カラフルな蛇。
Ａさんの家の前には、山がある。
小さくて標高が低く、小高い丘のようだが、木が繁っていて周辺住民には山と呼ばれている。
その山には……現在はやっていないそうだが、元は地元の霊能者を統括する家系だったという地主が、代々祀っているという祠があるそうだ。
そんな山を気に入ったらしく、余所者のＢさん一家が地主に土地を貸してほしいと頼んだそうだ。
そして……Ｂさん一家は、借りた土地。山の端を切り崩して、家を建てて住んでしまった。
家を建てる段階で地主とは揉めたそうだ。地主も、ここに住むのはやめた方がいいと説得したというが・・・
Ｂさんは、「自分の信心している神様がいるから大丈夫。お金はちゃんと払ったからいいでしょう」と言って、強引に家を建てたのだという。
Ｂさん一家は余所から来た人達で、地元住民と関わることを嫌がっていたようだ。
ただ、なにかの祀られている山を切り崩して強引に建てた家は、おかしなことが起こっていたらしい。
Ｂさんの家は、犬を複数飼っていた。その犬達は、いつもヒステリックにキャンキャンと吠えて、誰か人や車がＢさんの家の前を通る度、威嚇して煩かったという。
そして、常に犬が吠えていたからＡさんは知らなかったそうだが……Ｂさんの家で飼っていた犬達は、何匹も死んでいたらしい。
虫が沢山出る山でネズミも出るので、虫除けやネズミ退治の薬を誤って食べてしまって犬が死ぬ。薬の置場所に気を付け、犬が食べないようにしても……狂ったように吠え続けて、泡を吹いていきなり死んでしまったり。ある日突然、水や餌を食べなくなって死んでしまったり。
と、原因が判っていることもあるが、多くは原因不明で十匹近くの犬がＢさんの家で死んでいたのだとか。
更には、Ｂさんの家には出る……らしい。
Ｂさんの家の、至るところに蛇が出るのだとか。それも、いろんな色のカラフルな蛇が……
赤や青、紫やピンクなどなど。およそ、通常の蛇とは思えないような色の蛇達が。家の鉢植えの中や洗面所、洗濯機の中、鍋の中からも蛇が現れるそうで……
Ｂさんは、自分の信心している神様を拝んで、蛇の嫌うお香を炊いて、蛇避けの薬を撒いて――――と、必死で戦っていたらしい。
けれど、その間に犬が何匹も死に、旦那さんが事故に遭って怪我をし、子供達は「こんな家、住んでられない」と言って出で行ってしまい・・・
二十年程で、Ｂさんも出て行ってしまった。
近所付き合いをしなかったＢさんだが、家を出る前になぜかＡさんの母親にだけ、自分が心折れたという経緯を話して出て行ったそうだ。
そして、Ｂさんが建てた家は売りに出されたのか、それともＢさんが貸しているのか……新しい家族が住んでいるという。
Ｂさん一家は相当大変な思いをしたようだが、新しい一家は大丈夫だろうか……？
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