます意味が分からないといった顔でこっちを見ている。
「できた! ……うわ、思ったより重たい」
持ち上げてみたら、予想以上にずっしりしていた。
かなり圧縮したせいだろう。
でもその分、強度は増したはずだ。
よく考えたら先ほど小屋から剣を作り出すときも、圧縮させて強度を高めればよかったのかもしれない。
その剣で軽く壁を叩いてみた。
すると衝撃がダイレクトに腕に伝わってくる。
「痛い痛い。これじゃ、腕が壊れちゃいそう」
柄の部分まで金属にしてしまったのは失敗だった。
そう言えば普通は木や革なんかを使うんだっけ。
その後、色々と工夫した結果、刀身の部分は鉄格子から、柄の部分は小屋の木材から作り出し、それぞれをくっ付けることにした。
最初は別々に作って後から連結させようとしたけれど、いったん施設から切り離すとカスタマイズできなくなるという制約もあって、上手くいかなかった。
そこで考えたのが、連結までやってしまってから切り離すというやり方だ。
牢屋の傍に小屋を移動させ、鉄格子から刀身を作りつつ、小屋の外壁から木板を剥がして、そのまま巻きつけるようにしたのだ。
さらに、圧縮することで木材の強度を上げることができた。
「お、オレは夢でも見てんのか……?」
「……安心しろ、俺も同じもんを見てるぜ……」
「小屋が勝手に移動してくるは、鉄格子から剣が生み出されるは……この村は一体どうなってやがんだよ……?」
僕が剣を作るところを目の前で見ることになった盗賊たちは、この異様な現象に顔を引き攣らせている。
そうして剣ができあがったところで、牢屋と小屋からの切り離しを行う。
「完璧だね。柄を木にしたお陰でちゃんと衝撃を吸収してくれる」
よし、調子に乗って槍も作ってしまおう。
槍は先端のみを鉄格子から作って、柄はすべて木材がいいだろう。
木材でも圧縮すれば十分な強度になるはずだ。
僕は同じ要領で槍を生み出していった。
そうしてできあがった剣と槍を、セレンのところへ持っていく。
「見てよ、セレン。今度こそちゃんとした武器ができたよ」
「これは……鉄製? 一体どこから……」
僕が作った武器を見て驚くセレン。
早速またバルラットさんと剣を打ち合い、試してみることになった。
すると今度は何度も斬り合っても、先ほどのようにすぐに折れてしまうようなことはなかった。
「強度は十分みたいね」
「はい。これなら実戦でも使えそうです」
どうやら合格点をもらえたらしい。
さらに『槍技』のギフトを持つランドくんも呼んで、槍の方も使い心地も確かめてもらった。
「とても使いやすいし、何より斬れ味が全然違います! これで僕も狩りに貢献できそうです!」
これまで木製の槍しか使えなかったこともあって、ランドくんはすごく喜んでくれた。
「でも、一体どうやって調達したんですか?」
「あ、それ僕が作ったんだ」
「村長が!?」
ランドくんは目を剥いて叫ぶ。
「そんな! 村長が作ってくださった槍なんて、実戦に使えません!」
「ええっ? 何でそうなるの!?」
「だって、初めて村長から下賜いただいたんです! 一生の宝物、いえ、家宝にして大切に保管しなければ……っ!」
「いやいや、使ってよ!?」
あと「下賜」だなんて。
僕はそんなに偉くないって!
「くっ……そうと知っていれば、斬り合いなんてするんじゃなかった……」
バルラットさんまで!?
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