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第248話 景観がガラッと変わっちゃうんですけど

 タリスター公爵は随分と恰幅の良いおじさんだった。

 公爵はなぜか不満そうに言う。


「国王陛下から話は聞いておるのじゃ。今回はすべての指揮を貴公に任せるようにとな」


 え? 僕は聞いてないんだけど?

 いつの間に指揮官なんてやることになってるの?


「くくっ、まぁそれがいいだろうな。てめぇのやり方はそもそも、今までの戦いの概念をぶっ壊すようなもんばかりだ。余計な口を挟まれては活かし切れねぇ」


 ラウルが笑う。

 一方で元からこの地を護ってきたタリスター公爵にとっては、面白いはずがないだろう。


「(……ふん、この一帯の土地勘もない小僧どもに何ができるというのじゃ。確かにあの鉄道とやらは途轍もないが、戦争となるとまた別問題じゃろう)」


 などと口にはしないものの、きっと内心では腸が煮えくり返っているに違いない。

 そんな顔をしてるし。


「ええと……この領都が一番南にあって、真っ先に敵が攻めてくると考えていいんですよね?」


 要塞都市となっているこの領都は、この地の最大にして最後の砦だと聞いている。


「そうとは限らぬ」

「え?」

「確かにこの領都が最南端にあるのは間違いない。だが考え得る敵の進軍ルートは、この領都を落とすルートを含めて全部で三つある。無論、残り二つにも堅牢な砦があるが、いずれか一つでも落とされれば防衛は一気に困難なものになるじゃろう」


 つまりその砦にも兵力を割かなければならないということか。

 限られた戦力で敵軍と対峙するとなると、どういった割合で分配するかが重要になってきそうだ。


「……うん、まぁ、普通に戦うのはどう考えても面倒だね」

「なに?」

「公爵閣下……ちょっとこの辺りの景観がガラッと変わっちゃうんですけど、大丈夫ですか?」

「は?」




    ◇ ◇ ◇




 バルステ王国軍は、ほぼ全兵力を本軍に集中させていた。

 五万を超える軍勢のうち、左右の砦を攻める別動隊は、いずれも二千にも満たない。


「敵は十分な備えができていないはず! 正面から一気に要塞都市を落とすのだ!」


 総大将を任されたその男は、バルステ王国で随一の武将として知られていた。

 小国だった周辺国を武力によって次々と吸収してきた立役者とも言える一族の出で、彼自身、僅か十二歳のときの初陣以来、凄まじい戦功を残し続けている。


 この国の命運を握る重大な戦いを任されたのも、そうした彼の実力が認められてのことだ。


 当然ながら失敗は許されないが、最初の関門となるのが、長年にわたって隣国の南部を守り続けてきたタリスター公爵だ。

 領都も兼ねている要塞都市に加え、堅牢な砦が彼らの行く手を阻む。


 隣国は長きにわたる内戦でまだ混乱の最中にあるが、それでもぐずぐずしていると援軍が集結してしまう。

 そうして万一長期戦にもつれ込んでしまったなら、不利になるのはこちら側だ。


 そこで彼が目指すのは、いきなり全兵力を持って、最も堅固な要塞都市を真っ先に陥落させてしまうという、電光石火の超短期戦だった。

 相手もまさか初手から要塞都市を狙ってくるとは思ってもいないだろう。


 そこへ期待通りの報告がもたらされる。

 あらかじめ敵国内に侵入させておいた間諜からのものだ。


「予想通り、敵は両砦にかなりの兵力を割いている模様です。一方、王族が管理する国軍はすでに到着しているものの、諸侯からの援軍はまだほとんど着ていないとのこと」

「ふん、やはりか」


 総大将の男は満足そうに頷く。


 無論、兵力で大きく勝っていようと、分厚い城壁を有する要塞都市を落とすのは簡単なことではない。

 だが、それでも彼にはこの戦い、確実に勝利できるという自信があった。


 ――この瞬間までは。



 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!



 凄まじい轟音と地響き。

 一体何事だと音がする方へと視線を向けた彼は、言葉を失った。


「……え?」


 巨大な壁が、地面から勢いよくせり上がってきていたのである。

 それも彼らの進軍経路を完全に塞ぐように、延々と左右に続いていて――



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― 新着の感想 ―
[一言] 壁で囲います 上を閉じます 地面を頑丈にします 餓死します
[気になる点] ふと思ったのですが、この要領で長い壁を2枚出してそれを動かしてサンドイッチ、なんて(色んな意味で)とんでもないことも、出来ちゃいますよね…?
[一言] 万里の長城……( ̄▽ ̄;)
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