第128話 これは公衆便所にしちゃいますね
「着きましたね」
「ほ、本当に歩いてリーゼンまで……しかも全然疲れていないんですが……」
村から道路を延伸し続け、ついには北郡最大の都市リーゼンにまで辿り着いた。
延伸作業をしながらだったこともあり、三時間くらいかかったけれど、普通に歩けばこの半分の時間で行けるだろう。
しかも「疲労軽減」効果のお陰で、歩き通しでもあまり疲れていない。
これだとかえって移住が加速してしまいそうに思えるけど、逆だ。
「なるほど……数時間で行ける距離にあるのなら、わざわざ移住しなくても、と考えるわけですねぇ……」
「そうですそうです。ついでに定期運行する馬車を設ければ、もっと気軽に行き来ができるようになると思うんです」
「それはいいアイデアですねー」
今までは一方的に人々がここから村へと移住者がするだけだったけど、人が頻繁に往来するようになれば、それだけ経済も発展する。
お互いにとって益があるはずだった。
〈都市リーゼンの住民たちを村人にしますか? ▼はい いいえ〉
〈リーゼンの住民9351人が村人になりました〉
そして一気に村人が増えた。
「さて、どうしようかな……」
今までは好きなだけ建物を作ることができた。
というのも、元々はただの荒野で、完全にゼロから村を築いたからだ。
でも、ここにはすでに街が存在している。
リーゼンは古くから栄えた歴史ある都市なので、普通の住居すら趣があって、壊すには惜しいものばかりだ。
それを無機質なマンションに変えていくというのは、さすがによろしくない。
街を広げるように新たな居住区を設ける?
ただ、それもせっかくの街並みが台無しになってしまう気がする。
というわけで、僕は今ある建物を残したまま、改装を施すことにしたのだった。
実は村の中にある建造物であれば、ギフトで作ったものでなくても、施設カスタマイズや施設グレードアップを使うことができるようなのだ。
「まずは施設カスタマイズで、壊れた部分や汚くなった部分を修復して……」
街で一番高い塔に上り、そこから見下ろしてすべての建物をカスタマイズしていく。
ちなみにこの塔はあらかじめ物見塔へと作り替えてある。
〈物見塔:もっと遠くまで見渡せる、頑丈な石造の櫓。視力大幅アップ〉
お陰で遥か先にある建物でも、細部までばっちり確認することができた。
もちろん建物の中までは見れないので、その辺の修復は諦めている。
とりあえず見た目さえよければいいよね。
「ま、街があっという間に綺麗になっていく……」
唖然としているミシェルさんを余所に、続いて施設グレードアップで、建物の『快適性』『消臭性』『防犯性』『頑丈さ』などを向上させてった。
まぁ中には空き家とか、家じゃない建物もあるだろうけど、判別が難しいので細かいことは気にしない。
「……ふう。これでかなり住みやすくなったはずです。本当は全部の家にトイレとかお風呂を付けてあげたかったんですけど、さすがにそれは無理なので……」
「……」
「それで、使ってもいい建物を調べていただけましたか?」
「……」
「ミシェルさん?」
「……はっ!? は、はい! もちろん調べましたよ~っ!」
時計台から降り、ミシェルさんに案内されて街を回った。
「ルーク様、まずはこの建物です。持ち主がいないので、好きに使ってしまって構わないとのことです」
「ありがとうございます。じゃあ、これは公衆便所にしちゃいますね」
「ほ、本当に一瞬で中がトイレに……」
「次に行きましょう」
「こ、こちらも空き家となっている建物ですねー」
「広いんでこれは公衆浴場にしますね」
そんな風に空き家をカスタマイズすることで、街の各所に公衆便所や公衆浴場を作り出していく。
各家に設けられなかったその代わりだ。
「ついでだし道路も整備しておこうかな。井戸は全部、手押しポンプ式にしちゃっていいよね。あとは城壁も……」
そうして僕は一日かけて、リーゼンの街を生まれ変わらせていったのだった。
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