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魔王で候う

超ゆっくり投稿するよ!

 暗くて狭い部屋で少女はうつ伏せに伏せている、アパートのとある一室のこの部屋は汚くゴミが散らかり壁や床、天井にはシミやカビが沢山ある。この部屋の住民はパチンコや競馬に勤しんでいる、つまりネグレクトなわけである。そのため今いるのは少女だけである。

 そんな彼女は生まれてから親の愛情を受けるでもなくその日その日でお金を貰ったり適当に買ってきた弁当でその日を凌いだ。まだそれはマシな方でお金も弁当も貰えない日すらあった。

 そんな日はこうしてうつ伏せになるのが日課だった。もちろん少女はただうつ伏せになっているだけではない、指先でちょいちょいとなにかに餌を上げている。それは黒光りする多くの日本人は嫌いというゴキブリだ。

 こんな部屋に放置されている少女の人生においての娯楽はほとんどなく、その僅かな娯楽の1つがこれだった。普通のペットを買うにも金がかかる、しかしここにいるゴキブリは部屋に無制限にいるようなものだし何よりその辺に落ちているゴミで餌が代用できるのだから。だから少女はその辺に落ちているゴミ袋からこぼれたゴミを拾ってゴキブリたちに餌を与える。その餌を必死に食べる姿を見て「あぁ、かわいいな」と静かに見つめる。

 ゴキブリ達も頭がいいのか彼女が餌をくれるとわかり時折彼女の前に姿を見せてはジッとしている日が増えてきたので彼女も彼らに愛着が湧いてきた。

 そんなある日のこと、その日はいつもと事情が違った、いつもはいない親が今日は家にいるのだ。お酒のカップを片手に持ちテレビを見ながらイライラしているのか貧乏揺すりが止まらない。


「何見てんだ!!!」

「ご、ごめんなさい!!」


 少し見ていただけだったのだが怒鳴られてしまった。仕方ないので手元にいるゴキブリたちと戯れる、最近では爪楊枝やティッシュなどを使って遊ぶことが増えている。

 そんな楽しそうな娘を見た親は、なぜ自分がこんなにイライラしているのにこいつは幸せそうなのかと思い手元を見て驚いた。ゴキブリと遊んでいるこいつはなんなのだと。そもそも部屋にゴキブリがいることが気持ち悪いと思ったのか突然立ち上がると。手に持っていた新聞でゴキブリを叩き潰してしまった。少女は突然の事とあの可愛かったゴキブリ達を殺されてしまったショックから動く事が出来なくなってしまった。


「……どうして殺しちゃったの……?」

「うるせぇ、黙ってろ。俺に文句があんのか?」


 その威圧した声に恐怖したのか黙って首を振ることしか出来なかった。この状態の親は少しでも泣き声や声を出すと酷く叩かれるのを知っていたからだ。

 それでも悲しくて悲しくて黙って声を殺しながら涙を流して心の中で彼らに謝ることしか出来なかった。


(ごめんね、私のせいで……)


 その日からはただただ地獄だった、1人でいる時はお腹が空くので天井を見つめるだけ。親が帰ってきてからはひたすらに怒られないように静かに気配を消してやりすごし親が食べ終わった残飯を静かに漁る。夜になると親がどこぞとも知れぬ相手と1晩を過ごす為、その邪魔をしないように部屋の端のゴミに埋もれて静かに眠る。

 そんな心の支えを失った彼女の命の炎が消えるのにそれほどの時間は掛からなかった。




───────とある城にて


「まもなく召喚の儀が終了します」


 大きな広間の真ん中に大きな魔法陣と死にたてのヤギ、そのまわりを囲むようにローブを着た魔術師達が手を前に出して呪文を唱えている。その呪文ももうすぐ終わろうとしてるところだ。

 魔法陣の前には巨大な椅子がありそこには1人の男が座っている。肌は浅黒く頭には角が生えている。高級そうな服に身を包み襟の高いマントを羽織って肘をついて儀式の成り行きを不気味な微笑と共に見つめる。

 その椅子の横に1人の女性がたっている。最初に召喚終了を伝えたのもこの人物だ。


「これより()()()()を行います!!魔王様挨拶を」


 魔王と呼ばれた男が椅子から立ち上がる。彼の目の前に見えるのは儀式と数人の信頼出来る幹部たちだ。そして今から行われる挨拶は魔界全土へと生放送されることになっている。


「ユウシュご苦労だった。……魔界の民よ。たいへん待たせたな。私が新しく魔王となったマ=オウ・サマデスだ!新しくなった私は人間界に魔界の存在を認めさせそして我ら魔族の存在を認めさせる事を目標とする。その為にも既存のやり方にはない魔界における勇者しょうk「すいません魔王様!もうでちゃいます!!」え!あっ、ちょっ、待って!!」


 その瞬間に広間が光に包まれる。と同時に大きな風が巻き起こりその場にいた全員が吹き飛ばされる。魔王も例外に漏れず吹き飛ばされたのだがその時に椅子にズボンが引っかかり脱げてしまう。


「「「「ぎゃああぁぁぁぁぁあああ!!!」」」」


 広間には土煙が巻き起こって何が召喚されたかはよく見えない。


「ゲホッゲホッ……ちょっと!なんでどうしてこうなった!?魔王様でも想定外だヨ!!」


 そう叫んでいる間にも徐々に煙が晴れてくる魔法陣の中に何が横たわっているのが見える。魔王はまさかと思いズボンを履きながらすぐさま駆けつける。

 そこに居たのは、ボロボロの服を着て顔を真っ赤にしながら仰向けに寝ている少女の姿だった。意識もないようである。


「え……?事後……?」


 思わず呆然と見ていると煙が晴れてくる周りの部下たちも魔王の目の前にいる少女に気がつく。そしてその姿を見たユウシュが……


「ま、魔王様!こんな時に何してるんですか!?」


「へ?」


 顔を赤らめ倒れた少女、ボロボロの服、半分だけ履いたズボン……。


「違う!違う!魔王様こんなに早漏じゃないから!早すぎでしょ!今の一瞬で淫行に及ぶって出来ないし出来たとしてもやらないからね!!!テクニシャンすぎるでしょうが……いや早漏だからテクニシャンじゃないのか?」


 自分で言っててなんだか目元が熱くなってきた。それはともかく召喚された勇者を確認しなくては。


「ふむ、どうやらかなり衰弱しているようだ。手当を!」


「魔王様……あの一瞬でどんなプレイを…ってか早漏すぎだろ…とにかく一旦配信を中止!救護班!」




 そうして少女が運び込まれてから数時間後彼女は目を覚ました。そして直ぐに魔王の元へと最初に召喚がなされたあの広間へと呼び出された。

 広間の椅子には魔王のような人が座っていて、その横に秘書のような人がたっている


「あの……私は……何故ここに?」


 すると椅子に座っている人物が話始める。


「そうだな、理由は説明するが先に自己紹介からさせてもらう。私は魔界を統べる王としてこの魔界に君臨している、マ=オウ・サマデスだ」

「私はユウシュ=ナヒショです。よろしくお願いします」


 少女は2人のことをぽかんと見つめることしか出来なかった。というのもマ=オウは角が生えていて肌の色はおかしいし、ユウシュの方はパッと見はおかしくないが背中に昆虫由来と思われる羽がついている。


「それで貴方の名前は?そうそう、私の事はユウシュとお呼びください」

「はい、私の名前は雨水幸(うすいさち)です。よ、よろしくお願いします」


 取り敢えず自己紹介したが良かったのだろうか?と言ってもここがどこかも分からない状態で周りもよく分からない人?ばかりなのでここは素直に言う以外になかったと思う、多分。


「さて、まぁここまでの流れは言わば形式的なものだ。こちらに来て頭を出せ」


 なんと魔王に呼ばれてしまった、とても怖くてしょうがないがしかし従う他にないだろう。言われるがままに玉座に近づいて頭を差し出す。


「何、心配するな。サチ、貴様の人生を少しだけ覗き見るだけだ」


 そう言うと頭に手を置かれる。そのまま手が光って頭の中に暖かい何かが流れ込んでくると同時に今までの記憶がフラッシュバック?というのか次々と頭に浮かんでは消えてを繰り返す。

 数分後に魔王が頭から手を話すと静かに一言告げる。


「……よい、戻って良い……グッ……」

「え?魔王様?」


 私の頭から手を離してから魔王の様子がおかしい、目元を抑えてずっと上を見ている。試しに見ている方向に見てみるが何も見えない。ユウシュも不思議そうに魔王に近づく。


「ユウシュ……これを見よ……」


 そう言うと魔王がユウシュの頭に手を置くと魔王の手が光り始める。同じく数分後にユウシュも口元を抑えて後ろを見ている。何か気に触るようなことでもしてしまったのだろうか?


「ま、魔王様……私っ!!」

「い、言うな!言うでないぞ!ユウシュ!……うぅ……」

「ま、魔王様!それにユウシュ様までどうなされたのですか!?」


 すると先程近くにいたメガネのおじいちゃんドラゴンが魔王様の近くによって行き(略


「う、うぅ……我が龍生長けれど……これ程とは……」


 何が何だか分からない、とにかく落ち着いて状況整理をしなくては先程まで熱で伏していたがいつの間にか治っていた。起きてすぐにここに呼ばれてきた。その前だその前に何が起きたかだ……そうだ、私は死んだのだった。あのクソ野郎に最愛の友を殺され、挙句に自分の人生を踏みにじって見殺しにしたのだ。

 その瞬間に自分の中に大きな黒い感情が生まれるのが分かった、正確には元からあったのだろう。今なら分かる全てはあの男のせいだと絶対にあの男をそして人間を許さないと確かに心の中にその思いがあるのを感じた。


(あぁ、憎い憎い憎い憎い……人が憎い、アイツらを皆殺しにしてやりたい。私を見捨てたあの世界ごと全てを覆い尽くして殺してやりたい。その為には力が必要だ)


 すると魔王がこちらを見て目を細める。


「ほぅ、憎いのか?何を憎む?いや言わずとも分かるとも人間が憎いのだろう、あれだけの仕打ちを受け憎むなという方が酷であろうよ。なるほどではそうだな、我と共に来るか?力をやろう」


 その言葉に食いつかない方が馬鹿であろう、答えは当然決まっていた。たとえどんな苦しみが待ち受けていようと人間どもに必ず復習を遂げてやる。


 私は小さく頷いた。

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