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ラフレスタの白魔女(改訂版)  作者: 龍泉 武
第五章 騎士学校
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第十二話 ライラの日記

 帝国歴一○二二年 五月八日

 

 私はライラだよ。

 ラフレスタ警備隊隊長のお父さんロイとお母さんシエクタの一人娘で、ラスレスタ西地区第七初等学校の五年生。

 クラスで一番可愛い美少女よ(自称)。

 この前、ふとした事からお父さんが日記をつけている事を知ったんだ。

 見せてと言ったけど見させてくれない。

 「この日記は誰にも見せないから意味があるんだ」と言われた。

 えー!?誰にも見せないのだったら書く意味ないよね。

 そう思ったんだけど、お父さんは「だからこそ良い。好きな事が書ける」って言うのよ。

 「ふーん」と言ってみたけど、やっぱり良く解らないや。

 でも面白そうなので私も日記を書くのを真似してみようかな。

 今日がその一日目だよ。

 

 

 五月十日

 今日の学校で、同級生フィリップの自慢話しにうんざり。

 学校で「最新の魔術指南書を買ってもらったんだ!」と言って、皆に見せびらかせて自慢していた。

 フィリップは魔術師の素質は大した事無いと思うけど、興味だけは人一倍あるのよね。

 あっそうそう、彼に「魔法使い」って言って揶揄ったら怒られた。

 この国では魔法を使う人の事を「魔術師」と呼ぶけど、魔術師って正式名乗れるには魔術師協会が行っている適正試験に受からないといけないの。

 まぁ、試験って言っても簡単な適正試験らしいんだけど、それでも落ちる人は落ちるらしい。

 落ちた人は「魔術師」を名乗れないし、魔法関係の仕事にも就く事もできないんだって。

 これは魔法適正無しの人が魔法の制御に失敗して、大きな事故を起こした事があってからこういう決まりができたって聞いているけど、ずっとずっと昔の話しなんだ。

 適正試験に落ちたほとんどの人は、それ以降、魔法に関わることを諦めちゃうけど、中には諦められない人もいて、もぐりで魔法を使う人もいる。

 そんなアマチュアな人を馬鹿にする意味も含めて「魔法使い」って呼ぶらしいのよ。

 ただし、元々の「魔法使い」って言葉の意味は、魔法を使う人の総称を示す言葉らしい。

 魔術師、神聖魔法使い、召喚士、魔法戦士なんかをひとくくりにする言葉らしいんだけどね・・・

 ちなみにフィリップに「魔法使い」って言ったのは馬鹿にする方の意味。

 アイツ、自慢話ばかりだし、ちょっと家がお金持ちだからって調子に乗っているのよね。

 だからアイツは「魔法使い」で良し。

 彼の魔法の技術も微妙だから適性試験も危なそうだし・・・

 フフフフ、落ちてしまえ!

 

 

 五月十一日

 フィリップのことを馬鹿にしたけど、私だって魔法のことには興味があるの。

 私もフィリップのように最新の魔法指南書を欲しい。

 そう思ってお母さんにおねだりした。

 お母さんは少し考えて、「いいよ」と言ってくれた。

 やった!

 私のお母さんは何だかんだと言っても最後には私のお願いを聞いてくれる。

 今までもそうだったけど、お願い事が将来に関わる事だとすれば、尚更だったりする。

 自分に魔術師の適正があるのは、お母さんのお陰だし、それを伸ばそうとしている愛娘の願いなんて断れないのは解りきっていたからね。

 私が計算高い女なのはお母さん譲りよ。

 しかし、お母さんの方がさらに上手だった。

 不敵そうな笑みを浮かべて「ロイのお小遣いから買ってもらいましょう」だって。

 さすがは私のお母さん。

 「もうすぐお父さんの誕生日だから誕生日プレゼントを買った時にライラがお願いすれば、喜んで買ってくれるわ」だって。

 誕生日プレゼントは既に買う予定だったので、それに便乗すれば良いらしい。

 そうして、ちゃっかりと私のお小遣いからも少し引かれた。

 お母さんに文句言ったら、「世の中はギブ・アンド・テイク」なんだって。

 最小の投資で最大のリターンを求めるのが商売の基本らしい。

 「それに、貴方だって少しお金を払うのだから、続けなくちゃって思うでしょ」、だって。

 さすがお母さん、元商人の娘だっただけあるわ。

 今回の作戦、上手く行くかな?

 ちょっとドキドキするね。

 

 

 五月十七日

 今日はお父さんの誕生日。

 家族でお祝いして、美味しい料理を食べて、いよいよプレゼント・ギブ・アンド・テーーーク作戦を決行。

 お父さんのプレゼントは最近巷で話題になっている「懐中時計」にした。

 小さくて精巧で、見た目も恰好良い時計をお母さんと一緒に選んだよ。

 お父さんは本当に喜んでいたけど、お母さんが「ライラもお小遣いを少し出したのよ」と言ったら、お父さんは泣いて感動していた。

 お父さんが感動のあまり「ライラ、何か欲しいものないか?」って聞いてきたので、ここぞと「魔法の指南書が欲しい」って言ったら「うおー、ライラは勉強熱心だな!」ってお父さん更に大感激。

 ちょっと暑苦しいかな?

 しかし作戦は見事に大成功だね。

 お母さんとハイタッチしちゃった。

 やっぱりお母さんは凄い!完全にお父さんをコントロールしているよ。

 

 

 五月二十日

 魔法の指南書をゲットした私は、早速学校でフィリップに逆自慢してやった。

 フィリップは悔しがるかと思っていたけど、意外に逆に感心されちゃった。

 私の買ってもらったのはフィリップほどの高級品じゃなかったけど、それでもそんなに安物じゃない。

 「ライラも魔術師を目指してるんだな。じゃあ、僕たちは仲間だ」って。

 私はお断り。

 フィリップの仲間になんてならないよーだ。

 自分が将来何になるかは解らないけど、魔術師なんて競争が激しいから相当才能無いと成功しないわよ。

 私はお母さんみたいに(旦那を上手く転がす)素敵な奥さんに成れればいいや。

 

 

 五月二十三日

 今日、学校はお休みだけど、お父さんがずっと家にいる。

 昨日はお仕事で白魔女って人と戦ったらしいんだけど、その時に眼を怪我して一日中家で療養。

 怪我と言っても心配するほどの事じゃなくて、明るい光の魔法を直接見てしまったので、眼がシュパシュパするんだって。

 早く良くなって欲しいな。

 私が大人になったら、白魔女に光の魔法をかけて、仕返しをしてやるんだからね!

 

 

 六月四日

 今日は夕ご飯でお父さんとお母さんが変な話しをしていた。

 お父さんのところへ勉強に来ているアクトって男の人の話しだった。

 お父さんは何やら「今どきの若者にしては珍しい男」とべた褒めしていた。

 貴族の次男らしいけど、お母さんも「ライラの嫁ぎ先の候補ね」と半分冗談で半分はまんざらでもない様子。

 私は嫌だ。

 いい人かも知れないけど、年上だし、顔も知らないような人とは結婚なんてしたくないよーだ。

 

 

 七月一日

 今日は仕事から帰ってきたお父さんがぐったりと疲れていた。

 「とうしたの」って聞いても話してくれない。

 なにやら仕事上の秘密なんだって。

 でも夜にはお母さんとこっそり話しをしているの聞いちゃった。

 なんと!お父さんは皇太子様と会ったんだって。

 すごーい!

 どんな顔をしているのかなぁ?

 でもこの事は秘密だから教えてくれないだろうね。

 お母さんは私が盗み聞きしていたのを知っていたみたいで、後から部屋に入って来て「この事は学校で言っちゃだめよ」って言われちゃった。

 てへ。

 

 

 七月十三日

 今日はお客さんが来た。

 先日、お父さんが言っていたアクトさんって言う人と、ハルさんで言う女の人。

 アクトさんはお父さんが言っていたように良い人で、とても礼儀正しい人だった。

 でもこの人とお付き合いする事は無さそう。

 何故ならアクトさんにはもうハルさんっていう素敵な女性がいるからだよ。

 お二人は付き合っている関係ではないと言っていたけど、ライラには見ていて解るんだ。

 この二人はとても仲が良さそうだからね。

 ふたりとも互いに何を考えているかよく解って話しをしていたし、相手にとても気遣っている。

 私も素敵な恋に憧れる十二歳。

 あの二人は、深いところつながって愛し合っているんだなーって解っちゃったんだな。

 お母さんにもその事が解っていたみたいで、「是非、ライラにお嫁さんになって欲しかったわ」なんて悔しがっていた。

 何故?

 まあ、お父さんとお母さんの残念な気持ちはおいて置く。

 それにアクトさんがあの有名なブレッタ一族の次男で、英雄の末裔だったのに驚いた。

 有名人に会っちゃったよ、私!

 明日学校で自慢しよっと。

 フィリップの悔しそうな顔が目に浮かぶぜ。

 クククク!

 そして、お相手のハルさんもビックリの人だった。

 ラフレスタでも超有名なアストロ魔法女学院の四年生で、制服のローブを見てすぐに解った。

 それだけでもエリートな人なのに、ハルさんはなんとあの懐中時計を発明した人らしい。

 本人は謙遜していたけど、あんなすごい物を作れる人なんて将来は超有望。

 それに加えて、あのリリアリア大魔導師様の娘なんだって!

 その生い立ちを聞いたとき、私もビックリを通り越して唖然となっちゃった。

 ハルさんは「養子縁組なので、師匠のお情けのようなもの」と遠慮がちに言っていたけどね。

 魔法も無詠唱ができるし、魔術師の才能ありまくりじゃない?

 私と比べるのも失礼なぐらいの天才なハルさんだけど、ハルさんの魅力はそれだけじゃないのよね。

 料理もすごく上手し、何より美人だし、スタイルだっていいし。

 黒い髪に青色の混ざった異国情緒ある素敵なお姉さん。

 しかも、全然威張ってないし、お話しをしていて、とても面白い人だった。

 私はすっかりハルさんのファンになっちゃったなー。

 あー、またうちに遊びに来ないかなぁ?

 

 


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