第30話 村長だったら別に構いませんよ?
公衆浴場を作成したことで、村人たちから大いに喜ばれた。
作成直後から村人たちが殺到し、特に人数の多い女湯は、湯船が人で埋め尽くされる事態になってしまったそうだ。
ちなみに女風呂を覗こうとした青年が、あっさり見つかって御用になった。
婦人たちから袋叩きにされた挙句、盗賊と同じ牢屋送りに。
……恐ろしい。
一人の見せしめのお陰で、今後は二度と同じような真似をする者は現れないだろう。
そもそもこの村、女性が多いこともあって、女性の方が強いのだ。
覗き、ダメ、ゼッタイ。
「村長だったら別に構いませんよ?」
「むしろご一緒してほしいくらいですわ」
「いいですね。みんなで村長のお背中をお流ししましょう」
「よくないです! 絶対、入らないですから!」
とんでもないことを言って誘ってくるお姉さん方から、僕は慌てて逃げ出す。
まったく、僕のことをマスコットか何かと勘違いしているんじゃないかな?
僕はそのまま村の端っこ、できたばかりの石垣のところまで歩いてくる。
村スキル「施設カスタマイズ」を使って、ちょっと試したいことがあるのだ。
「石垣のこちら側に階段があったら便利だよね」
石垣の上にすぐに登ることができるようにしておけば、有事の際に助かるだろうとの考えだ。
イメージすると、半透明の階段が視界に出現する。
石垣に沿う形で、下から上まで続く階段だ。
必要な村ポイントは5だった。
「全部で八か所くらいはあった方がいいよね」
そうして僕は石垣をぐるりと回りながら、等間隔に階段を設置していった。
「後は……そうだ。石垣に穴があったら、こちら側から攻撃できるんじゃないかな?」
試しに石垣に穴をあけてみる。
こちらは必要な村ポイントがゼロだ。
「思ったよりも深いな……」
石垣の奥行きは一メートル以上あって、長槍とかじゃないと届きそうにない。
それに向こう側から攻撃されてしまう心配もあるので、少し上から下へ斜めになる感じで掘った方がいいかもしれないね。
とはいえ、そもそも今この村には武器がほとんどない。
あっても木製が多く、強度に不安があった。
そんな木製の武器でも、木を削って作り出すのはなかなか大変なのである。
ある程度の硬さが必要だけど、硬いと削るのに苦労するからね。
だから木製も含めて、現在まともな武器を持っているのはセレン率いる狩猟チームだけだ。
よくそれで盗賊団を倒せたなと思う。
「うーん、どうにかしてもっと簡単に武器が手に入らないかな……」
生憎とここは荒野のど真ん中だし、荒野を抜けても小さな町や村ばかりで、まともに武器を調達できるとは思えない。
「ん、待てよ」
ふと、とあるアイデアを思いついて、僕は石垣から村の中心へと戻る。
やってきたのはこの村で最初に作成した小屋だ。
現在は誰も使っておらず、ただの倉庫になっている。
「この小屋の一部の木材を拝借して……」
小屋の壁の一部を、棒状に削り出すイメージ。
すると半透明の世界で、確かに壁から棒が飛び出してきた。
それを現実に適用する。
すると壁から作り出された棒が、地面に落ちて転がった。
「できた! 施設カスタマイズを応用すると、こんなこともできるんだ」
驚きつつも、さらに僕はその棒を加工しようとする。
だけど、今度はどんなにイメージしても変化しなかった。
「あれ? 何でだろう?」
〈施設から切り離された時点で、施設ではなくなります〉
どうやらいったん施設と分離してしまうと、カスタマイズができないようだ。
逆に言えば、施設と繋がったままならカスタマイズできるということ。
今の反省点を活かして、今度は小屋と繋がったまま棒を加工し、剣の形状へと変えていく。
そして最後に小屋から切り離して――
「できた!」
思い通りの剣が完成し、僕は思わず叫んでいた。
普通なら木を削って何時間もかかるものを、一瞬で完成させることができたのだ。
これなら幾らでも量産できちゃうぞ。
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