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第159話 こんな昼間からお楽しみというわけか

 改心したドルツ子爵が、神妙な面持ちで切り出してくる。


「ルーク様、実は一つお願いがあるのです」

「お願い?」

「……もう一度、領地を取り戻すチャンスを戴けないだろうか? 無論、決して自分の矜持のためなどではない。今度こそ領民のための統治を行い、この街のような素晴らしい領地を作り上げたいのである」


 街じゃなくて村だけどね、一応。


「残念ながらフレンコ子爵は、かつての儂と同じ。彼が統治している限り、領地の発展は望めず、またいずれ再びどこかの領地と争いを起こすことになるであろう」


 そう語るドルツ子爵の口振りに、フレンコ子爵に対する敵意や恨みのようなものは感じられなかった。

 冷静な分析からくる予想なのだろう。


「しかし我々だけでは、領地奪還に果たして何年かかることか……。そこで恥を忍んで申し上げるのだが……ルーク様、どうか我々に力をお貸しいただけないだろうか?」

「別にいいですけど」

「い、いや、さすがに虫の良すぎる話だったよう……って、よろしいのか!?」

「はい。まぁ、それくらいならすぐ終わると思いますし」

「す、すぐ終わる……? 領都は完全にフレンコ軍に占領されており、そう簡単にはいかないはずだが……ま、まさか、アルベイル軍を……?」

「それはないです」


 僕にアルベイル軍を動かせる権限なんてゼロだし、それを脅しに使ってフレンコ子爵を追い出すつもりもない。


「大丈夫。被害なんて出さずに上手くやれる方法がありますから」









「ルーク様……この地下道は一体……」

「作りました。ドルツの領都まで続いてますよ」

「えええ……」


 ドルツ子爵が唖然とする中、僕たちは真っ直ぐ伸びる地下道を勢いよく進んでいた。

 主にセレン率いる狩猟班が中心となった、総勢百人ほどの戦力だ。


 このまま直接、僕たちはドルツ領都にある領主の城へと乗り込むつもりだった。

『潜入者』のギフトを持つ村人にあらかじめ調査させたところ、フレンコ子爵は軍を率いて自らドルツに乗り込んできてから今に至るまで、ずっとその城に滞在しているらしい。


「今のところ城の中庭に繋げる予定ですけど、大丈夫ですか?」

「そんな場所にいきなり敵が現れては、防衛など不可能かと……」

「じゃあ、そこでよさそうですね」


 敵の本陣中心に突入し、一気にフレンコ子爵を捕えてしまえば、ほとんど被害なく城を奪い返すことができるだろう。


「そんなの普通は無理に決まってるけど……」

「ルーク殿だからな」

「相変わらず出鱈目だ……既存の戦略がもはや通じない……」


 そんなことを仲間内からも言われつつ、地下道を進むことおよそ二時間。


「そろそろだね」

「早っ!? ま、まだ二時間しか経っていないのだが……? 普通に徒歩で移動すれば最低でも二日はかかるはず……」


 施設グレードアップを使って、移動速度が上昇するようにしたからね。


 こうなるとそれなりにポイントの消費も激しい。

 最初は地上に敷いた道路を進み、途中から地下道ということも考えたけど……できるだけ秘密裏に動かなければ奇襲にならない。

 だから最初から地下道を使うことにした。


「階段を作って、と……複数あった方がいいかな」


 階段が一つだけでは、百人が一度に地上に出ることができない。

 一斉に奇襲を仕掛けられるよう、階段を幾つか作ることにした。


「ルーク様、潜入しているババラによると、フレンコ子爵は現在この部屋にいるそうです」


 そう地図を示しながら教えてくれるのは『念話』のギフトを持つサテンだ。

 彼が念話を使い、城内にいるスパイとやり取りしているのである。


「城内の様子が丸分かりだ……」

「ご当主様、この部屋、寝室では……?」

「っ! あやつめ、こんな昼間からお楽しみというわけかっ!」


 ちなみに城内の構造はあらかじめ全員に共有してあるので、迷うことはないはずだ。


「じゃあ、準備はいいかな? 一斉に地上と繋げるからね。三、二、一――」


 地下道に明るい光が差し込んでくる。

 階段を地上と繋いだためだ。


「行くわよ!」

「「「おおおおおっ!」」」


 階段を駆け上がり、皆が勢いよく城内へ突入していった。


 ……なお、僕はここでお留守番である。


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