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第208話 どっちを選べばいいんだろうか

「……何でいるんですか?」


 村からは馬車でも数週間はかかる距離の草原に放置してきたというのに、どういうわけか、その日のうちに戻ってきてしまった。

 しかもまたお酒を飲んでいる。


「ククク、オレを捨ててこようとしても無駄だぜ! なにせテメェと同じく、転移魔法が使えるからな! 一度行ったことのある場所なら一瞬だ! ぎゃはははっ! 残念だったな!」


 そんな高度な魔法を使えるくせに、なぜそこまで働きたくないのか……。


「……まぁ、要するにオレは規格外すぎたんだよ。だから仲間たちに妬まれ、危険視された。お陰であんな場所に封印されちまったんだ。まるでオレを化け物みたいに見てきた奴らの目……今でもはっきりと思い出すことができる。それでオレは誓ったんだ。もう二度と自分の力を見せたりなんかしねぇってな」

「……」

「という設定ならどうだ?」

「もう同じ手には引っかからないですよ!」


 何にしても、是が非でも働きたくないらしい。

 結局その理由は分からないけど、ここまで信念を貫くなんてある意味すごい。


「別に何か大変な仕事をしろって言ってるわけじゃないんですけど……」

「なら、こう考えてみるのはどうだ? オレは今の時代から見るとめちゃくちゃ過去の人間だ。歴史の生き証人とも言える。そんな貴重な存在なんて、いるだけで価値があるだろう。つまり、何もしていなくても価値を生み出している=働いている、ということにならねぇか? いや、なる!」

「屁理屈すぎる……」


 僕は嘆息した。

 屁理屈ではあるけど、確かに普通の村人と同じ扱いをするというのも違う気がした。


「……じゃあ、百歩譲って、食べ物や飲み物は自分で持ってきて、部屋はちゃんと定期的に綺麗に掃除してください。それだけでいいです」

「えー、めんどくせぇ」

「殴っていいですか?」


 温厚篤実な村長として知られている僕だけれど、さすがに手が出そうになった。

 それからしばらく押し問答が続いたものの、やがて諦めたように、


「ちっ、仕方ねぇな。それなら代わりにオレの乳を揉ませてやっても構わねぇぜ?」

「いや、そういうのはちょっと……」

「ククク、んなこと言って、ほんとは興味あんだろ? いいんだぜ? 自分で言うのもなんだが、なかなかの触り心地だぜ?」


 ミランダさんは自分の胸を触りながら誘惑してくる。

 ほんとにこの酔っ払いは……。


「っ!?」


 その彼女が突然、頬を引き攣らせた。


「な、なんだ、この殺気は……? 本当にメイドか……?」

「え?」


 振り返ると、そこにいたのはにっこりといつもの柔和な笑みを浮かべるミリアだ。


「ふふふ、ルーク様。後のことはわたくしにお任せください。メイドとして、客人のお世話もお仕事の一つですから」

「う、うん。じゃあ、お願いしていいかな?」


 なぜか有無を言わさぬ迫力を感じて、僕は大人しく頷く。

 これ以上この酔っ払いの相手をするのも面倒だしね。






「あれ? どうしたの、セリウスくん?」

「っ……い、いや、何でもないっ」

「……?」


 ミランダさんが使っている部屋を出たところで、僕はセリウスくんに遭遇した。

 セレンの弟ということもあって、彼もこの最上階で一緒に住んでいるのだ。


「ええと、ごめんね? もしかしてちょっと臭かった? この部屋、汚くてさ」

「そ、そういうわけじゃない! ただ……その……」


 何だろう?

 不思議に思いつつも、セリウスくんはもじもじしているだけで何も言ってくれない。


「フィリアさんのこと? あれから進展したの?」

「い、いやっ……」


 セリウスくんは、密かに――といっても周囲には諸バレしてるけど――フィリアさんに好意を持っているのだ。

 でも恥ずかしがり屋なので、今のところまったくアプローチができていないという。


「そ、それも、関連してはいるんだけれど……」

「関連してる? どういうこと?」

「じ、じ、実は……」


 セリウスくんは、切実そうな顔で言うのだった。


「ぼ、ぼくはっ、そのっ……ど、どっちを選べばいいんだろうかっ!? フィリアさんと……み、ミランダさんの……っ!」


少しでも面白いと思っていただけたら、↓の☆で評価してもらえると嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
[一言] 自分から設定だとばらしてどうする?
[一言] いや、そもそもお前2人のどっちからも相手されそうにないだろ! という意見は置いといて、 その2人から選ぶならミランダはありえないだろw お前は容姿しか見てないのか
[良い点]  ぐうたら者を矯正するメイド。 [一言]  セリウス君は自信過剰なんでしょうか?告白もできないフィリスに続いてミランダにも懸想し、自分側に選択肢があるように思い込んでいる。  実のところ、…
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