第131話 ついでに橋も架けておきますね
〈パンパカパーン! おめでとうございます! 村人の数が30000人を超えましたので、村レベルが9になりました〉
〈レベルアップボーナスとして、300000村ポイントを獲得しました〉
〈作成できる施設が追加されました〉
〈村面積が増加しました〉
〈スキル「三次元配置移動」を習得しました〉
北郡の住民たちが村人になったことで、レベルが上がった。
新しく作れるようになった施設は次の通りだ。
冷蔵庫(100) 娼館(200) 美術館(300) オフィスビル(400) ダム(600)
〈冷蔵庫:食糧などを低温で保存するための施設。温度調整可能〉
〈娼館:売買春を斡旋するための施設。避妊効果。性病感染防止〉
〈美術館:美術作品を保存・展示するための施設。作品の劣化防止。防犯設備。村人の芸術的感性アップ〉
〈オフィスビル:オフィス用のビル。10階建て。作業効率、アイデア力、商運アップ〉
〈ダム:治水・利水用の施設。貯水量自動調整〉
……作れるもののスケールがどんどん大きくなっている気がする。
そしてスキル「三次元配置移動」は、「配置移動」の上位版らしい。
今まで平面上を移動させるしかなかったので、例えばマンションを公衆浴場の反対側に移転させようとしたら、公衆浴場を迂回する必要があった。
だけど「三次元配置移動」を使えば、公衆浴場の上を通って移転させることが可能になる。
「つまりその際、マンションが空を飛ぶってこと……? ……うん、想像しただけで凄い光景」
そうして北郡各地を回っているときだった。
「洪水?」
「は、はい。豪雨の際、近くの川が氾濫し、一帯が水没してしまうのです。それほどの豪雨はせいぜい数十年に一度のことですが、村も畑もその度に壊滅的な打撃を受けてしまい……」
「なるほどねぇ」
ミシェルさん相手に切実に訴えているのは、とある村の村長さんだ。
新代官が視察に来ていると知ってやってきたらしい。
どうやら早速、新しく作れるようになったばかりの施設を建設する機会が訪れたみたいだ。
「いや~、村長さん。お気持ちは分かるんだけどねぇ、予算的になかなか大規模な治水工事は……」
「大丈夫ですよ」
「……ルーク様?」
「上流にダムを作りますんで」
「だ、ダム……ですか?」
ダムと言われてもピンとこないようで、ミシェルさんが首を傾げる。
「川の上流に巨大なため池を作って、下流への放流量を調整するんです。そうやって洪水を防ぐだけじゃなくて、渇水時には溜めておいた水が役立ちます」
「そ、そんなことが可能なのですか? いや、原理的には理解できますけど、建設するのは簡単なことでは……(さすがのルーク様でも難しいんじゃ……?)」
「任せてください」
「(自信満々なんだけどぉぉぉっ!?)」
先ほどの村長さんが恐る恐る訊いてくる。
「あのー、代官様、そちらの方は……?」
「え? ああ、言ってなかったっけ? こちらはルーク=アルベイル様。アルベイル侯爵のご子息だよ」
「あ、アルベイル侯爵の!? ひえええっ!?」
村長さんが慌ててその場に跪いた。
「そんなに畏まらないでください。それより川まで案内してもらえますか?」
「は、はいっ!」
「ついでに道路も敷いておきますね」
「へ? み、道が勝手に……」
馬車でしばらく移動すると、川が見えてきた。
かなり川幅が広く、大雨で反乱を起こすというのも頷ける立派な川だ。
「わ、儂らの村はこの川の向こうにあります」
「川を渡るときはどうしてるんですか?」
「渡し舟を使っております。これだけの川ですと、やはり橋を架けるのも難しく……」
「そうですか。じゃあ、ついでに橋も架けておきますね」
〈橋:鉄筋コンクリート製の橋。高強度。抗劣化。構造や形状の選択が可能〉
氾濫で壊れてしまわないように、施設グレードアップを使って強度をしっかりと強化しておこう。
「「……は?」」
川に突如として出現した巨大な橋を前に、ミシェルさんと村長さんの目が点になった。
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