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第123話 兵士どもがダメになっちまう

「もう少しゆっくりしていったらいいのに」


 三日間も眠っていたラウルが目を覚まして、僅か一日。

 もう軍を引き連れて領都に帰還するつもりらしく、いつでも出発できるよう、ラウルは五千の兵たちを整列させていた。


「うるせぇ、これ以上こんなところにいたら、兵士どもがダメになっちまうだろうが」


 ラウルが吐き捨てる。

 ……ひどい言い様だ。


「別にそんな悪く言われるような扱いはしてなかったと思うんだけど……」


 むしろお客様待遇で持て成したと言ってもいい。

 きっと快適に過ごせたはずだ。


「(もう帰るのか……もっとここに居たかったな……)」

「(はぁ、俺も正直帰りたくねぇよ……バカンスが終わってしまった気分だ……)」

「(何よりあの美味い酒がもう飲めねぇのかと思うと……)」


 あれ、でも兵士たちの顔を見た感じ、みんなあまり元気じゃない?

 つい昨日まではあんなにイキイキしていたのに……。


「……そっちの意味じゃねぇよ。ちっ、この街に人が集まる理由が完全に理解できたぜ……」


 忌々しそうに呟いてから、ラウルは兵たちに向かって声を張り上げた。


「これより領都へ帰還する!」


 軍がゆっくりと動き出す。


「って、おい、あの城壁の迷路はどこに行った!?」

「あ、それなら邪魔だからもう消去しちゃったよ」

「消去……」


 何やら言いたげなラウルを、僕は手を振って送り出す。


「またいつでも遊びに来てね~っ!」

「もう二度と来ねぇよ!」


 怒鳴り声が返ってきた。

 二度と来ないってことは、また攻めてくる気もないということだよね、うん。


「……行っちゃった」

「お疲れ様です、ルーク様」

「ミリア」


 ラウル軍が去っていくのを見送っていると、ミリアがやってきた。


「それにしても、まさかあのラウル様を懐柔してしまわれるとは。さすがルーク様ですね」

「……懐柔?」


 ラウル相手にそんなことができたら、とっくに世の中は平和になってると思う。


「単にお互いの利害が一致しただけだよ」


 ともかく、これでもうこの村も安泰のはずだ。


「ルーク様!」

「あれ? あなたは確か……」


 どこかで会ったことのある男性が、こちらに駆け寄ってきた。

 すぐ後ろにセレンとセリウスくんが続いているのを見て、ピンとくる。


「バズラータ卿……?」


 バズラータ家の当主、つまりはセレンたちのお父さんだ。

 僕は思わず身構えてしまった。


「娘と息子がお世話になっています!」


 ……あれ?


「それにしても、こんな短期間にこれほどの街を築かれるとは! さすがルーク様ですな! 荒野へ開拓に出られたと聞いたときは驚きましたが、きっとアルベイル卿もルーク様を信じておられたのでしょう!」


 てっきり二人を取り返すために乗り込んできたと思ったんだけど、どうやらそんな雰囲気ではなさそうだ。


「ルークが勝ったからって、手のひらを返し過ぎでしょ。どうせラウル側に付く気でここまで来たくせに」


 セレンが呆れ顔で鼻を鳴らす。


「姉上、そんなことはありません。父上は我々に加勢するためにわざわざ兵を率いてきてくれたのです」

「ももも、もちろん、セリウスの言う通りだぞ!」


 ……本当かな?


「ともかく、ルーク様! これからも我が子らをお願いしますぞ! では、儂はこれで!」


 どうやらもう行ってしまうらしい。

 急な事態で慌てて領地を飛び出してきたこともあって、すぐに帰りたいのだそうだ。


「少しくらい村で休んでいっても……」

「「それは絶対やめた方がいい(わ)!」」

「じゃあ、せめて食事くらい……」

「「それもやめた方がいい(わ)!」」


 なぜかセレンたちに全力で止められてしまった。

 もしかして、あまり親子仲がよくないのかな……。


「だって、帰りたくないとか言い出したら大変だもの……」

「さすがに領主の父上まで領地からいなくなるわけには……」

「……?」


 なぜ二人がそんなに心配しているのかはよく分からなかったけれど、これで二人の村への移住が正式に認められたってことでいいんだよね?

 よかったよかった。


少しでも面白いと思っていただけたら、↓の☆で評価してもらえると嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ラウルくん正解と言うか、正直ありがたすぎる。 これで変に取り立てようとか対立しようとか思わないのが本当に有り難いね。内政重視の領地だから外部からの干渉が一番困る。 ルークきゅんの領地にいて…
[一言] ラウルくん理性的
[良い点] なにはともあれ丸く納まってよかったな
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