俯瞰。
Aさんが子供の頃のこと。
ニメートル程の高さのブロック塀から、近くに止めてあった車にジャンプして飛び降りて遊んでいたときのこと。
Aさんはどうやら、足を踏み外してブロック塀から落ちたらしい。しかも、元々折れて鋭利に尖っていた車のミラー部分で頭を切ってしまい、倒れてしまったのだという。
一緒に遊んでいた親戚の子が大声を上げ、Aさんは親達に連れられて病院へ運ばれた。
Aさんは、ブロック塀から落ちたときのことは覚えていないらしいが、倒れた自分が母親に抱かれ、頭に当てられたタオルや、母親の着ていた服が自分の血で真っ赤に染まったことを覚えているという。
そして、病院で治療のために看護師に傷口近くの髪の毛を剃られ、注射を打たれ、傷口を開かれて消毒液とタワシでごしごしと傷口を洗われ、医者に針と糸で頭を縫われているところを、覚えている。
それらの出来事を、ふわふわと俯瞰しながら、上から見ていたのだという。
Aさんが目を覚ますと……浮いているときには特に感じなかった頭の痛みを感じ、乾いた血がパラパラと落ちたそうだ。
俗に言う、幽体離脱や臨死体験の類なのかもしれない。
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