第305話 やはり伝説の通りだったか
「獣王ビヒモス……」
それがあの巨大なゾウのような魔物の名前らしい。
「パオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!」
「「「~~~~~~っ!?」」」
かなり距離があるというのに、轟く鳴き声によって王宮全体がガタガタと振動する。
さらにその長い鼻が遺跡の残骸へと叩きつけられると、瓦礫の雨がオアシスの街へと降り注いだ。
「危ない!」
「よ、避けろおおおお……っ!」
こちらにも幾つか破片が飛んできて、慌てて回避しようとする。
「ルアーシールド!」
迫りくる瓦礫が、一斉にノエルくんが掲げる盾へ吸い寄せられた。
武闘会でも見せたノエルくんの大技だ。
ドガガガガアアアンッ!!
凄まじい音と共に、ノエルくんの盾に着弾する。
隕石じみたその威力にノエルくんが膝をついた。
「ノエルくん、大丈夫っ!?」
「……うん、どうにか」
見ると、村のドワーフたちが作ったミスリル合金製の盾がボコボコに凹んでいた。
もしあんなのが頭にでもぶつかっていたらと思うとぞっとする。
「街が……」
破片の多くは街に落ちてしまったらしい。
そこかしこで砂煙が上がっていて、住民たちが悲鳴を上げて逃げ惑っていた。
ズドオン、ズドオン、ズドオン……。
だけど真の恐怖はこれからだった。
ビヒモスがゆっくりと街の方に向かって歩き出したのだ。
一歩地面を踏むたびに大地が揺れる。
あんな化け物が街に侵入してきたら大変なことになってしまう。
「どうにかしないと……っ!」
「空から見てもびっくりするくらい大きいわね……っ!」
「とんでもない化け物が目覚めてしまったみたいねぇん」
空飛ぶ公園に乗って、僕たちは空高くから地上を進むビヒモスを見下ろしていた。
「ドラゴンにクラーケンに巨大サメに、最近よく大きな魔物と戦ってきたけれど……」
「これはさすがに規格外すぎるな……」
セリウスくんとフィリアさんが息を呑む中、顔を青くしているのはマリベル女王だ。
「せっかく砂賊どもから国を取り戻したというのにっ……このままでは、国そのものが滅ぼされてしまう……っ!」
そうこうしているうちに、ビヒモスは一直線に街へと近づいていく。
幸いあの大きさだからか、それほど動きは速くない。
「何とか攻撃してみるわっ! アイススピアーっ!」
セレンが氷の槍をビヒモスの背中へと発射する。
落下の勢いも手伝って、猛スピードで氷槍が直撃した。
「っ! 砕けちゃったんだけど!? しかも傷一つ付いてないわ!」
なんて硬い皮膚をしているのだろうか。
さらにフィリアさんが矢を放ったり、ゴリちゃんが自家発電による闘気の砲弾を放ったりしたけれど、ビヒモスには何も効かなかった。
「そもそもこっちに気づいてすらいない?」
「私たちなんて眼中にないってことかしらっ?」
だったら、これならどうだ。
僕はビヒモスの足元に、その巨躯がすっぽり収まるほどの超巨大な堀を作成してやった。
「~~~~っ!?」
突如として空いた穴に転落するビヒモス。
自分の身体が重たいせいか、もがいているだけでそこから這い出すことができない。
よし、ひとまずいったん動きを止めることはできたぞ。
「さすがだわ、ルーク!」
「だけど、どうやって倒せばいいんだろ? 攻撃は効かないし……」
そのときビヒモスがその長い鼻を高々と天に向かって掲げたかと思うと、そこから何かが噴水のように射出された。
「あれはっ……砂っ!?」
膨大な砂がオアシスに雨のごとく降り注ぎ、見る見るうちに街が砂に覆われていった。
「や、やはり伝説の通りだったか……あの魔物こそが、この広大な砂漠を生み出した張本人……そんな自然災害のような化け物に、勝てるはずがない……」
砂に埋もれていく街を呆然と見下ろしながら、マリベル女王が愕然と声を震わせる。
その間にも狩猟隊のみんなが攻撃を試みているけれど、相変わらずビヒモスにはノーダメージだ。
「空高くから超重量の施設でも落としたら、さすがにダメージ与えられるかな?」
もしくは、内側から攻撃するとか?
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