第十一話 ふたりの朝 ※
俺は過去の自分の誓いを思い出しながら、現在は自分の最愛となる女性を抱いている。
過去の俺は、自分にはステイシアしかいないと思っていたが、現在の俺は、この黒に青色が混ざった髪の女性を抱く事に罪悪感は無い。
ステイシアはステイシアであり、この女性―――ハルはハルなのだ。
互いに素晴らしい女性であり、現在の俺―――アクト・ブレッタが守るべき女性はこのひとりだけなのだ。
自分なりに何て都合のいい奴なのだろうと思いながらも、天国にいるステイシアは相手がこのハルならば怒らないと勝手に納得している自分もあり、思わず自己嫌悪に陥りそうになる。
「俺も、人間・・・だな」
そんな俺の呟きには誰も応える者はいない。
ハルは自分の脇でスヤスヤと幸せそうな顔を浮かべて寝ている。
この、誰のものとも解らない薄汚い小屋で、ハルと一夜を共に過ごし、そして、いつの間にか夜は明けていた。
昨日まで土砂降りだった雨もようやく鳴りを潜め、今朝は太陽が少しずつ顔を覗かしているようだ。
清々しい朝になりそうな予感もあり、こんな状況でなければ、外で水浴びをして、日課としている朝の修練をするのだが、今だけはこのままの状況に浸っていたいと俺は思う。
今、自分の隣で安らかに寝るこの女性―――ハルはいろんな意味でとんでもない女性だった。
知識や魔力もずば抜けた存在だったが、それは彼女にとって些細な事。
彼女は白魔女の正体でもあった。
これ自体もアクトが少しは考えられる可能性のひとつであり、驚きはするものの、まだ序の口だと言える。
このハルが『別世界の住人』であった事実は俺にとって最大級の衝撃だった。
どおりで彼女は自分達とは違う価値観を持っていたし、彼女の持つ豊富な科学の知識も、別の世界で得られたものだったのだ。
それに加えて、ハルが過酷な運命を掻い潜ってきたのに驚かされる。
自分も愛しのステイシアを失うと言う、とても大きな悲しい経験してきたが、ハルの受けた運命の悪戯に比べれば、それさえも些細な事のように思えた。
もしこれが、本人の口から聞いた話ならば、少しは疑うぐらいに突拍子も無い事だと思っただろう。
しかし、ハルの行使した魔法―――『心の共有』は、相手の記憶と意識を完全に共有する魔法であり、嘘をつく事は不可能だった。
尤も、今までにこんな魔法など聞いた事は無く、ハルもあのとき咄嗟に思いついた術であり、相手が俺達だったから成功した奇跡的な魔法だと思う。
その事実については彼女の記憶や現在の彼女の心を自分でも観たことで理解できた。
おかげで、今の俺はハルの幼少の頃からの全ての記憶を知っている。
その反面、自分の記憶も全てハルに知られているが、彼女ならば別にかまう事もない。
既に心のどこかで互いに信頼し合っていた俺達だからこそ成立した魔法なのかも知れない。
そんなハルを相手に昨晩は互いに裸で抱き合い、そして、キスをして・・・気分が高まり・・・そして・・・
この現実の感覚と記憶の世界が交差している中で、正直、何が何だか解らない必死なところもあったが、ハルと触れ合うことはもう辞められそうにないと思う。
昨日はそれ程までに俺達は深い愛に溺れていたのだ。
俺は再びその感覚を確かめるため、今一度、隣で寝るハルを優しく抱き直す。
柔らかい肌の感覚が伝わり、彼女の纏う甘い匂いが俺の鼻腔を擽った。
彼女を堪能しようと俺は掌を回して・・・・・・そして、ハルと目が合ってしまう。
「・・・いつから・・・起きていた」
「・・・アクトが、再び私にエッチな事をしようとしていた時から・・・」
「・・・」
俺は言葉に詰まる。
この時に何を言うべきが、何を喋ればいいのかを必死に頭の中で考えるが、自分が次の言葉を発する前にハルから先を越されてしまう。
「アクト。貴方、昨日は散々やってくれたわね」
「ぐ!」
確かに、昨日の俺は少し調子乗っていたのかも知れない。
しかし・・・しかし、悪いのはハル・・・君がいけないのだと言い訳したかった。
「まったく・・・男として責任をとりなさいよ」
「わ、解っているさ・・・俺は責任をとって・・・うっ!」
ちょっと情けないその先の俺の言葉は彼女の優しい接吻によって塞がれてしまう・・・
活動報告でも書かせていただきましたが、「ラフレスタの白魔女 外伝」(Nコード:N4590FR)を公開しました。よろしければ覗いてみてください。




