小さな頃のともだち。
幼稚園くらいの小さな頃のA君には、仲の良いともだちがいたそうだ。
A君のそのともだちのことを、B君と称する。
A君はB君と最初に出会ったときのことは、よく覚えていないらしい。
気付いたら、B君とともだちになっていたのだという。子供同士では、よくあることだろう。
そしてA君は、B君と楽しく遊ぶようになった。
二人は幼稚園で遊んだり、幼稚園が終わってから公園で遊んだりしたらしい。
ブランコで、どちらがより高く漕げるか競争。
階段で、どちらがより高い位置からジャンプして飛べるか競争。
ジャングルジムの上で、ふざけながら鬼ごっこ。
高い木の上から、飛び降りて遊ぶ。
道路の近くで、キャッチボール。
走っている車の前に、わざと飛び出す遊び。
そんな風に遊んでいて、A君はある日とうとう怪我をしてしまったそうだ。そして、怪我をしたのでおとなしく家の中で遊ぼうと思い、B君を家に呼んだのだという。
すると、A君の祖母がB君を見るなり、血相を変えて玄関口で怒鳴ったそうだ。
「アンタはなんでこんなことするのっ!? こんなことしていいと思ってるのっ!!」
まだなにもしていないというのに、A君の祖母に酷く怒られたB君は、青い顔をして泣きそうになっていたそうだ。
「帰りなさい!! もう二度とAに関わるなっ!!!!」
A君の祖母が鬼の形相で怒号を響かせると、B君は酷く落ち込んだ様子で帰ってしまったという。
B君が帰って行くのを見て、A君はなんでそんなにB君を怒ったのか祖母に聞いた。すると、
「A。もう絶対に、あの子みたいなのと遊ぶことは許しません」
説明も無いまま、キツく祖母に言われたという。
そして、その日からB君の姿が幼稚園で見当たらなくなってしまったのだそうだ。A君は、先生にB君はどうしたのか聞いてみた。すると、
「B君? そんな名前の子、うちの幼稚園にはいませんよ。そんなことより、A君。いつもいつも一人で危ない遊びばかりするのはやめましょうね。怪我をしたら痛いし、大変でしょう」
B君なんて子供は、A君の通っていた幼稚園には、存在していなかった。
幼稚園の先生に言わせれば、A君は何度注意しても、いつも一人で危険な遊びをしていたのだとか。
ちなみに、A君の祖母は視える人だったらしい。
寂しい子供がともだちを求めることはよくあるというが・・・もしもあのまま、B君と遊び続けていたらA君はどうなっていたのだろうか?
A君の前からはB君が消えたが――――
楽しそうに、けれど常に一人で危険な遊びばかりをしている子供がいたら、もしかしたらB君のような『ともだちを求めている子供』に誘われて、遊んでいるのかもしれない・・・
読んでくださり、ありがとうございました。




