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失せ物。

　Ａさんは、偶に物が失くなって(・・・・)しまう(・・・)らしい。

　外で失くすのではなく、家の中(・・・)で偶に物が失くなってしまうのだとか。

　そして、自分の過失で失くすのなら兎(と)も角(かく)、誰かに捨てられたワケでもなく、家の中(・・・)で失くなった(・・・・・)物は、二度と出て来ないことが多いらしい。

　そんなＡさんは、長い髪をしている。

　背中の真ん中に掛かるくらいの長さがあるので、Ａさんはよく髪を括っているそうだ。

　ある日、Ａさんが髪の毛を二つに分けて三つ編みにして家事をしていたときのこと。

　ふわり、といきなり片方の三つ編みが解けて髪の毛が広がったのだという。

　髪ゴムが落ちたのだと思い、髪を結び直そうと、Ａさんは家事を中断。

　そして、その場で落ちた筈の髪ゴムを探したのだが・・・ゴムは、見当たらなかった。

　それから、家の中をあちこち探して回ったそうだが、髪ゴムは見付かず終いなのだそうだ。

　Ａさん曰く、「偶に物が失くなる(・・・・)ことはあるけど、身に付けている物がその場で消えた(・・・)のは初めてで驚いたよ。なに(・・)が、取って行ったんだろうね？」とのこと。

　一体、なに(・・)がＡさんの物を取って行っているのだろうか・・・？

　読んでくださり、ありがとうございました。