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バカの流儀3  作者: 筑豊ナンバー
1/1

バカと祭

バカの生き様を見届けよう。

無事竜面の居場所を突き止め向かおうとした時、やり残した事を思い出しバタバタ向かう。目的地は俺の家、祭会場から少し離れた場所にある。とはいっても能力を駆使すればひとっ飛びだ。


 

 毎年祭があるたび思い出す。三年前に死んだ息子はいつも祭に参加していた。リビングにある写真を見るとすぐに泣きそうになる。一人息子の賞火父親は、病で死んでしまい。女手一つで育てて来た大事な雄一の家族だった。二年前は、柄にもなく祭に参加したのだが、旗は手にいれられず諦めていた。旗を手にしたとこで、本当に賞火と会える訳ではない。あくまでも言い伝えだ。賞火の写真を手に取り眺める。

 「寂しいよ…また会いたいのに」

こんこんと窓から聞こえ振り向くと窓の枠に白いダリアの花がおかれていた。

 ダリアの花言葉は感謝、初めて息子から貰った誕生日プレゼントだ。賞火は、とてもバカでやろうと思った馬鹿げた事を考えるより先に行うよりたちの悪いバカだった。

 でもこの花を選ぶ時は、柄にもなく考え、調べて選んだ。

 父親の稼ぎがなく、生活費で精一杯、まともなお小遣いをあげることが出来なかったのに、賞火は地道に貯めていたのだろう。

 花を手に取った時、涙を押さえられなかった。

 

 

 「ほんとにこれで良かったんですか?」

 「ああ、これで良かったんだよ…これで…」

 泣く母を向かい側の家の屋根から眺めていると狐面の巫女が隣に座り聞いてきた。様子を見ると言っていた。念のため着けていたんだろう。

 「それに、これ以上あんたに迷惑は、かけれない」

 祭の掟には、旗を手にしていない者は、願いを叶えることは、出来ないとある。この巫女さんは、祭の秩序を守るのが仕事つまり掟を守らなければならない。

 「それに、姿を見せればよけい悲しませちまう、祭の鐘がなりゃまたお別れだからな…」

 「そうですか、優しいんですね。」

 巫女と肩を並べて、泣く母を見ていると、こっちまで泣き出しそうになる。

 「そろそろ鐘が鳴りますけど大丈夫ですか?」

 「あっ!やべ忘れてた!それじゃ巫女さん」

 あわてて飛び立つ俺に「ご武運を」と巫女は言ってくれた。



勇治郎さんが吹き飛ばされた瞬間、竜面との距離を詰め金棒を振りかざす。

竜面は、それを交わし、爪を振りかざす、金棒で弾き、再び反撃する。

こんどは、金棒を爪で受け止められ、パワー勝負に持ち込まれた。お互いの得物が、ギチギチと気刻みに震えている。不味い、力負けする。

押し返されそうになったとき、後ろから勇治郎さんが金棒の先端部分を殴り、そのまま押し返した、「無茶です!勇治郎さんの腕が!」勇治郎の拳は、もう限界だ 。

包帯に、血がにじみ出ている。

「お前は難しく考え過ぎなんだよ。腕がダメになったら、そん時考えれば良い、大抵のことをこう考えた方が楽しいぜ」そう言って笑った。

聞いた瞬間、何か吹っ切れた。その言葉は、無責任で臭い物にふたをするようなものだ。なのに何故か共感出来た。今まで私は、真面目に生きてきた。

毎日決まったら時間に起きて、決まった時間に勉強し、決まった時間にご飯を食べて、決まった時間に寝る。

その繰り返し、そんな毎日に飽きて疲れはてた時、見つけた希望がこの祭だった。

祭への参加は、願いを叶えたい一心だったが、勇治郎さんのおかげで思い出した。祭とは、楽しむものだと。

 「良いですねそれ」

 どこからか力が沸いてくる。

 「ハァアアア!」

 「オラァアア!」とおたけびを上げ竜面を押し飛ばす。「ぐあぁ」と神社の階段に叩きつけられた竜面、何とか立ち上がり再び爪を振りかざしてくる、だが怖くない。今なら勝てる気がする。自然と笑いが込み上げてくる。勇治郎さんも同じく笑っている。勇治郎さんと交互に攻撃を交わし反撃し、攻防戦を繰り返す。「待たせたな」とぜいぜいと息切れしながら賞火が、竜巻を飛ばす、竜面は拳で粉砕するが、隙ができた。「くらぇええ!」勇治郎さんと同時に拳を放つ。竜面の胸に拳がめり込み、勢いよく再び神社の階段に叩きつけられる竜面、さすがに立ち上がれずそのまま動かなくなった。「ぎりぎりだったな」と笑いながらよってくる賞火。

 「まさかほんとに勝てるなんて!」と喜び笑う。

 「まさかこれに救われるとわな」と懐から凹んでぐちゃぐちゃになった、エロ本を取り出す。

 「もったいねぇ…」

 ちょうど、祭の終わりを告げる、鐘がなった。

 「もうこんな時間か」二人は、何故か寂そうに言う。

 「お別れだな弓」


「お別れだな」祭終了の鐘が鳴り響く、なぜだろうもう二人と会えない気がする。「今日はお前の誕生日だろ」と腕時計をはずし、渡してくる。「大事にしろよ」

 「ありがとうございます」

 と早速腕に付ける。

 「何で私の誕生日を?」

 「当たり前だ、兄貴なんだから」

 「なるほどそれなれ当然ですね。」

「疑問に思わねえのか?」

「いえ薄々そんな気はしていましたよ」

 祭りを一緒に回っていた時、妙な親近感があった。あった事のない人なのに何故か一緒にいて安心感が持てる。まるで家族の用に。

 賞火がなにか拾い渡してくる。

 「そおだったな、はい誕生日プレゼント」と石をわたしてくる。

 「ありがとうございます」

 受け取り捨てる。

 「ソンナーヒドイヨ」賞火さんは、いつもこんな感じなんだな。

 「ほら、願い聞いてもらってこい」謎が解けると同時に、新たなより大きい謎が出来混乱したが、考えるのがめんどくさくなった。嘘だったら嘘だったときに考えれば良いや、早くも兄の考えに、染まってしまっているがこれで良いんだ。それにしても、本当にお別れなのか…短い間だったけど楽しかったな。目から涙が出てくる。これから別れなければならない兄の前で弱いとこを見せまいと思って居たけど耐えられない。やっと会えたのにもう別れなければならないなんて、考えたくなかった。涙を袖でぬぐう私の頭を、兄は優しく撫でてくれた。

 「何を願うか知らんがお前はが張ったんだ。少なくとも俺より賢いんだから安心しろ。俺の願いも叶ったしな」

 「え?!兄さんの願いってまさか!?」

 兄はなにも答えず頬笑み、優しく背中を押してくれた。

 「ほら行ってこい」

 「はい、今回の旗取り合戦は、お二人のお陰で楽しかったです、ありがとうございました」と頭を下る。

 「さよなら兄さん」

 旗を拾い上げた時、茶色い財布が落ちているのに気がついた。もしかして、振り返り兄さんを見ると白い光に包まれ、ほとんど消えかけている。慌てて財布を投げつけると兄さんと一緒に消えた、恐らく間に合ったのだろう、それにしても本当にこれでお別れなのか…、兄とはいえ、たった数時間行動を共にしただけでこんなに寂しいものなんだな。神社の階段を上っていく、ここまで長かった。祭に参加する理由を思い出す。

 五年前、中学校の休み時間、友達と話していると、兄弟の話題になった。「お兄ちゃんてさ、うざいんだよね」兄弟のいない私には、わからない。「えーそう?うち姉ちゃんいるんだけどさ、頼りになるんだよね~」

 それをきっかけに、兄弟に興味を持ち、料理中の母に聞く「どうして兄弟いないの?」「そうね、もう話してもいいかな、実はあなたには、兄がいたんだけど、病気ですぐ死んじゃったの」それを聞いたとき、かなりの罪悪感を感じた。聞いては、いけないことを聞いた。「そうなの?…あっ今日は肉じゃが?美味しそうだね」とはなしをそらす。

 自室で考える、わたしには、兄がいたんだ、もし兄が生きてたら…友達の話を思い出す、

「うざい」と私もそんなこと言うんだろうか、「頼りになるんだよね」と友達の話を再び思い出す。

私は、よく流儀をもったバカと言われる。

一度関わったことは、とことんやる、そのせいで他のことが考えられなくなる。

今回もそのせいで考え混んでしまう。

ふと机の上に置かれたプリントを見る、学校で配られた祭に関するものだ。右下辺りには、旗取り合戦と書かれている。

そうだこの祭なら、それから毎年祭に参加し旗を狙い続けた、そして五年後ついにはたをてにいれ、今にいたる。

まさか祈る前に、兄に会えるとは思わなかった。

実際に兄と会ってみると、とんだバカだった。でも頼りになるし、一緒にいると楽しい。

 階段を上り終えると、賽銭前に巫女が立っていた、巫女に旗を渡すと、「おめでとうございます、どうぞあちらへ」と道を開けてくれた。鐘をならし、両手を合わせる。「どうか来年も兄と…」 


持ちに待った7月3日が来た。

 だが妹の顔をみることわなかった。無事、産まれることが出来たと思われたが妹は、間もなくして死んだ。絶望し自分の部屋に引きこもり、ひたすら泣いた。父は、「ごめんな…」と平謝りで、母はリビングで泣いている。誰も悪い訳ではない、それは、解っていた。それでもこの思いをどうすれば良いんだ。「これは!?」机の上に希望を見つけた、それは、学校で配られた、今開催されている祭に関する一枚のプリントだ、そのプリントの右下辺りに、旗取り合戦、旗を手にすれば会えなくなった人と会える。と書かれている。そうだ旗取り合戦で勝てば、妹と____

 引き出しを明け鬼の面を取り出す。このお面は、戦争で死んだお爺さんの片身だ。とわいえ爺さんとあったことがなく、婆さんに写真を見せてもらったり、話を聞いたりしただけだが、とても尊敬している。

 「この力があればいける!爺さん力借りるぞ」

 窓を開け、両親にばれないよう、家を出る。

 それから、8年の年月がたった、七度の失敗を重ね、ついに念願の旗をてにいれ、神社の鐘を鳴らし、両手を合わせる。「どうか妹と合わせて下さい」



 竜の面をつけ、戦場の上空を飛び 偵察していた。い能力を買われたわしは、最前線に送り込まれた。この偵察は敵の規模を計るためのものなのだが、よくぞまあ諦めず戦うものだ。偵察するたびため息が出る。明らかに装備も人でも敵国の方が多く、どう考えても勝てるわけがない。無線をとり、敵戦力を告げ、帰還しようとした時、何か黒い塊が飛んできた。油断した、ロケットランチャーの弾だ。交わそうにも間に合わない。身をよじり両手をクロスさせガードをとったが、いくら鋼を弾く鱗でも、ロケットランチャーには勝てない。そのまま一直線に落下し、血まみれで地面に這いつくばる。余りの痛みに「うがぁあああああ」と悲鳴を上げてしまう。敵が容赦なく充を乱射してくる。終わりだ。今思えば下らない人生だった。こんなことなら国から逃げれば良かった。目をつむり何もかも諦めた。その時目の前に人影が現れ、敵の弾丸に立ちはだかり両手を広げ己を盾にしかばってくれている。そのおとこは、自分と同じ薄汚れた軍服を着て、顔は、鬼の面で覆っている。しった顔だ。

 「何でお前がここにいる?おれのことは良いから逃げろ」だが、鬼面はなにも答えなかった。次々と飛んでくる銃弾を身体中でうけ、その場に膝をつきながらも両手を広げ受け続けた。銃声が止まった瞬間鬼面はその場に倒れ血を吐いた。這いつくばり鬼面の元へむかい傷口を押さえる。が、傷口が多すぎて別の傷から血が溢れだす。

 「何で助けた?バカ野郎」「すまねえ…俺不器用でがはっ…」

 「クソ、今すぐ衛生兵を呼ぶから」

 「いや良い…もう無理だ。こいつを俺の家族に渡してくれ」と鬼の面を外し渡してくる。それをだまって受け取る。

 「これからなん十年後には、祭が再開されるだろう、…その時俺の…息子や孫を祭の時、相手してやつてくれ、多分俺ににて不器用な奴らだから…」

 「くそ、そうゆうことは、自分でやれよ」

 目から涙が出て溢れだす。「だいたい何で俺を助けたんだ?」

 「俺は、要領悪いから大勢を助けることは出来ない。実際大勢死んだ。…だがな、一人だけなら確実に救える。その一人が賢ければ、大勢助かる。だからお前を助けた。」

 「このバカが…」

 わしにそんな価値が有るわけ無いんだ。一人の英雄(バカ)が助けるほどの価値は…

 「頼んだ。」

 健治は笑い、目を閉じて動かなくなった。

 

 「負けちまった」気がつけば神社の階段で倒れていた、戦場で負けたこと無かったが、今回は負けた。悔しいが今までにない興奮を味わえた。鬼面の最後の一撃を受けた時、健治と重なって見えた。こんな形で再開できるとはな…、美酒が顔を除きこんでいる。「まったく私以外に負けないでよ」とため息をつく「来年もお願いね師匠」と言いのこし帰っていく。

 「楽しかったな、来年が待ち遠しい」

来年からは、虎面も鬼面も強くなっていくだろう、楽しみだ。

それにしてもさすがは鬼面の孫だな、怪我をおってなおあんな無茶な戦い方するとこは、なぜ己を盾にしてまで、わしを助けたのかわかった気がする。あいつに良く似た孫達だ。

「なあ、健治…お前の孫はお前みたいな、バカに育ったぞ。」

目をつむる、もう一眠りしよう。



光に包まれ、気ずけば元の神社の賽銭箱前にたっていた、もう日が暮れている。

「そんじゃ俺はかえるわ」と背を向けて帰っていく賞火。

「ありがとな」こいつは、最初から私と弓を合わせるために祭に巻き込んだんだんだろう、おそらく賞火の言うバイトは、祭参加者の願いを叶えるというものなのだろう。こいつのおかげで俺の願いかなった。

「おう」と背を向けたまま手をふりながら階段を下りていく、賞火を見送り賽銭箱前をふと、見てみると、私の財布が落ちている。旗取り合戦に夢中ですっかり忘れていた。財布ごと賽銭箱に投げ入れ、鐘をならし、手を合わせる。「また妹とばか騒ぎできますように」

 

 

読んでいただきありがとうございます。

バカじゃないと出来ない正義をていまに書いてみました。

番外編も気分次第でかくのでよろしくも願いします。

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