主張する気配。
Aさんの家の前には、ちょっとした山がある。
標高は低い。ちょっとした丘くらいだが、木が繁っていて山と呼ばれている。
Aさんは見たことないが、その山の木が繁る奥の方には、地主の家(現在はやっていないらしいが、昔は地元の霊能者を統括していた家系とのこと)が代々祀っているという祠があるらしい。
なにを祀っているのかは不明で、地主自身もわからないという話だが・・・
周辺地域の住民には、なにかあるのは確実だと言われている。
木が繁っているので、虫が沢山いる。夏は蝉時雨が煩く、カブト虫やクワガタ、バッタ、蝶、カマキリなどなど。虫取りが好きな子供には、いい遊び場。のように見えるが……
山の敷地で遊ぶと虫に刺されて酷くかぶれたり、怪我をしたり、原因不明で熱を出して寝込んだりなど……したりするらしい。故に、何度か痛い目を見た子供達は自然と入らなくなる。
他にも、山の中で薬草が沢山生えていると通りすがりの人が薬草を採って行き……なにがあったのかは不明だが、二日後くらいに山で採った薬草を返しに来ていたという。
怯えながらお酒を供えていたというから、なにか怯えるようなことがあったのだろう。
Aさんの部屋は山の真正面で、カーテンを開けると山が見える。
山に獣はいない。いるのは、虫や蛙、ネズミ、鳥、蝙蝠の小動物くらいなのだが……
カーテンを開けると、じっとこちらを見詰めるような視線を感じるそうだ。朝や昼間の明るい時間でも……そして特に、夜になると気配のようなものが強く主張する。
だから、Aさんは部屋のカーテンを閉じたまま過ごすのだという。
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