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視えてるらしい。  作者: 月白ヤトヒコ


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38/48

ノック。


 Aさんが身体を壊してしまい、とある病院に入院していたときの話。


 その部屋は、角部屋の個室だったそうだ。


 入院して幾日か経ち、夜に寝ようとしたときのことだったという。


 Aさんはふと、コンコンという音が鳴っていることに気が付いた。


 なんの音だろうと思い、辺りを見回すと、窓が外から叩かれているのだと判ったのだとか。


 その部屋は五階の角部屋で、外からノックができる筈がない。


 そしてAさんは、所謂(いわゆる)視える人だったので、煩いなと思いつつ、毛布を頭から被ってそれ(・・)を無視することに決めた。


 すると、何時間も続いていたノックの音が止んで、これで静かになった……と思った瞬間、バン! と、ベッドに備え付けのテーブルを強く叩く音がして驚いた。


 毛布から顔を出すと、なにやら酷く怒っている気配の、真っ黒な人影がAさんを見下ろしていたという。


 Aさんは眠くてとても苛付いたので、


「アンタがなにに怒ってんのか知らないけど、それがわたしになんの関係がある? 安眠妨害するな」


 と言ったのだという。すると、その真っ黒な人影は消えてしまったのだとか。


 その後、人影が現れることはなかったそうだが、夜中のノックや奇妙なことは続き、Aさんは寝不足になったそうだ。


 読んでくださり、ありがとうございました。

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